ECBの危機対応、予習・復習 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ECBの危機対応、予習・復習 欧州/ユーロ圏

イタリアの政局が混迷を深めています。イタリア政局の混乱を予想したかのようなタイミングで(当然偶然ですが)、ドラギ総裁のユーロ圏危機についてのスピーチを参考にすると、金融緩和という伝統的手段以外では、ユーロ圏の危機対応手段は意外と少ない印象です。

ECBドラギ総裁:ユーロ圏の金融危機への備えにファンド創設の必要性を語る

 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は2018年5月11日、イタリアのフィレンツェで開かれた欧州連合(EU)のイベントで、ユーロ圏の金融危機に関してスピーチを行いました。ユーロ圏の金融危機を防ぐために、過去のユーロ圏の金融危機を振り返り、教訓を述べると共に今後のユーロ圏に求められる対応について語りました。

 ドラギ総裁は危機対応には、金融政策だけでなく、(ユーロ圏共通の)財政政策が必要であることを強調しています。また、米国の連邦預金保険公社(FDIC)などを例に、ユーロ圏のファンド創設の必要性も訴えています。

どこに注目すべきか:イタリア、金融危機、OMT、不良債権処理

 イタリアの政局が混迷を深めています。イタリア政局の混乱を予想したかのようなタイミングで(当然偶然ですが)、ドラギ総裁のユーロ圏危機についてのスピーチを参考にすると、金融緩和という伝統的手段以外では、ユーロ圏の危機対応手段は意外と少ない印象です。

 まず、イタリアの金融システムを支援できる、または過去支援してきた対応策を振り返ります。

 ドラギ総裁が指摘したユーロ圏の金融危機対応の手段として、現在では、ECBが12年夏に欧州債務危機を受けて創設した無制限の債券買い入れ策(OMT、Outright Monetary Transactions)があります。なお、欧州債務危機ではユーロ崩壊が懸念されるほどの危機の中から生まれたOMTですが、現在まで使われたことはありません。債券購入といえば、ECBは金融緩和政策として資産購入プログラム(APP)を実施しています。APPは金融危機対応目的の手段ではないので、イタリア国債だけを購入するという使い方が出来ない別物と考えられ、OMTが有効と思われます。

 明確には金融危機対応ではありませんが、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)による信用の底上げも、間接的な支援と見られます。TLTROを利用しているのは主にイタリア、スペインなどの銀行だからです。

 金融危機では弱い部分、例えば不良債権の多い国などが市場の狙い撃ちとなる傾向があります。イタリアの不良債権は、17年秋に一部不良債権が処理されましたが、それでも巨額となっています(図表1参照)。なお、イタリアの不良債権処理では本来ベイルイン(投資家など債権保有者が損失を負担)する規則に例外が(何故か)EUに認められ、公的資金が注入され、目に見えない支援となっています。

 ドラギ総裁のスピーチに戻り、将来のユーロ圏の危機対応を見ると各国の拠出による危機対応基金の必要性を訴えています。この構想のポイントは、現在までの危機対応が金融政策であったのに対し、これからはユーロ圏共通の財政政策で対応する必要性を訴えていることです。

 ここで、改めてイタリア危機の理由を新聞などのヘッドラインで眺めると、再選挙前倒し?反EU政党誕生、ユーロ離脱懸念といった言葉が並んでいます。どれをとっても深刻な問題で、当面、市場変動が大きくなることは懸念されます。

 ただし、これまで振り返ってきた過去の危機対応や、これからの危機対応はユーロ圏にとどまることを前提とした内容となっています。29日のイタリア国債や信用スプレッドの上昇(価格は下落、信用力悪化)はユーロ離脱を意識しはじめた水準とも思われます。反EUとして、EUの厳格(過ぎる?)財政規律に緩和を求めることと、ユーロ離脱を目指すことには違いもあると慎重に分析することも必要と見ています。

 尚、昨日のイタリア6ヵ月国債入札では調達コストが1.6%も上昇しています。本日の10年国債入札の行方も興味あるところで、政治混迷のコストを踏まえたイタリアの判断を冷静に見守ることが必要と見ています。

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