- Article Title
- 第3の柱、インド製造業の高度化に注目~株価の調整は投資機会とみる
●当ファンドの投資対象国の一つインドの株式は、株価調整で、現在はバリュエーションとファンダメンタルズの両面から魅力的な投資機会とみる
●インド経済においては、従来の農村部の農業と都市部のサービス業に加え、遅れていた製造業という「第3の柱」が成長し始めている。
●政府支援、高度先端技術投資、世界的な供給網多角化のニーズ、若く技能の高い労働力などがインドの製造業の高度化を後押ししている。
■ 当ファンドの投資対象国の一つインドの株式は、株価調整で、現在はバリュエーションとファンダメンタルズの両面から魅力的な投資機会とみる
優れた投資対象への最良の投資タイミングは、通常、明白ではありません。ひとたび明白になれば、もはや最良ではないかもしれません。だからこそ、適時に見いだすことは難しい一方、大きな成果にもつながる可能性もあります。
当ファンドの投資対象国の一つインドの足元の投資環境はやや精彩を欠いて見えるかもしれません。MSCIインド10/40指数は2026年初来(7月31日まで)で8.3%下落しています。しかし現在は、バリュエーション(投資価値評価)とファンダメンタルズ(基礎的条件)の両面から興味深い局面であるとも考えられます。
過去の高値からの広範な調整は、地政学的不確実性、原油価格の上昇、企業利益率サイクルの成熟、海外機関投資家による継続的な資金流出といった、主に循環的要因および投資家心理に基づく要因によるものです。
時価総額10億米ドル超のインド株約600銘柄のうち、およそ半数が過去最高値を少なくとも25%下回っています。それでも、この約300銘柄のうち約130銘柄は、過去5年間の平均自己資本利益率が15%以上です。これは、足元の低調な株価推移が企業の質を反映したものではなく、銘柄の質にかかわらず一様に生じた一時的なものであることを示唆しています。バリュエーション・プレミアムが縮小した今、多様な高品質企業群については、良好な投資機会が提供されている可能性があると考えます。
■ インド経済においては、従来の農村部の農業と都市部のサービス業に加え、遅れていた製造業という「第3の柱」が成長し始めている。
堅固なファンダメンタルズ(基礎的条件)は損なわれていないだけでなく、構造変化の途上にもあります。インドはしばしば、2本の強固な柱ともう1本の強固になりつつある柱から成る三本の柱に例えられます。
「農村部の農業」という脚は、生産量で中国に次ぐ強固な農業基盤を持ち、大規模な消費人口も擁しています。「都市部のサービス業」という柱は、高学歴のホワイトカラー人材を活用するサービス業がけん引しています。
ボラティリティ(価格変動性)が絶えず高まり、AI(人工知能)ハードウェア関連銘柄に投資家の関心が極端に集中する世界の株式市場において、インドの伝統的に強いビジネスモデル(農村部の大規模な農業生産基盤および広大な消費市場と、都市部のサービス業という2本の強固な柱)は、投資先の分散という観点からも魅力的です。さらに、これまで出遅れていた第3の柱、すなわち「製造業」の基盤も、イノベーションを促す複数の新たな力に支えられ、成長し始めています。
■ インド政府は数多くの高度先端技術基盤の発展を促す施策を推進
インド政府は、同国のディープテック(高度先端技術)基盤の発展を促す数多くの施策を進めています。これには、1,037.2億インドルピー(約11億米ドル)が配分された「インドAIミッション」や、半導体向け生産連動型奨励策(PLI)(5年間の政府補助金総額は280億米ドル超)が含まれます。
加えて、高度先端技術(ディープテック)や研究集約型スタートアップに対するベンチャーキャピタル(未上場企業に投資する投資会社)の関心も高まっています。現在、インドでは1,000社を超えるこうした企業が活動しており、インド工科大学群(IIT)から生まれ、消費者向けアプリの乱立ではなく、ハードウェア、防衛技術、気候変動対策、バイオテクノロジーに注力しています。
中国製造業への依存低減を求める米国の政策圧力は、欧米企業によるサプライチェーン分散を加速させており、インドはその当然の受益者として浮上しています。
若く大規模で、技能水準も高まりつつある労働力が、より高度な契約の獲得を後押しし、能力構築とバリューチェーン上での高度化の好循環を強めています。
■ 注目分野1:医薬品開発・製造受託機関~米国のバイオセキュア法が追い風に
医薬品開発・製造受託機関(CDMO)分野は、こうした進化を象徴する好例です。インドは1990年代にまでさかのぼる、低分子医薬品のジェネリック製造における確立された実績を有しています。その証左として、インドには米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた医薬品製造施設が650カ所超あり、米国外では最多です。
欧米の革新的製薬企業は長年にわたり、これら低分子ジェネリック医薬品のプロセス化学、開発、大規模製造について、インドの医薬品開発業務受託機関(CRO)やCDMOと協働してきました。低分子医薬品は新薬承認全体の55%を占めています。米国では処方箋の10件中9件がこうしたジェネリック医薬品で調剤され、その供給量の約40%をインドが担っています。
2025年末に米国でバイオセキュア法関連規定が成立したことを受け、欧米のバイオ医薬品企業は、中国を拠点とする製造を巡る地政学的リスクへの懸念を強めています。こうした環境下、インドのCDMOは、低コストの化学サービス業者から、大規模な商用医薬品有効成分(原薬)供給における戦略的パートナーへと積極的に転換しています。顧客需要の増加に対応するため、場合によっては既存能力を倍増させるほどの低分子医薬品製造能力の大幅な増強が進められています。
インドのCDMOは欧米にも研究・プロセス化学拠点を開設しており、欧米の人材と知見を取り込むことで、革新的製薬企業に一段と幅広いサービスを提供できるようにしています。こうした新能力の一部は、初めて本格的な商業規模で、低分子を超える医薬品の製造にも広がっています。新たな治療手段の代表例が、アミノ酸配列であるペプチドです。「ペプチド医薬品」は現在、有病率の高い幅広い疾患に使用されており、一般的な飲み薬より効果が高く、副作用が少なく、これまで治療が難しかった疾患を担えると期待されています。ペプチド医薬品で、最もよく知られているのが、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)関連の抗肥満症薬・糖尿病治療薬です。
肥満症治療薬市場は2030年までに1,000億米ドルを超えると見込まれ、その多くを「ペプチド医薬品」が占めると考えられます。ペプチド製造需要の増加に対応するため、イーライリリー(米国)は最近、インドにおける製造・供給能力の強化に10億米ドルを投じる方針を打ち出しました。この投資の最初の受益企業として知られるディビス・ラボラトリーズ(インド)は、イーライリリーとの長期・商業規模供給契約に向け、最初のペプチド製造ロットの検証を進めています。ローラス・ラボラトリーズ(インド)、SAIライフ・サイエンシズ(インド)、ニューランド・ラボラトリーズ(インド)などの企業も、革新的製薬企業の需要に応えるため、同様にペプチド製造能力を増強しています。これにより、インドのCDMO関連産業は能力の高度化を進めると同時に、高度な技能を持つ科学者だけでなく、化学系卒業者にも雇用を提供できるようになります。
■ 注目分野2:航空宇宙~インドの高付加価値製造業の発展で合弁事業や受注が拡大
化学研究所の外でも、同じハイデラバードの技術人材と厳格な業務運営のエコシステムの中で、インドがより高付加価値である製造へ移行していることを示すもう一つの産業があります。航空宇宙です。これは、精密工学、材料に関する専門知識、広範な認証、世界的なサプライチェーン(供給網)への統合能力を求める、規制の極めて厳しい分野です。タタ・ボーイング・エアロスペース(インド)は、米陸軍を含む世界の顧客にボーイング(米国)が供給するAH-64アパッチ・ヘリコプターの胴体を唯一製造する企業となりました。タタ・アドバンスト・システムズ(インド)とエアバス(オランダ)は2026年初め、民間部門のヘリコプター最終組立ラインを開設しました。エアバスによれば、現在インドから年間15億米ドル超の部品・サービスを調達しています。タタ・ロッキード・マーティン(インド)は、軍用戦術輸送機、C-130Jスーパーハーキュリーズの構造・空力上重要な部品である尾翼組立品の世界唯一の供給元になったと報じられています。
欧米企業との合弁事業に加え、アザド・エンジニアリング(インド)はロールス・ロイス(英国)、ハネウェル・エアロスペース(米国)、ベーカー・ヒューズ(米国)などに、ミッションや人命に直結する重要部品を供給しており、特にボーイング737、エアバスA320/A350、ガルフストリーム(米国)G550各シリーズを支えています。マザーソン(インド)はエアバス民間航空機のティア1(一次請け)サプライヤーであり、その他の顧客にはダッソー・システムズ(フランス)、ゼネラル・エレクトリック(米国)、ロールス・ロイス(英国)などが含まれます。
■ 注目分野3:防衛産業~航空宇宙産業の発展加速と歩調を合わせ急速に拡大
航空宇宙産業の発展加速と歩調を合わせ、インドの防衛産業も急速に拡大しています。2025年の防衛輸出は前年比63%増となり、現在では80カ国超に達しています。音速のほぼ3倍で飛行する巡航ミサイル「ブラモス」はフィリピンへの納入に成功し、ベトナムとの供給契約締結、インドネシアとの契約交渉報道を背景に、東南アジア諸国連合(ASEAN)の戦略的製品になりつつあります。インドは軍用機、ヘリコプター、迎撃艇、魚雷、ロケット砲、レーダーも輸出しています。こうした輸出は、145社に拡大した幅広い防衛輸出サプライヤー層に支えられています。歴史的に、この機微な分野は国有企業が支配してきました。しかし現在では民間企業が台頭しており、輸出企業の45%が民間所有です。これは、革新的な防衛エンジニアリングにおける民間企業の貢献拡大を示しています。
■ インドの製造業の高度化が加速
インドの物語は、もはや単なる大規模・低コスト生産にとどまりません。医薬品、航空宇宙、電子機器の各分野で、インド企業は設計、工程、認証、科学的複雑性における役割を拡大しています。一見急速に見えるこの構造高度化は、能力向上の積み重ねの結果です。そして、それはまさにバリュエーション(投資価値評価)が見直された時期に具体化しつつあります。忍耐強い投資家にとって、この重なりこそが投資機会となる可能性があると考えます。英国の発明家でダイソン(英国)の創業者ジェームズ・ダイソンの言葉を借りれば、「飛躍的な進歩というものはない。あるのは粘り強い努力だけであり、最後にはそれが飛躍的な進歩に見えるのだ」ということです。
※記載の個別銘柄は、一般的な業界動向のなかでの代表例を示すものであり、投資銘柄に限定するものではありません。
※これらの個別銘柄についての記載は、特定銘柄の売買勧誘・推奨することを目的としたものではなく、価格動向の予測および当ファンドにおける銘柄の売買を示唆・保証をするものでもありません。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が販売を目的として作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。取得の申込みにあたっては、販売会社よりお渡しする最新の投資信託説明書(交付目論見書)等を必ずご確認のうえ、最終的な投資判断はご自身で行ってください。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。
MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。