米国の国民皆保険「メディケア・フォー・オール」法案について考える | ピクテ投信投資顧問株式会社

米国の国民皆保険「メディケア・フォー・オール」法案について考える グローバル バイオ医薬品

2019/03/07グローバル

ポイント

米・民主党が国民皆保険「メディケア・フォー・オール」法案を提出したことを受けて、米国の医療保険会社の株価が大きく下落しています。「メディケア・フォー・オール」は米国の医療保険制度を根本から変えるもので、現時点ではさまざまな抵抗により導入は容易ではないといえますが、短期的にはヘルスケア関連株式の株価変動を大きくする可能性があると見ています。

米・民主党が「メディケア・フォー・オール」法案を提出

2019年2月末以降、米国では、民主党議員が国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」の法案を提出したことを受けて、米国の医療保険制度の不透明感が高まったことなどから、ユナイテッド・ヘルス・グループ(米国)などの医療保険会社の株価が大きく下落しています(医療保険会社はヘルスケア・プロバイダー/サービス株式に含まれます)(図表1参照)。

現在、米国の医療保険制度は「メディケア(主に65歳以上の高齢者と身体障害者向け)」、「メディケイド(低所得者向け)」などの公的医療保険と、民間医療保険で成り立っていますが、「メディケア・フォー・オール」は、それをすべて公的医療保険にすることを目指す衝撃的な法案です。 

「メディケア・フォー・オール」の導入は難しい?

確かに「メディケア・フォー・オール」制度は、理屈の上では、理想的な制度かもしれません。ただし、米国の医療保険制度は非常に複雑で、「メディケア・フォー・オール」のような制度を導入することは容易ではなく、また導入には多くの抵抗を受けると思われます。

非営利団体カイザー・ファミリー・ファンデーションが1月に実施した調査によると、米国の人々は「メディケア・フォー・オール」の考え方自体には賛同しているものの、米国の約半数の人が雇用主により提供される民間の健康保険に加入していることもあり、現在、受けている民間の健康保険の補償を手放すことには同意していないようです。

さらに、民主党の「メディケア・フォー・オール」法案では説明されていませんが、納税者が負担する国民皆保険の費用は数十兆ドルに達するとみられ、このことも「メディケア・フォー・オール」の導入を阻む要因となると思われます。

公的医療保険におけるアウトソースの動き

また、米国ではここ数年間、税収による収入と支払いを一致させることの不透明感に対応するため、公的な医療保険のリスクを民間のマネージド・ケア(管理医療)にアウトソースする動きが進んでいます。「メディケア・フォー・オール」においてもこの動きが継続されれば、このようなサービスを提供するユナイテッド・ヘルス・グループ(米国)のような医療保険会社にとっては好機となる可能性があります。

「メディケア・フォー・オール」は短期的に株価変動を大きくする要因に

「メディケア・フォー・オール」については、現時点では実現の可能性は低いと思われますが、短期的には市場からの注目を集めて、株価の変動を大きくする可能性があります。

一方、民間医療保険が薬剤給付管理会社(PBM)を通じて行っているように、メディケアなどの公的医療保険にも価格交渉を可能にするような制度改革は注視する必要があります。

公的医療保険が価格交渉できるようになれば、あまり差異のない治療薬を作っている医薬品企業にとっては、すでに同様の価格圧力を民間医療保険会社から受けていますが、脅威となり、薬価の下落に直面する可能性があります。

 

このような中では、医薬品市場では差別化(他社を上回る効果が得られるような革新的な医薬品を提供すること)が非常に重要であるとピクテは考えています。

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