グローバル・マーケット・ウォッチ:債券投資における為替ヘッジの真髄 | ピクテ投信投資顧問株式会社

グローバル・マーケット・ウォッチ:債券投資における為替ヘッジの真髄 グローバル 先進国 新興国 米国

2019/02/25グローバル

ポイント

海外に投資するということは、外貨にも投資することを意味します。特に海外債券投資は、状況がより複雑なものとなる可能性があります。

海外資産に投資することで、国内市場では得られない投資の機会が得られると言ってよいでしょう。

ハイテク株投資を例に説明しましょう。欧州の投資家は、国内市場の外に目を向けて初めて、世界の大手ハイテク株に投資することが出来ます。「欧州シリコンバレー」と言えるような場所は欧州にはないからです。

問題は、海外投資に、複雑な要素が加わることです。投資対象に加えて、証券の発行通貨である外国通貨も買うことになるからです。

通貨が厄介な代物であることも問題です。ボラティリティが上昇したり、予測困難な状況が発生する可能性があるだけでなく、通貨が、ポートフォリオのリターンにプラスに寄与するとは限らず、マイナスの影響を及ぼす可能性もあるからです。

為替の変動の影響を最も敏感に感じ取っているのは、海外債券に資金を投ずる投資家です。債券投資は、株式投資に比べて市場変動から得られるリターンが低く、また時にははるかに低いことから、例えば、米ドルの5%の下落がユーロ・ベースの海外債券の投資家に及ぼす影響は、株式の投資家に及ぼす影響より大きくなる可能性があります。

ユーロ等、主要通貨の年間変動率は過去の平均で10%前後ですが、これは、株式の変動率の半分程度に過ぎない一方で、米国国債の変動率の2倍程度に相当します1

このことが、とりわけ債券の投資家が為替リスクのヘッジを検討したいと考える理由です。米国ハイイールド債ポートフォリオを持つユーロ・ベースの投資家を例に考えてみましょう。

長期投資の場合には、為替変動の影響をもろに受ける為替ヘッジ無しのポートフォリオよりも、為替ヘッジ付きのポートフォリオを選択した投資家の方が、相対的に高く、かつ、安定したリターンを実現した可能性があります。

図表1:ヘッジの有無:米国ハイイールド債のリターンの推移(緑:ヘッジ付、灰色:ヘッジ無し、ユーロ・ベース、2002年を100として指数化)

  

※ブルームバーグ・バークレイズ USハイイールド債トータルリターンヘッジ無し指数、およびヘッジあり指数、期間:2001年12月31日~2018年6月30日

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

もっとも、為替先渡し契約(為替予約、詳細は後述)を用いた為替ヘッジ付き債券投資が、常に、為替ヘッジ無し債券投資のリターンを上回るとは限りません。同様に、投資家の投資期間に、常に影響されるわけではありません。

通貨は、数ヵ月あるいは数年に及ぶ期間を通じて上昇或いは下落局面を展開し、時には、エコノミストが適正だと考える水準から大きく乖離することがあります。

このことは、ポートフォリオに不利な通貨の変動に備えて保険をかける(即ち、為替ヘッジを行う)ことを選択した投資家が、有利なトレンド(趨勢)からプラスのリターンを得る機会を放棄せざるを得ないことを意味します。

2008年から2009年に起こった様々な出来事は、為替ヘッジが債券投資に逆効果となり得ることを示しています。企業破綻(デフォルト)を巡る投資家の懸念が強まる中、米国ハイイールド債が急落していた時期(図表1の影の部分)のことです。

この間、米ドルは、安全通貨としての特性を有するため、上昇基調を辿っていました。ユーロ/米ドル・レートの変動から、ポートフォリオを隔離するために為替ヘッジをかけることを選択したユーロ・ベースの投資家は、ドル高がポートフォリオの緩衝材としての効果を発揮したヘッジ無しポートフォリオの投資家に比べて、はるかに大きな損失を被る結果となりました。

為替ヘッジの選択

為替エクスポージャーの管理には、各種の手法が用いられます。

図表2:為替ヘッジ手法の概要

  

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

投資家に人気があるのは、為替ヘッジ付きクラスの受益証券を通じて、為替ヘッジ業務を、ファンドの事務管理会社等、外部の第三者に委託することです。

為替ヘッジ付きクラスの受益証券は、通貨の変動がポートフォリオのリターンに及ぼす影響の最小化を目指します。

投資家は、保険証券の保険料に相当する手数料と引き換えに、心の平安を得ることが出来ます。 このような金融商品は、ユーロ建て新興国債券ファンドあるいはスイスフラン建て米国ハイイールド債ファンドなどといった、通貨によっては、従来、不可能だった種類の投資を可能とします。

自国通貨の先行きに強い確信を持つ投資家は、ファンドの投資対象である資産クラスへの投資を継続しつつ、異なるクラスの受益証券に容易に乗り換えることが可能です。

もっとも、為替ヘッジ付きクラスの受益証券が、為替レートの変動に伴って生じるリスクを完全に排除できるわけでないことには留意が必要です。また、為替のヘッジコストも変動することがあり、ポートフォリオのリターンに影響を及ぼします(図表3をご参照下さい)。金融商品の為替ヘッジコストは、以下の3つの要素で構成されます。

●金利:為替ヘッジには、為替先渡しと呼ばれる取引が用いられます。これは、将来の特定の時点で、事前に定めた量の外国通貨を自国通貨に交換することを義務付ける相対取引契約です。契約のコスト、即ち、取引が行われる時点における将来の為替レートは、主に、自国通貨と外国通貨の金利差で決まります。このような価格設定の仕組みにより、相対的に金利の低い通貨の将来の為替レートは上昇します。従って、米国とユーロ圏の金利が全く同じならばヘッジコストはほぼゼロとなり、米国債ファンドのユーロ・ヘッジクラス受益証券のリターンは米国債のリターンに等しくなるはずです。一方、米金利が上昇し、ユーロ金利が低下するならば、ユーロ・ベースの投資家のヘッジコストは上昇することになります。

●事務管理費用:投資家は、為替ヘッジ付きクラス受益証券の事務管理費用(通常、年間5ベーシス・ポイント(0.05%)程度)を支払わなければなりません。当該費用は、通常、ファンドの運用管理費用に含まれます。

●取引コスト:ユーロ・ドル・ベーシススワップと呼ばれる(為替スワップ)市場のスプレッドは、為替直物(スポット)取引と為替先渡し取引から成る為替スワップ契約を結ぶためにはコストがかかることを意味します。二つの通貨の流動性が低ければ低いほど、コストは上昇します。また、取引コストには、流動性が低下する年末にかけて上昇する傾向が見られます。

アクティブ運用の一例

世界中で運用される債券ポートフォリオの多くは、通貨を、リターンとリスクの独立した源泉とみなしています。また、外国為替市場の短期および長期トレンドならびに為替ヘッジコストの変動から利益の獲得を狙う為替オーバーレイ戦略を用います。

ピクテも、このような為替エクスポージャーのアクティブ運用を取り入れた債券戦略を、数多く実行しています。ピクテの運用目標は、大まかに言うと、正当化できないほど割安な水準にある通貨を認識し、投資することでリターンの向上を図ることです。

一例として、米ドルを運用通貨とするポートフォリオにおいて、2018年10-12月期の通貨のアクティブ・ポジションには、対ドルで上昇した円が含まれており、ポートフォリオのリターンに寄与しました。当四半期のリターンに対する為替全体の寄与度は50ベーシスポイント(0.5%)超となりました2

一方、別のポートフォリオの運用担当者は、昨年末にかけて、暴落後の反発を確信したアルゼンチン・ペソに投資しました。2018年10-12月期のペソの上昇率は対米ドルでほぼ10%に達し、ポートフォリオのリターンに寄与しました。

為替ヘッジの祝福とのろい

為替市場について理解が十分でない例として、先渡しレートの算出の仕組みが、特定の債券市場から海外投資家を締め出していることが挙げられます。

足元では、米国国債への投資を検討するユーロ・ベースの投資家の場合に当てはまります。米金利が上昇した時期にユーロ金利は一貫して低下したことから、利回りが2.7%前後の米国10年国債のヘッジコストは法外に割高な水準に達しています(図表3をご参照下さい)。このような状況で為替ヘッジをかけると、米国10年国債の実質利回りは0%を下回ることとなります。一方、ドイツ10年国債の利回りは0.2%前後とプラスです3。一方、ユーロ・ベースの投資家にとっては極めて厄介な状況が、ドル・ベースの投資家には、魅力的なリターンの源泉を提供している可能性があるのです。ユーロ建て債券投資のヘッジを外してドルに戻すと、ヘッジ・プレミアムを受け取ることが出来るからです。

為替レートの変動は、債券ポートフォリオのリターンに大きな影響を及ぼす可能性があります。通貨取引はゼロサムゲームだと思い込んでいた投資家は、考え直してみてはどうでしょう。

図表3:為替ヘッジコストの内訳: 為替ヘッジコスト(平均)の推移、ユーロ・ドル、2002年~2018年、ベーシスポイント、年率

  

※3ヵ月米ドルLIBORとユーロLIBORの差、ユーロ/米ドル3ヵ月クロス為替ベーシススワップ、

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

  1. JPモルガン米国債指数のヒストリカル・ボラティリティ、ユーロ/米ドルのスポット為替、S&P500株価指数に基く、期間:2009年1月25日~2019年1月25日
  2. 価格効果と取引コストを含めたグロスのトータル・パフォーマンス、時点:2018年12月31日
  3. 2019年1月31日のデータを使用

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