ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー:強気の投資家は要注意 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー:強気の投資家は要注意

2019/08/16グローバル

ポイント

足元の経済を取り巻く状況が、市場に織り込まれた金融刺激策を正当化するとは考えません。そのため、株式に慎重な姿勢を崩さず、株式のアンダーウェイトを継続します。また、13兆ドル相当のグローバル債券がマイナスの利回りとなっている状況を考えると、債券のアンダーウェイトと、キャッシュのフルオーバーウェイトを維持します。

市場の急上昇に歯止めをかけられなかったFRBの警告

ハト派色を一段と鮮明にしたFRB高官の発言を受け、6月の株式市場は大幅な上昇となりましたが、その後7月は、月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、強気の姿勢を維持しつつ、落ち着いた展開となりました。

FOMCは、7月31日、多くの市場関係者が「タカ派的」とみなした利下げを行いました。FRBは、市場の期待に応えてFF金利の誘導目標を25ベーシスポイント引き下げたものの、主要中央銀行の協調的な利下げ局面の開始というよりは、景気循環における金融政策の調整に過ぎないことを示唆するパウエル議長の発言が市場を混乱させました。

とはいえ、主要先進国の株式市場は底堅く推移したことから、MSCI世界株価指数の月間騰落率は+1%と辛うじてプラスに留まり、年初来の騰落率を+17%前後としました。債券も同様の展開となり、JPモルガン・グローバル国債指数の月間騰落率は+0.7%となりました。市場別ランキングでは、米国株式市場が引き続き上位に留まり、月間騰落率は+1.5%、年初来騰落率は+20%強となりました。また、スイス株式は、年初来騰落率が+24%弱と好調さが際立ちました。

業種セクター別では、情報通信技術(IT)セクターが堅調さを維持し、月間騰落率は+3.1%、年初来騰落率は+30%弱となりました。これに対し、エネルギー、素材の両セクターは出遅れ感が目立ちました。貿易量の縮小を背景とした資源価格の低迷が響きました。ヘルスケア・セクターも低調でした。

FRBの今後のハト派の度合いを巡る不透明さにもかかわらず、世界的な金融緩和期待が債券市場を下支えました。欧州中央銀行(ECB)は、経済の低成長と期待外れのインフレ率のため、独自の施策を検討中です。日本銀行やその他の中央銀行も同様です。

先進国国債市場と同じく、新興国債券市場も上昇しました。

新興国債券市場はとりわけ堅調で、JPモルガン新興国債券指数の年初来騰落率は、現地通貨建て新興国債券指数が+9%強、ドル建て新興国債券指数が+12%強の上昇となりました。この間、新興国社債指数は+10%弱の上昇となりました。

為替市場では、ドル高基調が続きました。ポンド安が際立ち、年初来の対ドル・レートは4%前後の下落となりましたが、下げの大半は7月の下げに因るものです。これは、EUの合意が得られなくとも、10月31日にはブレグジットを実現するとのジョンソン新首相の発言に対する投資家の反応を映したものと見ています。

完璧さを織り込んだ市場

世界の株式市場は、競うように、史上最高値を更新しました。主要中央銀行が、経済の減速を止めるため、流動性を供給するとの投資家の見方が強まったためです。

一方、ピクテでは、足元の経済を取り巻く状況が、市場に織り込まれた金融刺激策を正当化するとは考えません。最近の経済指標の悪化は、今年の世界の経済成長率が2.2%と、潜在成長率を下回ることを示唆していますが、この程度の経済の減速が、積極的な金融緩和を正当化するとは思われないからです。

ピクテでは、このような理由で、株式に慎重な姿勢を崩さず、株式のアンダーウェイト(ベンチマークより低い投資比率)を継続します。また、13兆ドル相当のグローバル債券がマイナスの利回りとなっている状況を考えると、債券に積極的な姿勢を取ることも困難です。キャッシュは、フルオーバーウェイト(ベンチマークを上回る投資比率)を維持します。

株式:割安感が目立つ金融株

世界経済が減速し、企業の利益成長率が悪化する状況では、引き続き、バリュエーションが妥当な水準から割安な水準で推移するセクターを選好します。

金融セクターは、割安なセクターに分類され、バリュエーション面では、株価純資産倍率(PBR)で見てもPERで見ても、過去20年の傾向を下回って推移する数少ない資産クラスの一つです。ピクテでは、米国等の利下げが市場の期待よりも小幅に留まると見ており、そうなれば、融資の利鞘が広がる銀行にとっての好材料となり得ることから、投資資金を金融セクターに配分することは理にかなうと考えます。

金融セクター以外では、ディフェンシブなセクターに注目しており、利益成長率がピークを付けつつある情報技術(IT)セクターをアンダーウェイトとする一方で、生活必需品セクターをフルオーバーウェイトとしています。

地域別に見て最も割高な米国をアンダーウェイトとしているのは、バリュエーション面でも利益成長面でも先行きが暗い、最悪の組み合わせの市場の一つとなっているからです。

また、S&P500種株価指数先物の投資家のネットのポジションが相当高位に留まっていることを考えても、市場急落の公算が一段と大きくなると見ています。

MSCI世界株価指数構成銘柄の利益予想のネットの上方修正の比率、つまり予想の修正全体に占めるネットの上方修正の比率で測った利益の伸びの勢い(アーニングズ・モメンタム)は、大幅に悪化しています。

企業の利鞘には世界的に下押し圧力がかかっていますが、このような状況は、株式アナリストの予想に反映されていないと考えます。企業利益の伸びの鈍化は今後も続き、株式アナリストの市場予想を下回ると思われます。ピクテのモデルは、今後12ヵ月の一株利益成長率をおよそ1%と予測しており、株式アナリストの市場予想のおよそ8%前後を大きく下回ります。

一方、見通しが明るいのは、景気の先行きが著しい改善を見せつつあるユーロ圏です。ピクテの景気先行指数は、前月比で4ヵ月連続の上昇を記録し、フランスとスペインをけん引役にプラス圏に入りました。良好な消費者心理と改善基調の労働市場は、個人消費による景気の下支えを示唆しています。企業利益の見通しも良好です。4-6月期の決算発表は、ユーロ圏企業の90%以上が年内の利益予想を維持または上方修正しています。

債券・為替:ディフェンシブ性資産の供給不足

これまでには、投資ポートフォリオのボラティリティ(変動率)を抑えるために先進国債券に頼ることが可能だった時期がありましたが、足元の状況は一変しています。13兆ドル相当の先進国債券の利回りがマイナス圏に沈んでいるからです。JPモルガン世界国債指数の実質利回りは過去最低でマイナスを付けており、今後3~6ヵ月については、投資適格債市場を構成するいかなる債券にも、ベンチマークの組入比率を上回る保有は正当化されないと考えます。従って、米国国債は、今月、ニュートラル(ベンチマーク並みの投資比率)に引き下げました。

債券市場の上昇相場の基盤は、脆弱さを増しているように思われます。

理由の一つは、利下げ期待が過度に楽観的なことです。米国では、フェデラルファンド金利(FFレート)先物に、今後12ヵ月で各25ベーシスポイント(0.25%)の3回の追加利下げが織り込まれていますが、このような期待はFRBが講じた予防的利下げをはるかに上回るものであり、行き過ぎだと考えます。米連邦準備制度理事会(FRB)が100ベーシス・ポイント以上の利下げを行うのは、景気後退局面に限られることは、歴史が証明しています。さらに、米国のインフレ圧力が高まりつつあります。

ピクテが注視するテクニカル指標も警戒信号を発しています。とりわけ、投資家の国債のポジションから示唆されるのは、中短期的な市場急落の確率が増し、当該資産クラスが「買われ過ぎ」の状況にあることです。バリュエーション指標も市場の支えにはなっていません。ピクテのモデルが算出するバリュエーション・スコアのランキングでは、最も割高な4つの資産クラスのうち3つが債券です。また、世界国債ならびに米国の国債および投資適格社債は、いずれも長期的な傾向を1.5標準偏差上回る割高な水準で推移しています。

一方、英国国債はニュートラルに上方修正しましたが、これは、「合意なき」ブレグジットが現実のものとなるリスクが増しつつあり、市場の下支えになると考えるためです。

国債および投資適格社債全般について正しいと言えることは、ユーロ圏および米国のハイイールド債にも該当すると考えアンダーウェイトとしています。信用格付けは悪化、レバレッジは上昇基調で、金融セクターを除く社債の発行残高はGDP(国内総生産)比47%と過去最高水準に達しており、ITバブル崩壊時の2000年或いはグローバル金融危機発生時の2008年に付けた水準を上回ります。

一方、新興国ソブリン債、特に現地通貨建て国債の先行きは、比較的良好です。利回りが魅力的な水準であることに加え、当該債券リターンの主要な源泉である新興国通貨が対米ドルで20%以上割安な水準にあるからです。ただし、ロシア・ルーブル、南アフリカ・ランドおよびブラジル・レアルは、年初以降、米ドルに対して上昇していることには注意が必要です。

この他、スイスフランをオーバーウェイトとしました。先進国の通貨安競争に拍車がかかる環境では、スイスフランが最もよく持ちこたえる可能性が高いと考えます。

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