米FRB:逆イールドカーブの懸念が後退か | ピクテ投信投資顧問株式会社

米FRB:逆イールドカーブの懸念が後退か グローバル 先進国 米国

2018/09/04グローバル

ポイント

米国の長短金利の逆転は、景気後退局面につながるとの懸念がありました。最近のFRBの調査では、イールドカーブの逆転は当面なさそうです。

米国国債の利回り曲線(イールドカーブ)のフラット化(米国国債の長短利回り格差の縮小)基調が、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策立案者の注視するところとなっています。ハト派を中心としたFRBの幹部は、ここ数十年の景気後退(リセッション)の殆どが、イールドカーブの逆転に続いて起こっており、従って、利回り格差の縮小基調が景気後退の前触れとなる可能性があるとの懸念を示しています。ただし、このような見解は、FRBの「趨勢成長」予測とは相容れません。今後、四半期毎政策金利の引き上げの継続は、FRBの米国のGDP(国内総生産)成長率予測(2019年は前年比+2.4%、2020年は同+2.0%)を前提としたものだからです。

利回り格差の縮小は未だ懸念する必要がないとのFRBのエコノミストの見解は、米連邦公開市場委員会(FOMC)における政策決定に極めて重要な影響を及ぼすものであり、軽視されるべきではありません。

サンフランシスコ地区連銀のエコノミストは、直近の報告書の中で、2年国債と10年国債の利回り格差(スプレッド)は米国の景気循環を予測する指標としては適切ではないと考えられること、また、より適切だと考える3ヵ月物短期証券(T-Bill)と10年国債の「スプレッドの逆転にはかなりの縮小余地が残されている」ことを指摘しています(下記グラフ参照)。

それぞれが自前の調査部門を擁する地区連銀は、イールドカーブの形状とりわけ、どの年限間のスプレッドを指標とすべきか等の技術的な詳細を巡って、議論を戦わせています。

米国国債イールド・スプレッドの推移(%、灰色:10年国債ー3ヵ月短期証券利回り、赤:10年国債ー2年国債利回り、青:18ヵ月フォワードー3ヵ月短期証券利回り)

  

例えば、ワシントンDCを拠点とするFRBのエコノミストは、7月公表のレポートで、サンフランシスコ連銀の見解に対し、「期近のフォワード・スプレッド」(「3ヵ月物T-Billのスポットレートと、18ヵ月のインプライド・フォワードレートの利回り格差」)を注目していると述べています。

このエコノミストは、リセッション入りについてはサンフランシスコ連銀と同様、リスクは低いと見る一方で、「期近のフォワード・スプレッド」の方が、過去のリセッションの予測の精度が高かったとしており、満期が18ヵ月(1年半)を超える国債の利回りは、リセッションの予測にもGDP成長率の予測にも付加価値を示していない、と結論付けています。

イールドカーブに関するFRBのエコノミストのレポートは、FOMC参加者の予測する将来の政策金利(「ドット・プロット」)と市場の予測との乖離を注目させるものとなっています。ここ数週間の目立った展開は、短期金融市場(マネー・マーケット)が、FRBの予測(利上げ路線)とは異なって、2020年までに利下げが行われる確率が上昇していることを示唆していることです。実際のところ、翌日物金利スワップ(OIS)は、10ベーシスポイント(0.1%)程度の利下げを織り込んでいます(下記グラフ参照)。

米政策金利見通し:FRB予想(灰色)、市場予想(青)(%)

  

パウエルFRB議長は地区連銀総裁よりも冷静

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁や、セントルイス連銀のブラード総裁の慎重な見方の中核を成しているのが、利回りスプレッド縮小を巡る懸念であるのに対し、パウエルFRB議長は、イールドカーブの形状にさほど注目していないようです。

議長は、7月の議会証言において、10年国債利回りは、市場が織り込む中立金利の代替として確認してはいるものの、イールドカーブそのものを最も重視しているわけではないことを示唆しています。また、利上げのペースが依然として緩やかであり、今回の利上げ局面が、過去の局面よりも低い水準で終了する可能性があることを説明するために、前任のイエレン議長の見解を踏襲し、FRBが計測する理論上の中立金利は低い水準であることを指摘しています。

米国の景気拡大は継続

FRBの政策金利の引き上げについて、2018年9月と12月の2回、2019年も3月と6月の2回を予想する見方があります。この利上げの前提として、米国経済は、今後とも堅調に推移して、当面は景気後退の可能性は低いということです。なお、米国の景気拡大は2009年半ばにスタートして、現在も続いています。

今後12ヵ月の景気後退の確率(%、ブルームバーグによる集計)

  

マクロ経済の観点から、米国の成長は二つの重要な国内要因に支えられていると見ています。ひとつは、世界的な原油価格の上昇の恩恵を受けるエネルギー・セクターの成長であり、もう一つは、情報技術セクターへの投資です。最近のニュースによると、2018年第2四半期における情報処理とソフトウェアへの投資は、前年比10.2%の成長となっています。一方では、昨年12月の法人税の減税は、現在も企業業績の上昇に貢献していますが、今後数四半期後には、この効果が薄れていく見通しです。

米国景気の堅調さは、労働市場の好調さにも支えられていて、現段階では、雇用関連での景気減速の気配は見られないと考えます。特に、正規と臨時雇用の求人件数が、今後とも雇用が拡大することを示しています。全般的に、労働市場は好調を維持すると見ています。

米国経済の好調さは、米コンファレンス・ボードの景気先行指数からもうかがえます。(下記グラフ参照) 景気先行指数は、7月に前年同月比6.3%上昇し、6月の上昇率の6.0%を上回りました。これは、この指数は、歴史的に米GDP成長率と連動性が高く、現在の米GDP成長率の堅調さを裏付けています。

米国コンファレンスボード景気先行指数(灰色、左軸)、米国GDP(赤、%、前年比、右軸)

  

最後に、労働コストについて、詳細にチェックしてみましょう。人件費や借入コストの上昇といった、コストの急上昇は、企業業績を悪化させ、現在の景気拡大を阻害する要因となります。米商務省経済分析局によると、これまで企業業績は継続して伸びていて、労働コストの伸びはそれほどではありません。米労働省労働統計局のデータによると、過去の4つの四半期における、労働コストの上昇は平均2.2%にとどまっています。この労働コストが、前回の景気後退のスタート時期の、3%~4%の水準になるかどうか注視していきます。

一方で、借入コストの面では、米国社債と米国国債とのスプレッドは縮小していて、FRBは今後ともゆっくりとした利上げを継続すると見ています。別の言い方をすると、FRBは金融政策によって、今後とも堅調な米国景気を目指すものと考えます。

米国GDP成長率予想:FRB予想(年率、%)

  

左から順に、赤の棒グラフ:2017年9月時点、灰色の棒グラフ:2017年12月時点、青の棒グラフ:2018年3月時点、えんじの棒グラフ:2018年6月時点

コア・個人消費支出(PCE)インフレ率(年率、%)

  

左から順に、赤の棒グラフ:2017年9月時点、灰色の棒グラフ:2017年12月時点、青の棒グラフ:2018年3月時点、えんじの棒グラフ:2018年6月時点

FOMCの投票権を持つメンバーと政策スタンス

  

FRBの注目指標

コア・インフレ率(個人消費支出(PCE、赤線)、消費者物価指数(CPI、灰色)、前年比、%)

  

失業率(%)

  

平均時給伸び率(製造業(赤線)、全産業(灰色)、前年比、%)

  

実質GDP(灰色)・実質個人消費(赤)伸び率(前年比、%)

  

ISM製造業景気指数(赤)・非製造業景気指数(灰色)

  

米国ハイイールド債券スプレッド(ベーシス・ポイント)

  

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。


ページの先頭へ戻る