ブランド|運用チームの見方~2026年下期以降の展望~
● 2026年年初来のプレミアム・ブランド企業の株価動向は、4月以降持ち直しの兆しもみられるものの、相対的に低調
● プレミアム・ブランド企業群の中でも分野間・銘柄間格差の拡大。銘柄選別がより重要な局面になるとみられる
● 2026年下期以降、プレミアム・ブランド企業の業績は、前年のハードルが低くなることや、地政学的緊張の緩和などを受けて、改善が予想される
年初来の基準価額動向
2026年年初来の当ファンドの投資先であるプレミアム・ブランド企業の株価動向は、3月末にかけては欧州に対するトランプ関税をめぐる新たな脅威の浮上や、イラン情勢を巡る懸念の高まりなどの逆風を背景に下落基調となりました。4月以降は、米国とイランの停戦合意への期待などを受けて、株式市場全体が上昇に転じるなかで、持ち直しの兆しもみられています。ただし、依然としてイラン情勢の先行き不透明感が残ることや、インフレ懸念の再燃などを受けて消費が抑制されるとの見方などから、先進国株式に比べて戻り幅は抑制されています。また、4月以降の先進国株式の上昇は、AI(人工知能)の成長性への期待が再び高まったことからハイテク銘柄が大きくけん引しています。当ファンドの投資先であるプレミアム・ブランド企業は、AIのテーマとは関連性が薄いことも、相対的に戻りが鈍い要因の1つに挙げられます。
【ご参考情報】当ファンドの年初来のパフォーマンスに対する寄与度
(マイナス寄与度が大きかった銘柄)
エシロール ルックスオティカやアルタ・ビューティー、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン、エルメス・インターナショナルなどが挙げられます。
エシロール ルックスオティカとアルタ・ビューティーは、それぞれの分野で競争が激化し、業績に対するマイナスの影響への懸念が高まったことなどから、株価が下落しました。
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンやエルメス・インターナショナルは、中東地域における売上高依存度は限定的であるにもかかわらず、欧州への観光客数の減少・観光客による購入の減少というかたちで中東における戦争の影響を受けたことが明らかとなりました。
(プラス寄与度が大きかった銘柄)
マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループのほか、ラルフローレンやウィリアムズ・ソノマなどが挙げられます。
マリオット・インターナショナルなどのホテル運営企業は、堅調なトラベル・レジャー需要を受けて、良好な業績動向が期待されることなどが下支えとなり、株価が上昇しています。
ラルフローレンは、手頃な価格ながら質が高く、タイムレスで洗練されたデザインの商品を提供していることなどから人気が集まっており、足元では中国における販売増も寄与し、好調な1-3月期決算を発表しました。
ウィリアムズ・ソノマは、米国における高級キッチン用品・家庭用品市場の成長期待などを背景に株価が上昇しています。
※上記はすべて2026年6月19日までの状況です。
足元で注目される動き:①分野間・銘柄間格差の拡大
パンデミック後の急回復とその後の正常化を経て、プレミアム・ブランド企業群の中でも、分野間・銘柄間で格差が拡大しています。例えば、スポーツ関連分野では、年初来、ナイキの株価は約3割下落している一方、アディダスはほぼ横ばい、アシックスなどは上昇しています。
これはポートフォリオの運営において重要な意味を持ちます。このような局面では、銘柄選択の巧拙がかつてなく重要になってくるからです。商品やサービス自体の魅力(品質、革新性、洗練されたデザインなど)、オペレーションの規律、そして事業運営におけるテクノロジーの統合が、ブランドの持続力を左右する要因となりと考えます。
欧州の高級ブランド企業の1-3月期売上高からは、より高価格帯の商品や宝飾品などについては底堅い需要があることが示されましたが、それ以外では消費者の選別が進んでいる模様です。米国の高級ブランド企業については、手頃な価格ながら質の高い商品を提供するブランドが多いこともあり、全体的に販売は好調です。また、これらのブランドは、中国市場においても人気が高まっています。
地政学的な懸念が続く中でも、旅行需要については、米国人観光客が主導するかたちで緩やかに回復しています。また、ホテル宿泊需要を価格帯別にみると、高価格帯のプレミアム・ホテルの需要が相対的に強さをみせています。
前述のスポーツ関連の企業については、既存大手企業と革新的な新興勢力との明暗が鮮明となっています。既存大手の代表格であるナイキは、依然として在庫整理が続いており、市場シェアは競合企業に奪われる状況が続いています。一方、ブランド力の強化に成功したアディダスについては、引き続き堅調な販売動向を示しています。また、中国市場でも回復がみられます。スイス生まれの高機能ランニングシューズメーカーとして人気急上昇中のオン・ホールディングについても、足元の業績動向は堅調です。充実した製品パイプラインと、高級ブランド「ロエベ」とのコラボレーションによる話題性などが、成長の追い風となっています。
注目される動き:②米国の消費者が、プレミアム・ブランド需要をけん引
プレミアム・ブランド企業の多くは、中国の消費回復から恩恵を受けるとみられ、プレミアム・ブランド企業の株式への投資は、中国の消費回復に対する「コール・オプション」として有効であると考えられます。しかし、足元では米国市場が成長を大きくけん引しています。
米国の消費者は、資産効果に支えられていることなどもあり、引き続き底堅いプレミアム・ブランド商品・サービス需要をみせています。また、中東情勢を受けて欧州への域外からの観光客は減少していましたが、足元では米国人観光客の増加などから緩やかに改善がみられている模様です。こうした環境下では、米国での事業基盤が大きいプレミアム・ブランド企業や、欧州で米国人観光客からの需要を取り込めるプレミアム・ブランド企業が、より恩恵を受けやすいと言えるでしょう。
一方、アジア市場については、好材料・悪材料が混在する状況です。中国市場については、消費の回復傾向は不均一です。堅調であるのは一部の高級ブランドや、手頃な価格ながら質の高い商品を提供するプレミアム・ブランド(例えば、ラルフローレンやコーチ(タペストリー傘下)など)などに限られます。一方、韓国市場からは、全体的に旺盛なプレミアム・ブランド需要が示されています。
注目される動き:③コスト効率の向上と顧客対応力強化に向けた投資の両立
主要なプレミアム・ブランド企業の多くは、ブランド力の強化、小売店舗網の強化、イノベーションなどへの投資を続けながら、テクノロジーを活用し効率化も追求しています。
例えば、ビューティー分野では、購買転換率の向上と値下げによる販促を回避すべく、AIを活用したパーソナライゼーションの提供を強化しています。高級ブランド分野では、高級ブランド・コングロマリット企業などが顧客情報プラットフォームを通じて、顧客エンゲージメントと商品ラインアップの意思決定を強化する取り組みを実施しています。スポーツ関連分野では、直販モデルをより効率化させ、価格管理と在庫管理を強化しています。
顧客へのパーソナライゼーションの提供や、マーケティング費用の最適化、在庫管理の精度向上を実現できる企業は、収益性を維持する上で、優位性があると考えられます。例えば、フェラーリが販売する車両の平均価格の約20%はカスタマイゼーションによるものであり、利益率と希少性の維持に貢献しています。また、四輪モータースポーツの最高峰であるF1への参戦や、新型ヨット「ハイパーセイル」の開発などを通じて、顧客エンゲージメントを深めています。こうしたことは、フェラーリの収益性の維持を下支えするものと期待されます。
警戒すべきリスクと4-6月期決算展望
4-6月期決算シーズンは、来月7月中旬以降本格化します。足元のプレミアム・ブランド企業を取り巻く環境を踏まえた上で、特に警戒されるリスクには、エントリー層の高級ブランド商品に対する需要回復の遅れ、中東からの観光客数の回復が遅れることによる欧州市場の低迷の継続、特にスポーツ関連分野などで、競争力の弱い企業が値下げ競争を仕掛け、競争が激化することなどが挙げられます。そうしたリスクを踏まえ、4-6月期のプレミアム・ブランド企業の決算動向を展望すると、現時点では分野ごと、銘柄ごとにまちまちの内容になると考えられます。しかし、2026年下期以降については、前年のハードルが低いことや、地政学的緊張の緩和などにより、業績は全体的に改善に向かうことが期待できると考えています。
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