ピクテ・ゴールド|金を取り巻く環境に改善の兆し
・金を取り巻く環境には改善の兆しがみられる
・金は大きな下落を繰り返しながら中長期的に上昇トレンドを維持してきた
金を取り巻く環境には改善の兆しがみられる
金価格は2026年2月末以降、大きく調整しましたが、足元では底堅い値動きとなっています。金を取り巻く環境に加え、テクニカル面でも基調改善の兆しがみられる注ことから、本稿では、今後の金価格の上昇要因として注目されるポイントについて整理します。
注:短期移動平均線が長期移動平均線を下から上へ抜ける動きで、相場の上昇基調入りを示唆するシグナルとして注目されます。
米国金利の低下と米ドル安
金価格は2026年2月末以降、エネルギー供給への懸念を背景としたインフレ加速と、それに伴う利上げ観測の高まりを受けて調整しました。金は一般的にインフレに強い資産と考えられています。しかし今回は、インフレそのものよりも、それに伴う金融引き締めの長期化や金利上昇への警戒感が強く意識されたことで金価格が調整した可能性があります。短期的な金融政策や景気見通しの変化を反映しやすい米2年国債利回りは大きく上昇し、これに伴い米ドルも上昇してきました。
しかし、7月中旬以降、米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が据え置かれたほか、米雇用統計が市場予想を下回ったことなどを背景に、米2年国債利回りは低下傾向にあります。加えて、米ドルが日米協調介入の影響などから下落したことも、金価格の反発を後押ししました。
短期的には米ドルの変動などに伴い金の値動きが大きくなる可能性は残りますが、急激な利上げを織り込む動きが落ち着き始めたことは、金価格にとって追い風になると考えられます。
地政学リスク・財政不安の再燃
7月中旬以降、米2年国債利回りが低下傾向にある一方で、米10年国債利回りは高止まりしています。米10年国債利回りは中長期の経済・金融環境を巡る不確実性の影響を受けやすいと見なされていますが、米10年国債利回りの高止まりには、米国財政の悪化や地政学リスクなどに対する市場参加者の警戒感が反映されている可能性があります。米国の政府債務の拡大や財政規律への不安は、米ドルに対する信認の低下や、通貨供給の拡大に伴う通貨価値の希薄化への懸念といった構造的な問題として受け止められてきました。足元では、財政赤字の拡大に伴う政府の利払い負担の増加を背景に、本来であればインフレ抑制のための金融引き締めが必要となる局面でも、中央銀行に金融緩和を求める政治的な圧力が強まる可能性が指摘されています。このような「財政支配」は中央銀行の独立性の毀損を通じ、米ドルへの信認を一段と低下させる要因となり得ます。そのため、このような環境においては、価値保存の手段としての金への需要が高まると考えられます。
インフレ懸念の再燃
中東情勢は見通しが困難な状況にあり、原油などのエネルギー価格が世界のインフレに与える影響も不透明です。エネルギー供給の障害が広範な産業に波及すれば、インフレ圧力を強める要因となる可能性があります。また、中長期的にも地域紛争や相互関税などに象徴される世界経済の分断や異常気象による影響などから、世界的な物価上昇圧力は高止まりする可能性があります。物価の上昇に伴い通貨の価値が希薄化することが懸念される中、資産価値保全の手段として、希少性の高い実物資産である金を見直す動きが強まることが期待されます。
金は大きな下落を繰り返しながら中長期的に上昇トレンドを維持してきた
直近の調整局面では、最高値からの下落幅は1,200米ドル/トロイオンス超(週次)と過去最大の水準となりました(図表3)。しかし、金は同規模の変動を繰り返しながら上昇トレンドを辿ってきました。図表4は金価格の推移を対数スケールで示したものです。対数チャートでは価格変動を値幅ではなく「変化率」で表すため、異なる局面の値動きをより公平に比較することができます。今回の調整局面の下落幅は大きくなりましたが、変化率の観点からは過去に繰り返し見られた変動の延長線上に位置づけることができます。
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