iTrustロボ|AIが迎える新たなステージ「フィジカルAI」の投資機会
● ヒューマノイドロボットや自動運転車などをはじめとする「フィジカルAI」に注目が集まっている
● 本稿では、AIが迎える新たなステージ「フィジカルAI」の投資機会について探る
AIが迎える新たなステージ「フィジカルAI」とは
「フィジカルAI」とは、画面上のソフトウェアエージェントとしてのみ存在するのではなく、現実世界を感知し、移動・操作ができる機械に組み込まれたAI(人工知能)を指します。高度なAIモデルと、センサーやマシンビジョン等のハードウェアを組合わせることで、現実世界で安全かつ効率的に動作できるロボットや自律型システムを実現します。ヒューマノイドロボットや自動運転車が代表的な例として挙げられますが、その可能性ははるかに広く、すでに実用面でも重要性を高めています。
例えば、医療分野においては、米インテュイティブサージカル社が提供する手術支援ロボットda vinciへの注目が集まっています。同社の手術支援ロボットda vinciは、2025年年間で世界中の300万件以上の症例で使用されるなど、医療現場の第一線で活躍しています。その最新機種da vinci 5は、AI技術を駆使した精度の高い解析能力をはじめ、これまで以上に高度な機能を備えており、市場の注目を集めています。産業分野においては、米テラダイン社などが製造現場における協働ロボット(作業員と緊密に連携して作業を行うことの出来るロボット)の導入を進めており、AI技術を応用しながら、ロボットと人間との安全な協働を推進しています。また、産業オートメーションに目を向けると、マシンビジョンがフィジカルAIの進展をけん引しています。マシンビジョンの主要サプライヤーである米コグネックス社や日本のキーエンス社などは、ロボットが複雑な環境を理解し、自律的に移動するための目および知覚となるシステムを提供しています。これらのシステムによって、ロボットは部品の認識および位置の特定、品質検査のほか、ピック・アンド・プレース(特定の物体を「つかみ」、指定した場所まで「移動し、配置する」という一連の作業工程)や組み立てなど様々なプロセスを実行することができます。マシンビジョンは、物流、倉庫、工場などで働くロボットにとって不可欠な機能であり、フィジカルAIにおける最も魅力的なユースケースの1つとなっています。
フィジカルAI市場の可能性:単なるブームか、それとも構造的な成長トレンドか
フィジカルAI市場は、依然として初期段階にあると言えます。ヒューマノイドロボットにおいては、専業とする上場企業はまだ比較的少なく、多くの主要プレーヤーは非上場企業であるか、会社全体における関連事業の収益比率がわずかなものです。しかし、AIの急速な発展により、ロボット開発のサイクルは短縮されていることから、高度なAIモデルによるデータ分析やシミュレーション、制御などが強化され、ヒューマノイドロボットのような複雑なシステムの設計および展開が迅速化されています。
また、自動運転車の開発にあたっては、自動運転車がリアルタイムで計測するデータを処理、意思決定を行うために、より高性能で高効率な半導体がますます必要とされています。実際、自動車用の半導体市場は今後数十年間で大きく拡大する可能性があると見込まれています。もちろん将来の予測には絶対はなく、不確実性が伴いますが、エッジコンピューティング(データをクラウドではなく、デバイスや現場の近くで処理する技術)の強化とシステムの自律性の向上という方向性は明確になりつつあると考えています。さらに、自動運転車の市場規模は、今後大きく成長すると見込まれており、米国におけるライドシェアサービス業界においても、技術の発展と普及率の向上に伴い、今後はさらにロボタクシーの重要性が拡大していくと期待されています。こうしたなか、独インフィニオンテクノロジーズ社などアナログおよびパワー半導体関連の主要企業は、ヒューマノイドロボットや自律型システムにおけるリアルタイムの動作や安全性などの実現に不可欠な技術を提供していることから、今後の成長に期待が集まっています。
フィジカルAIの投資機会について探る~バリューチェーン全体へのアプローチ
フィジカルAIの投資機会については、最終製品メーカーだけでなく、バリューチェーン全体を通してアプローチするのが最適であると考えています。現在、最も魅力的な投資機会は、協働ロボットやロボタクシーから産業オートメーション、医療用ロボット技術、マシンビジョンまで、複数の最終市場に対応するコンポーネントやシステム、半導体、ソフトウェアなどにあるとみています。これらの企業の多くは、フィジカルAI専業ではないものの、AI対応ハードウェアが拡大するにつれて、企業内におけるそれら関連事業の存在感は高まっていくと期待されます。
しかし、フィジカルAIの開発にあたっては、技術面および規制面での課題が存在しています。ハードウェアとソフトウェアは、自動運転車や医療用ロボットなどをはじめとした、安全性が特に重視されるアプリケーションを展開する上で、コストの観点を重視しつつ、より信頼性が高く、安全なものにする必要があります。また、これらのシステムが厳格な安全基準を満たしているかどうか、規制当局および世間の人々を納得させなければなりません。加えて、エッジコンピューティングやAIの進展にあたっては記憶媒体や高性能な半導体チップの増産が必要とされることから、今後も半導体の需給ひっ迫などが課題になるとみられます。
ヒューマノイドロボットやロボタクシーといったフィジカルAIが、直近数年以内に世界を席巻することは難しいだろうとみています。技術と規制という2つの側面に加えて、経済面でのハードルも大きいことから、短期間での大きな発展は困難であると考えます。しかし、フィジカルAIが進むべき方向性は明確になりつつあり、労働力不足、労働コストの上昇や製造拠点の国内回帰などといった構造的な要因が続く限り、フィジカルAIがもたらすソリューションへの需要は高まり続けると考えられます。
フィジカルAIは、デジタル知能と現実世界の交差点に位置しています。ヒューマノイドロボットのデモやロボタクシーの試験運用だけでなく、工場、病院、倉庫、都市などあらゆる場所で知能を持った機械が着実に、そして複合的に導入されていくことで、その進歩が測られることになるだろうとみています。フィジカルAIというテーマは、現実世界におけるAIの影響を最も具体的に示すものの一つとして、魅力的な投資機会であると考えています。
(ご参考)iTrustロボは、ロボティクス関連企業に投資。フィジカルAIを含む、AI関連銘柄に注目
iTrustロボ(以下、当ファンド)は、主に日本を含む世界のロボティクス関連企業の株式に投資します。当ファンドでは、投資対象とするロボティクス関連企業を、それぞれの事業の特徴に応じて3つの分野に分類しています。
業種別では、半導体・半導体製造装置やソフトウェアなど、情報技術セクターの保有比率が高くなっています。また、ロボティクス関連企業の株式には、AI関連銘柄も含まれます。AI は、高度な自動化・ロボット化ソリューションの開発に不可欠な技術となっています。AIの進化に伴い、これまで以上に高度な演算能力やデータ処理能力が求められており、大容量の記憶媒体や高性能チップが必要とされるなか、半導体需要の更なる加速を見込んでいます。さらに、ソフトウェアは家庭や産業界における自動化を進展させ、効率性や生産性の向上に寄与すると考えています。
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