ロナルド・コーエン卿が語るサステナブル・ファイナンス

持続可能な未来への投資

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プライベート・エクイティ・ファームであるApax Partners社の共同設立者ロナルド・コーエン卿は、金融業界が世の中のためになる方向へ変わるよう先陣を切ってきました。



気候変動や社会の分断化、不平等の悪化などは、政府だけでは解決できません。解決策の重要な部分を占めているのは民間企業です。投資家は資本を投入しており、2018年の時点で、サステナブル投資の資産は31兆米ドルに達しています。しかし残念ながら、そのほとんどは、環境・社会・ガバナンスのリスクを軽減することだけに向けられており、ポジティブな変化をもたらすことに向けられているのは5%にも満たないのが現状です。ここでは、ロナルド・コーエン卿が最近のインタビューで語った、世界をより良くするために金融ができることについての考えをご紹介します1

 

私は60年代の生まれです。ベンチャーキャピタルに入った当時、私には社会に役立つことをしているという意識がありました。イギリスに何百万人もの失業者がいた時代に、雇用を創出したいと思っていました。しかし、平凡な出身の人々を支援し、会社や地域社会を豊かにしてきたにもかかわらず、年月が経つにつれ、気付けば富裕層と貧困層の格差はどんどん広がっていました。全く予想していないことでした。2000年、まだApax Partners社を率いていた私は、英国財務省から電話を受け、もっと起業家的な目線で貧困問題を検証してほしいと依頼され、すぐに「イエス」と答えました。この結果、私はインパクト投資への道を歩み始めることとなり、その道は今日、私の著書『Impact: Reshaping Capitalism to Drive Real Change』で説明しているインパクト・エコノミーへとつながっているのです。

 

資本主義が、何十億もの人々を貧困から救い、一般的な繁栄のレベルを高めることに貢献してきた一方で、今日では政府でさえも対処が困難なマイナスの結果を生み出していることは、誰もが知るところです。気候変動への影響は甚大です。また、低賃金、多様性の欠如、男女不平等などの社会的な影響も見られます。企業や投資家が利益を得るだけでなく、人々や地球にプラスの影響を与えるためには、私たちのシステムに何か変化をもたらす必要があります。私の考えでは、世界は実際に、リスクとリターンにインパクトを加える方向へ動いています。企業の利益を測るのと同じように、企業のインパクトを測るのです。



私は投資家として、リスク・リターン・インパクトの最適化の方が、リスク・リターンの最適化よりも財務的に優れた利益をもたらすと考えています。その理由は2つあります。まずリスク面では、汚染や社会問題を引き起こすことで、規制や課税の対象となってしまうリスクを回避できます。そしてリターン面では、ビジネスチャンスや投資の機会を、インパクトのレンズを通して見るようになると、リスク・リターンだけを見ていたときよりもはるかに大きな新しい機会を発見することができます。例えば、電気自動車メーカーのTesla社は、その一例です。Tesla社の創業者であるイーロン・マスク氏は、単に自動車を作るのではなく、内燃機関(ガソリン・エンジンやディーゼル・エンジン)のような公害を出さない自動車を作ることを目的として自動車業界に参入しました。すでに金融市場では、5〜6の異なるセクターにおいて、環境汚染のレベルが高いほど、競合他社に比べて株式市場での評価が低くなるという相関関係が見られます。

 

私は今日、3つの大きな力が結集することで、このインパクト投資の取り組み全体を後押しし、私たちをインパクト・エコノミーに導くと考えています。1つ目は、価値観の変化です。2つ目は、テクノロジーの飛躍的な進歩により、人類が想像もできなかった方法で、世界にインパクトを与えられるようになったことです。3つ目は、そのテクノロジーにより、ビッグデータを利用して個々の企業のインパクトを測定できるようになったことです。この3つの力が大きなチャンスを生むのです。

 

そのため、変化を察知し、流れに加わる人は成功するでしょう。そして、そうでない人は取り残されていくでしょう。これはテクノロジー業界で起きたことと全く同じです。流れに加わる側であれば、株主総会で移行計画を発表し、株主に高く評価されて決議されるという可能性もありますが、そうでない側は、一部の株主から攻撃を受けるなんてこともあるでしょう。私たちは今、1929年の大恐慌後のような岐路に立っています。コロナ・ショックの後には、大胆な策が講じられると思います。思い切ってやってみるべきです。持続可能な開発目標を達成するためには、今後10年間で約30〜40兆米ドルが必要です。

 

私は楽観主義者です。40年間、環境保護活動は政府レベルでの解決策を模索してきました。そしてついに、結論が出たのです。解決策は、企業レベルでなければならないと。汚染は政府ではなく、企業が作り出しているのです。企業が社会に与えるインパクトに関する数値を誰もが把握できるようにすれば、トップを目指す競争が生まれます。企業は、インパクト・パフォーマンスの向上に努めるでしょう。それが自社の価値を高めることにつながるからです。

 

 [1] この記事は、Pictet Wealth ManagementのESGヘッドであるローザ・サンジョルジョがロナルド・コーエン卿へ行ったインタビューの内容をわかりやすく編集したものです。




ロナルド・コーエン卿

Apax Partners社の創設者の一人であり、『Impact: Reshaping Capitalism to Drive Real Change』の著者



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本ページは2021年9月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。



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