ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー5月:説得力に欠ける上昇相場 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー5月:説得力に欠ける上昇相場

2020/05/19グローバル

ポイント

新型コロナウイルスの新規感染者数が恐らくピークを打ち、一部の国で都市封鎖が解除されつつあることから、景況感には僅かながら安定化の兆しが見られます。また、各国の大規模かつ迅速な景気対策が、株式市場の回復に大きな役割を果たしています。一方、ウイルス感染第2波到来の可能性は否めず、市場の先行きには一段の動揺が見込まれることから、株式、債券、キャッシュは、いずれも、ニュートラルを維持します。

市場の下落と上昇

4月のグローバル株式市場では、主要株価指数が容赦ない下げ相場に翻弄される展開となりましたが、月間リターンは10%と堅調でした。(新型コロナウイルス)パンデミック緩和の兆し、ワクチン開発の進展、景気刺激策の継続等の好材料を受け、投資家心理が改善しました。

先進国株式市場では、S&P500種株価指数の15%以上を占める大手IT企業の強い回復力を一因に、米国市場が最も高い上昇を記録しました。

テンセント、アリババ、サムスン等の大手IT企業が拠点を置く新興アジア市場も、現地通貨ベースで8%の上昇となりました。中国が、数週間に及んだ都市封鎖を解除し、徐々に経済活動を再開し始めたことから、投資家は、域内の景気回復に一段と自信を強めたものと思われます。

業種別では、エネルギーおよび一般消費財サービスの両セクターが、月初の下げから強い回復を見せました。供給過剰感が強まって原油価格が急落する中でのエネルギー・セクターの上昇は、特に際立ちました(WTI原油先物5月限は、一時、史上初のマイナス価格を付けました)。

債券市場は株式市場を下回り、総じて、前月比小幅な上昇となりました。先進国のソブリン債では、英国国債が最も高いリターンを上げました。

社債市場では、欧州ハイイールド債が5%を上回り、年初来のマイナス・リターンを10%程度に縮小しました。米国ではFRBの債券購入プログラムの拡充を好感し、投資適格債、ハイイールド債ともに上昇しました。

米ドルは、前月比横ばいに終わったものの、エネルギーおよびその他国際商品(資源)価格の下げを止めることはできませんでした。原油価格は月間では約8%、年初来では60%超の下落となりました。金は安全資産としての魅力を保ち、6%強の上昇となりました。

投資家の慢心

新型コロナウイルスの新規感染者数が恐らくピークを打ち、アジアやユーロ圏の一部の国で都市封鎖(ロックダウン)が解除(緩和)されつつあることから、景況感には僅かながら安定化の兆しが見られます。また、各国の大規模かつ迅速な景気対策が、株式市場の回復に大きな役割を果たしています。

もっとも、市場の先行きには、一段の動揺が見込まれ、とりわけ、ウイルス感染第2波到来の可能性が否めません。こうした状況を踏まえ、株式、債券、キャッシュは、いずれも、ニュートラル(ベンチマークと同じ投資比率)を維持することとし、今後数ヵ月間に想定されるリスクと投資の機会を反映するよう、地域別株式市場および債券市場の組入れを調整しました。

ピクテの景気循環分析は、世界経済が2020年には3.3%のマイナス成長に陥る一方で、翌2021年には約6%のプラス成長に回復することを示唆しています。各国政府は、経済の縮小を抑えるため、前例のない大規模な景気対策を打ち出しており、世界全体の財政出動は、GDP比3.9%前後と、2009年(グローバル金融危機時)の2倍以上に達することが予想されます。

株式:最良の選択肢はディフェンシブ・セクター

【市場の企業業績予想は楽観すぎ】

株式市場の動揺は、数週間続きました。

S&P500種株価指数は、1ヵ月強のうちに30%以上の下げに見舞われたものの、3月23日の底値から30%以上の反発を見せており、アジアや欧州の多くの株価指数と同様、少なくともテクニカル面では、強気相場圏に復帰しています。とはいえ、目のくらむような上げ相場が展開されても株式に強気になれるわけではありません。短期的に株式に慎重な姿勢を維持するのは、市場が景気回復のスピードを過大評価しているように思われるためです。

市場のコンセンサス予想は、企業の業績予想が今年(2020年)は10%以下の減益に留まり、来年(2021年)は強い景気回復が見込まれるとしていますが、こうした見方は楽観的過ぎると考えます。

【ピクテモデルは2020年はおよそ40%の減益を示唆】

ピクテのモデルは、今年の一株当たりの利益(EPS)と配当が40%前後落ち込むことを予測しています(図表1参照)。2008~2009年のグローバル金融危機時のEPSはピクテの今年の予想と同程度の落ち込みとなりましたが、(世界が対応に苦慮する)足元のリセッションは、当時のリセッションの3倍~4倍に達するのではないかと懸念されます。

【株式はディフェンシブを選好】

株式については、ディフェンシブ(景気変動に左右されにくい)な特性を備えた市場とディフェンシブ・セクターを選好します。

地域別では、スイスをオーバーウェイトに引き上げます。スイスは、ディフェンシブ・セクターの組入れが主要な株式市場の中で最も高い市場です。スイス株式のベンチマーク指数では、時価総額全体の60%以上を医薬品や生活必需品等のディフェンシブ銘柄が占め、その大多数が、コロナ危機下、市場全体を上回るリターンを上げています。英国も、引き続き選好します。多数の大型ディフェンシブ銘柄が魅力的なバリュエーション水準で取引されているからです。

【米国は最も割高でニュートラル継続】

米国はニュートラルを維持します。12ヵ月先の利益予想を用いて算出した株価収益率(PER)は、3月下旬の13倍台から4月末には19倍台と18年ぶりの水準に上昇しており(図表2参照)、世界の市場の中で最も割高な市場の一つとなっています。投資家は、米国企業の迅速な回復を見込んでいますが、今後数ヵ月については、株式アナリストの利益予想の下方修正が相次ぐと思われます。

【新興国株式はニュートラルに引き下げ】

(オーバーウェイトとしていた)新興国株式についても慎重な見方に転じ、ニュートラルに引き下げます。

中国および近隣諸国の経済活動は緩やかながら正常化に向かっていますが、ラテンアメリカはウイルス危機の最中にあります。また、資源輸出に過度に依存し、新型コロナウイルス発生前から厳しい経済試練に直面していたことが懸念されます。ブラジル等の一部の国は、巨額の対外債務と慢性的なインフレのため、経済危機対策が限られます。

業種別では、一般消費財サービス・セクターをアンダーウェイトからニュートラルに引き上げました。アジアやその他主要経済圏の消費者が何週間もの都市封鎖が解除された後、徐々に支出を増やしていくと思われるからです。

債券:中央銀行による市場の下支え

中央銀行による巨額の資産購入が下支え、主要国・地域の国債をニュートラルへ、米国投資適格国債をオーバーウェイトへ引き上げ】

新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)が経済に及ぼす影響を抑えるために世界の中央銀行が行っている巨額の資産購入は、先進国ソブリン債および社債市場の強い下支えとなっています。

従って、ユーロ圏、スイス、英国、日本の国債をアンダーウェイトからニュートラルに、米国投資適格債をニュートラルからオーバーウェイトに、ユーロ・ハイイールド債をアンダーウェイトからニュートラルに、いずれも引き上げました。

世界の中央銀行は、前例のない巨額の資金を金融システムに注入しています。2019年末以降、FRBだけでGDP比500ベーシス・ポイント(5%)相当の金融緩和を行っており、半分弱が利下げを通じて、残りの半分強が資産購入の形で行われています。(図表3参照)FRBは、必要ならば、追加緩和を行う態勢を整えています。ピクテのモデルは、同900ベーシス・ポイント(9%)の利下げ相当の金融緩和が行われる可能性を示唆していますが、これは、(グローバル金融危機を含む2014年までの)7年間に行われた金融緩和の総額を上回ります。

その他の中央銀行には、FRB程の手立てはなかったかもしれませんが、あらゆる面で対策が打たれています。

欧州中央銀行(ECB)を例に取ると、ユーロ圏加盟国国債の今年(2020年)の純新規発行額の90%以上はECBが買い入れることになります。

中国人民銀行は、(2008~2009年の)グローバル金融危機時ほどの大型対策は打っていませんが、信用供与の形の景気刺激は、グローバル金融危機以降、最大規模のGDP比9%に相当するものです。

世界の中央銀行は、社債市場の支援策も導入しています。FRBは、米国の投資適格企業の今年(2020年)の資金調達ニーズの70%強に相当する社債を買い取り、更には、ECBともども、これまでタブー視されてきたハイイールド債の一部の購入に踏み切っています。

 【経済再開の遅れから英ポンドをニュートラルへ】
通貨では、英ポンドを、ポンド高局面がほぼ終了したと考え、オーバーウェイトからニュートラルに引き下げました。新型コロナウイルスの感染者数および死者数が高水準に留まることから経済再開に遅れが生じていることに加え、英国経済には欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が影を落としており、リスクの高い状況が続いています。

【金はオーバーウェト継続】

金はオーバーウェイトを維持します。世界各国の巨額の財政刺激により、将来、いずれかの時点でインフレ率が上昇する状況も予想されますが、投資家は、経済の麻痺的状況がもたらす損失の程度を見極めようとしており、目先はデフレを懸念しているようにも思われます。このような投資環境は、貴金属等、安全資産を下支えます。

資産配分比率決定の分析ポイント 4つの柱

ピクテでは資産配分比率決定の分析ポイントとして4つの柱を用いています。その4つの柱は、1)マクロ経済分析、2)流動性分析、3)センチメント(テクニカル)分析、4)バリュエーションです。たとえば、株式の投資配分を決定するにあたってもすべての要素が常に株式のオーバーウェイトを同時に示すわけではありません。投資判断決定には、こうした異なる観点からの投資判断決定のポイントを勘案することが重要と考えています。

1)マクロ経済分析~景気対策の効果を示唆する兆し

ピクテの景気循環分析は、世界経済が2020年には3.3%のマイナス成長に陥る一方で、翌2021年には約6%のプラス成長に回復することを示唆しています。 (図表1-1参照) 。各国政府は、経済の縮小を抑えるため、前例のない大規模な景気対策を打ち出しており、世界全体の財政出動は、GDP比3.9%前後と、2009年(グローバル金融危機時)の2倍以上に達することが予想されます。 (図表1-2参照)

こうした景気対策の効果を示唆する兆しが現れ始めていることから、ピクテでは、米国、オーストラリア、スイスならびに中国およびその他新興アジア各国の短期経済見通しを、従来よりもやや積極的な(少なくとも悲観的ではない)見方に修正しています。

一方、上記以外の地域については、十分な景気対策が講じられていないと考えます。ラテンアメリカの一部等では、貿易収支やその他の既存の課題が景気回復を妨げています。また、ユーロ圏を含むその他の地域には、景気対策を拡充する余地が十分に残されていると考えます。

これまで明らかに他国に遅れを取ってきた中国が追加の景気対策を講じ始めたことは朗報です。実体経済に供給される信用と流動性を測る「クレジット・インパルス」(GDP比の与信の伸び率)は、3月には9%強と、過去10年で最高の水準まで増加しています(図表1-3参照)。

2)流動性(資金動向)~今後、世界のGDPの約10%超の流動性供給

ピクテの流動性指標は、米国の強力な金融緩和により、上昇基調を示しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は、利下げと資産購入を併せて、既に、500ベーシス・ポイント(5%)相当の金融緩和を行っていますが、年末までに大規模な追加緩和が予想されます。これが実現すれば、(2008~2009年の)グローバル金融危機時を含む前回の7年の景気サイクル中に実施された金融緩和の累計を上回ることとなります。(図表2-1参照)

ピクテの流動性インデックスは世界株式のバリュエーション(投資価値評価)の上昇を示唆しています。(図表2-2参照)

3)センチメント(テクニカル)(市場参加者動向)~リスク性資産選好へ

リスク性資産を選好するピクテのセンチメント指標もこうした見方を支持しています。投資家の株式のポジションは買われ過ぎの状況には程遠く、また、マネーマーケット・ファンドへの資金流入額が過去最高を更新していることからも、待機資金が潤沢であることが示唆されます。世界のマネーマーケット・ファンドの純資産は、過去1ヵ月で1兆ドル増加しています。

4)バリュエーション(相対的価値分析)~主要資産は総じて魅力が薄れる

主要資産クラスのバリュエーションは、3月末時点と比較すると総じて魅力が薄れており、先進国国債は特に割高です。ピクテのバリュエーション・モデルは、今後1年の株価のリターンが債券のリターンを、10%~15%上回ることを示唆しています。

ドルは割高

米ドルの過去の均衡点からのかい離を見ると、相当割高な水準で取引されている可能性があります。 米ドルは米国の経常・財政収支の対GDP比との関連性が高く、この比率が低下するならば米ドルの傾向も下向き(ドル安)になる可能性があります。

過去の経験則からすると、今後米ドルが下落する可能性が示唆されています。

ピクテの為替モデルによればドルは各主要通貨に対して適正値から割高となっており、この水準は過去30年間でも高い水準です。過去の実績では高い水準をつけた後、ドルは下落する傾向がみられました。通貨の適正価値を測るピクテのモデルは、大方の先進国通貨および新興国通貨に対してドルに割高感があることを示しています。

新興国通貨は、景気先行指数は新興国のほうが先進国よりも状態が良く、バリュエーションの観点からも魅力的です。ピクテのバリュエーション指標は、新興国通貨が購買力平価ベースで20数年ぶりの割安水準にあることを示唆しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)の流動性供給は主要国・地域の規模を上回り、リーマンショック時を上回る規模の流動性供給が想定されます(2頁図表3参照)。これは、ドル安・円高要因となると考えられます。

ただし、足元ではドル売り・円買いのボジションが積みあがり(2頁図表2参照)、決済通貨としてのドル需要逼迫とのバランスから、短期的にはドルはこのボジションが解消するまでは底固いと見ています。 (図表5-1~5-3参照)

 

 

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