ジョセフ・スティグリッツ氏がイノベーションについて語る

イノベーションは世界を救う:ジョセフ・スティグリッツ氏が語る「ポスト・パンデミックの経済」

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ノーベル賞を受賞した経済学者、ジョセフ・スティグリッツ氏は新型コロナウィルス危機はイノベーションの重要性を浮き彫りにしたと述べています。




2021年3月に行われたピクテ・ウェルス・マネジメント(PWM)のチーフストラテジスト、クリストフ・ドネとの対談で、ノーベル賞を受賞した経済学者であり、世界的な不平等を改善し、気候変動を止めるための対策を提唱しているジョセフ・スティグリッツ教授は、「新型コロナウィルス危機はイノベーションの重要性を浮き彫りにし、また同様に、イノベーションが盛んに行われている事を示している」と述べました。以下は、対談からピックアップされた彼のイノベーションに関する指摘です。



イノベーションは躍動しており、現在のパンデミックはこれを目に見える形で強調しています。

もし新型コロナウィルスが20年か40年前に登場していたら、検査方法の特定や複数におよぶワクチンの開発をこれほど迅速に行うことは出来なかったでしょう。このように、私たちはイノベーションによって守られてきました。世界のGDPは、これらの生物学的なイノベーションがなければ、はるかに深刻かつ長期的に落ち込んでいたでしょう。

 

パンデミックによって明らかになった事の1つは、科学がいかに重要であるか、です。

もしも科学がなかったら、私たちは今頃どうなっていたでしょうか?科学は、このパンデミックから私たちを解放してくれるでしょうし、私たちが産業革命以前の200年前と比較してこのような高い生活水準を保っている理由でもあります。パンデミックはイノベーションの方向性にも影響を与えています。なんと言っても、ロボットはソーシャル・ディスタンスをとる必要がなく、新型コロナウィルスにも感染しません。そのため、以前から社会の発展の大きな原動力となっていたロボット工学とAI(人工知能)の進化に拍車がかかりました。これは一方で、社会に深刻な影響を与えています。なぜなら、ロボットやAIは特にルーチンワークを代替することに長けているからです。このことは、技術や知識を持たない労働者にとってマイナスになりかねず、私たちが直面している別の危機の1つである不平等につながり、政治的な問題の遠因となるのです。パンデミックは、よりレベルの高い技術や知識を持った人にはプラスに働き、そうではない労働者が不利になるようなイノベーションを促すでしょう。これは、米国をはじめとする多くの先進国で起きている「K字型の経済回復」で既に見られます。

 

イノベーションは高い経済成長をけん引しますが、大きな社会的格差を解消するという観点では、効果が見えにくいのはなぜでしょうか?

これは、コンピュータの時代が始まった時に、20世紀の偉大な経済学者ロバート・ソロー氏が、「イノベーションはGDP統計を除くすべての場所で見られる」と言ったときの質問とまったく同じです。当時、実際に数年経過してようやくGDPに反映されました。コンピュータのイノベーションがGDP成長率により幅広く反映されるまでには長い時間がかかりました。同様に、現在進行中のイノベーションには、後になって現れるものもありますが、中には性質が異なり、現れないものもあります。むしろ、それは人々がどれほど恵まれていると感じているかに現れているかもしれません。例えば、ソーシャルメディアは人々のつながりを強めますが、一方で不安感を高めたり、注意力の低下を招いたり、米国の1月6日の暴動やその他のヘイトクライムに見られるように扇動に使用される可能性もあります。これらはイノベーションの負の側面です。イノベーションは新しいものなので、使い方次第で良くも悪くもなります。うまくいかない時は、規制や法的枠組みを変えて、イノベーションが実際に社会の福利に役立つようにしていかなければなりません。



中国とイノベーション

多くの経済学者は、世界はゼロサムゲームではなく、ポジティブサムであると考えています。他の国がより成長すれば、その国は私たちの商品をより多く購入することができ、私たちは共に拡大し、成長することができます。しかし、懸念すべき点もあります。もちろん、誰もが公平な競争環境を望んでいます。ただ、経済システムに違いがある場合、そのシステム間で「公正に機能する共通のルール」に同意することが難しくなるため、困難な問題が発生します。この点については、AIの事例があります。AIにはデータが不可欠ですが、ヨーロッパでは、中国に比べてプライバシーが非常に尊重されています。これにより、中国はデータ量で大きな優位性を与えられることになります。パンデミックや気候変動は、私たちが様々な地球規模の問題に協力しなければならないことを思い出させてくれます。これは、今後の大きな課題となるでしょう。私たちは、お互いの価値観を維持しつつ、そのために不可欠な分野で協力するための枠組みを提供する国際的な法律の枠組みを、一体どのように考案すればよいのでしょうか?

 

気候変動は、私たちが今日直面しているもう1つの大きな問題です。

しかし、イノベーションによって気候変動に対処する手段が得られ、2050年までに二酸化炭素の排出量と吸収量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを達成できると確信しています。再生可能エネルギーのコストは誰も予想しなかった程に急落しており、私たちは化石燃料を使った経済から脱却することが出来ますが、それもすべてイノベーションの恩恵です。その性質上、イノベーションはどのような方向に向かうのか、どこに現れ、どんな形で私たちを助けてくれるのか、予想はできません。しかし、健康から気候変動まで、より明るい未来を想像することはできます。

 

気候変動は私たち全員にとって実存的な問題であり、金融と財政の両方を含むあらゆる手段を使って対処しなければなりません。

世界中の中央銀行は、座礁資産や気候変動リスクを心配しています。規制機関や中央銀行は、カーボンリスクの開示を求める動きを急速に進めています。これらはすべて、化石燃料資産からの移行にとって不可欠なものです。2050年、あるいは2060年までにカーボンニュートラルを達成した場合、化石燃料は十分どころか余ることになります。つまり、座礁資産―現在は価格が高くても、今後30年間で価値がゼロに近づいてしまう資産―があるということです。サブプライム住宅ローンの問題を念頭におくと、市場は時として、時間をかけて緩やかに価格を調整することなく、突如として急落する場合があります。しかも、これ(カーボンリスク)は、2008年(リーマン・ショック)以上の規模の連鎖的な危機につながる可能性があります。ですから、中央銀行のような機関は全体的にカーボンリスクを見直していくことが不可欠なのです。金融機関と非金融企業の双方には化石燃料から脱却するための大きな推進力があります。これは財政当局が行うべき投資や、政府が炭素の価格や規制を設定するうえで必須となる作業にも付随する、とても重要なことです。



ジョセフ・スティグリッツ

ノーベル経済学賞を受賞した公共政策アナリスト、コロンビア大学教授




本ページは2021年6月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ投信投資顧問株式会社が翻訳・編集したものです。




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