EU首脳会議、難民問題合意に対する冷静な見方 | ピクテ投信投資顧問株式会社

EU首脳会議、難民問題合意に対する冷静な見方 欧州/ユーロ圏

今回のEU首脳会議はとりあえず難民問題で合意が見られましたが、懸念も残されました。1つ目は、合意とされる難民問題ですが、裏には合意できなかった問題も山積みであることです。2つ目は、難民問題でエネルギーを費やしたため、欧州の金融安定化の具体策(欧州安定メカニズム(ESM)の役割拡大、ユーロ圏の共通財政等)が先送りされてしまったことです。

EU首脳会議:難民問題で合意、分担ルールなどで伊首相に成果

 欧州連合(EU)首脳会議は2018年6月29日早朝に終了しました。難民・移民(以後、難民)の流入阻止や受け入れ分担に一定の合意が見られました。反難民や反EUを掲げる政党が政権を率いるイタリアが、共同声明の拒否を示唆していましたが、最終的には合意にいたりました。

 しかし、合意文書に対するEU各国の思惑は様々で、難民問題解決が困難であることも浮き彫りになりました。

どこに注目すべきか:EU首脳会議、国境管理、難民センター、ESM

 今回のEU首脳会議はとりあえず難民問題で合意が見られましたが、懸念も残されました。1つ目は、合意とされる難民問題ですが、裏には合意できなかった問題も山積みであることです。2つ目は、難民問題でエネルギーを費やしたため、欧州の金融安定化の具体策(欧州安定メカニズム(ESM)の役割拡大、ユーロ圏の共通財政等)が先送りされてしまったことです。

 まず今回のEU首脳会議では難民問題について①国境管理の強化、②難民流入センターの設置、③難民受け入れのコスト負担のルール見直し、などが合意されました。

 例えば、②の難民流入センター設立ですが、政治難民(亡命者)と経済難民を区別し、政治難民は受け入れることでEUの精神は保持しました。一方、政治難民の自由な移動を防ぐための措置を講じることなどでも合意しました。

 ③は難民が最初に到着するイタリアなどが主張していたもので、難民が最初に到着する国の受け入れ能力(コスト)が限界に達した場合のコストの分担ルールを見直すことが合意されました。地理的に難民が最初に到着する国の不公平感という問題に配慮が示された格好です。

 要約すれば、今回のEU会議では難民問題に関し、新たな難民流入を国境管理や難民の選別(受け入れるべきかどうかの判断)でコントロールするという内容です。

 ただし、合意はしたものの、難民問題の解決には程遠いと思われます。例えば、ドイツでも難民問題を巡り内紛が起きました。キリスト教民主同盟(CDU)率いるメルケル首相は国境での難民の受け入れに理解を示す一方、長年連立を組んできたキリスト教社会同盟(CSU)が国境で一部の難民を追い返す強硬策を主張しました。1日にはCSU党首であるゼーホーファー内相が、CSU党首と内相を辞任する意向を表明(その後撤回)しました。すぐに撤回、合意ということから、どこまで本気だったかは不明ですが、仮にCSUが連立政権を離れれば、連立政権は(CDU、CSUとSPD)過半数が維持できず、混乱も想定されました(図表1参照)。姉妹政党とも言われるCSUがここまで抵抗したのは、CSUの地盤であるバイエルン州で反難民を訴える政党(AfD)が勢力を伸ばしていることが背景で、ドイツでも火種が残る懸念があります。

 さらに、3日にはオーストリアのクルツ首相がドイツの合意に不満を示すなど、全体の解決には時間がかかりそうです。

 次に、難民問題以外で気になる点としては、金融安定化に関連する案件が次回12月のEU首脳会議に先送りされたことです。特に、欧州金融システムの安定性確保に向けた域内共通セーフティーネットである欧州安定メカニズム(ESM)の拡充が見送られています。大規模な金融危機時で資金不足となった場合、ESMは資金を融通することで合意はしましたが、一部の国は反対しているうえ、実施に向けた詳細の詰めは先送りで、ESMの機動性に疑問が残ります。

 ユーロ圏の預金保険機構や共通財政も先送りされました。これらの機能がユーロ圏に不足していたことが欧州債務危機を悪化させたことを思いだすだけでも、必要性は認識されますが、その実現の先送りが続いていることは気がかりです。

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