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- 2026年第1四半期金需要は、前年同期比2%増
2026年第1四半期の世界の金総需要は、前年同期比2%増の1,231トンとなった。数量の伸びは小幅だったが、金価格の上昇により、需要額は同74%増の1,930億米ドルと過去最高を記録した。需要増の主因は金地金・金貨需要の急拡大であり、中央銀行・その他公的機関による純購入も堅調に推移した。今後についてWGCは、2026年以降も地政学的要因が金需要の中心的なドライバーであり続けるとの見方を示している。継続的な地政学リスクは、中央銀行による純購入、世界的な金ETFへの資金流入、金地金・金貨の積み増しを支えるとみられる。
■ 2026年第1四半期金需要は、前年同期比2%増、金額では74%増
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が2026年4月に公表した「Gold Demand Trends Q1 2026」によると、OTCを含む2026年第1四半期の金総需要は、前年同期比2%増の1,231トンとなった。数量ベースの伸びは小幅にとどまったものの、金価格の異例の上昇を背景に、金額ベースの需要額は同74%増の1,930億米ドルと四半期ベースで過去最高を記録した。
需要増加を主導したのは、投資需要の一角である金地金・金貨需要だった。 2026年第1四半期の金地金・金貨需要は474トンとなり、前年同期比42%増加した。これは四半期として過去2番目に高い水準であり、特にアジア投資家の買いが目立った。
中央銀行・その他公的機関による需要も堅調だった。四半期中には売却活動の増加もみられたが、ネットでは244トンの買い越しとなり、前年同期比3%増となった。
金現物裏付けETFおよび類似商品の保有量は、26Q1に62トン増加した。ただし、非常に好調だった2025年第1四半期の230トン増に比べると、増加ペースは大きく鈍化した。3月には米国ファンドからの大規模な流出があり、1〜2月の流入の多くを相殺した。北米では、米ドル高と金利および金利見通しの上方シフトが金需要の重しとなったほか、相場調整局面では利益確定、デレバレッジ、流動性確保のための売りが背景として挙げられる。
宝飾品需要は数量ベースで低迷した。宝飾品消費量は300トンとなり、前年同期比23%減少した。なお、宝飾品加工量は335ン、同23%減だった。記録的な金価格の高騰により数量ベースでは圧迫された一方、支出額は前年同期比31%増の470億米ドルとなり、第1四半期として過去最高を記録した。これは、金宝飾品に対する前向きな消費者心理がなお継続していることを示している。
テクノロジー分野で使用される金需要は、主にAIインフラの継続的な成長に支えられ、前年同期比1%増の82トンへと小幅に増加した。
■ 宝飾品需要
2026年第1四半期の世界の金宝飾品需要は、数量ベースでは大きく落ち込んだ(図表1参照)。宝飾品消費量は299.7トンと、前年同期比23%減少し、コロナ禍の2020年第2四半期以来の低水準となった。一方、記録的な金価格の上昇により、需要額は前年同期比31%増の470億米ドルとなり、第1四半期としては過去最高を記録した。つまり、消費者は金宝飾品への支出を増やしているものの、購入重量は大幅に減少している。宝飾品加工量も335.0トンと前年同期比23%減だった。
中国本土では、宝飾品需要が85.2トンと前年同期比32%減少した。主因は金価格の高騰だが、消費者信頼感の弱さ、実質所得の伸び悩み、2025年第4四半期に導入された金宝飾品に対するVAT(付加価値税)制度変更も需要の重しとなった。一方、金宝飾品への支出額は前年同期比16%増の130億米ドルとなっており、中国消費者の金に対する選好自体は維持されている。ただし、高価格環境のもとで、消費者は小型・軽量の商品にシフトしている。比較的軽量で手頃な「Hard Pure Gold」商品は若年層を中心に堅調であり、高所得層では高級・伝統的な金宝飾品への需要も比較的底堅かった。さらに、VAT負担の対象外となる低プレミアムの投資商品、すなわち金地金・金貨への需要シフトもみられた。
インドでは、宝飾品需要が66.1トンと前年同期比19%減少した。ただし、現地金価格が前年同期比81%上昇したことを考慮すると、需要は比較的底堅かったと評価されている。需要額は100億米ドルに達し、第1四半期として過去最高となった。消費者は軽量品や低カラット商品に移行しており、大手チェーン店では低カラット品の在庫比率も上昇した。市場では二極化が進み、高所得層は高価格にもかかわらず重い宝飾品を購入し続けた一方、マス層は購入量を減らすか、低カラット品、軽量品、石付き商品へ移行した。また、宝飾品よりプレミアムが低い金地金・金貨へ需要が流れた可能性も指摘されている。古い金宝飾品を新しい商品に交換する取引も多く、金宝飾品を担保とする小口銀行融資残高は2026年2月末時点で4.3兆ルピー、前年同期比124%増となった。
中東では、全主要市場で宝飾品需要が二桁減となった。地域全体の需要は34.5トンと前年同期比23%減少した。サウジアラビアは12.7トンで13%減、UAEは4.7トンで40%減、クウェートは1.8トンで25%減、エジプトは5.2トンで19%減、イランは5.0トンで31%減だった。ラマダンとイードが2月に需要を一定程度支えたものの、記録的な金価格と地域紛争の発生がその後の需要を大きく抑制した。数量は減少した一方、中東の宝飾品支出額は前年同期比30%増の50億米ドルとなり、過去最高を記録した。
トルコでは、宝飾品需要が6.8トンと前年同期比23%減少した。高く不安定な金価格、国内の高インフレ、地域・世界の地政学的不確実性が消費者心理を抑制した。一方で、需要額は過去最高となり、世界的な傾向と同様に「数量減・金額増」の構図がみられた。
米国では、宝飾品需要が13.1トンと前年同期比44%減少した。記録的な金価格に加え、関税の影響が消費者の購買力を圧迫し、米国は需要額でも前年同期比で減少した数少ない市場の一つとなった。購入頻度の低下、軽量品への移行、金宝飾品輸入の大幅減少がみられた。欧州では、地域全体の需要が8.3トンと16%減少した。フランスは2.0トンで12%減、ドイツは0.9トンで6%減、イタリアは1.4トンで39%減、英国は2.1トンで12%減だった。欧州も数量は減少したが、高価格により支出額は増加した。
ASEAN市場では、高価格より低カラット品や投資商品へのシフトが進み、宝飾品需要は全般に低調だった。インドネシアは3.3トンで20%減、マレーシアは2.9トンで23%減、シンガポールは1.5トンで13%減、タイは1.7トンで5%減、ベトナムは3.0トンで14%減だった。ただし、ベトナムでは金地金供給のボトルネックにより、投資代替品として「chi rings」への需要が流れたこともあり、需要額は4億7,200万米ドルと過去最高を記録した。
その他アジアでは、日本の宝飾品需要は3.0トンで前年同期と同水準だった。準投資的な金チェーンや装飾品の購入が需要を支えた。韓国は3.9トンと5%減少したが、婚礼関連需要の回復が下支えとなった一方、低カラット品へのシフトが数量を押し下げた。韓国の需要額は6億300万米ドルと四半期ベースで過去最高となった。
■ 投資需要:金地金・金貨
2026年第1四半期期の金地金・金貨需要は473.6トンとなり、前年同期比42%増加した。これは2013年第2四半期の602トンに次ぐ、過去2番目に高い四半期需要である。内訳では、金地金が397.7トンで50%増、公式金貨が48.0トンで5%増、メダル・模造コインが27.9トンで23%増となった。需要額は740億米ドルに達し、過去の記録を大きく上回った。過去5年間の四半期平均需要額が230億米ドルだったことを踏まえると、金価格上昇と投資家需要が同時に拡大したことが分かる(図表3参照)。
中国本土の金地金・コイン需要は206.9トンと前年同期比67%増加し、過去最高を記録した。大中華圏全体では210.7トン、66%増だった。中国では、金価格の上昇と他の国内資産に対する金の相対的な好パフォーマンスが需要を押し上げた。さらに、貿易リスクや世界的な地政学的緊張も安全資産需要を強めた。1月から2月にかけては、小型の人気投資商品が品切れとなったとの市場フィードバックも示されている。また、金宝飾品に対するVAT制度変更により、投資目的の宝飾品購入が金地金・コインへ移ったことも需要拡大に寄与した。
インドの金地金・金貨等の需要は62.3トンと前年同期比34%増加し、2013年以来で最も高い第1四半期需要となった。これは同四半期の宝飾品需要66.1トンにほぼ並ぶ水準であり、従来は宝飾品需要が金地金・コイン需要を大きく上回っていたインド市場において、重要な構造変化を示している。金価格の上昇による投資妙味の高まりに加え、一部の宝飾品需要がプレミアムの低い投資商品へ振り替わったことが背景にある。インドでは金ETFにも20トンの資金流入が続いた。
中東の金地金・金貨需要は26.4トンと前年同期比7%減少した。地域全体では前期比でも14%減となったが、国別にはばらつきがあった。サウジアラビアは5.1トンで15%増、UAEは4.0トンで27%増、クウェートは1.8トンで27%増、エジプトは5.7トンで22%増だった。一方、イランは7.3トンと43%減少した。地域紛争の影響により、UAEやイランでは日常的な市場活動が大きく妨げられた。
トルコでは、金地金・コイン需要が26.1トンと前年同期比29%増加した。投資需要が強まり、一時的に現地の金投資商品プレミアムは1オンス当たり300〜400米ドルまで上昇した。需要額は40億米ドルと過去最高を記録したが、四半期中には利益確定売りも増加した。
米国では、金地金・コイン需要が18.1トンと前年同期比14%増加した。ただし前期比では20%減少した。2月から3月上旬にかけて買いが鈍化した後、金価格の調整局面を買い機会と捉える動きが3月後半にみられた。金価格の上昇が報道で注目されたことで新規投資家も市場に参入し、手頃な小型・軽量の投資商品が人気となった。
欧州では、金地金・コイン需要が41.2トンと前年同期比50%増加した。ドイツは12.3トンで17%増、英国は6.4トンで58%増、スイスは7.9トンで37%増、オーストリアは1.7トンで100%増だった。欧州では売買双方の取引が活発であり、1月は価格上昇を背景に買いが強まったが、2月下旬から3月上旬の価格調整局面では勢いがやや鈍化した。その後、四半期末にかけて押し目買いが再び出た。
ASEAN市場では、インドネシアが23.6トンと前年同期比47%増、前期比では102%増と大幅に拡大した。経済不確実性とインフレ懸念を背景に、安全資産としての金需要が高まった。タイは10.0トンで35%増となり、2019年以来で最も強い第1四半期となった。ベトナムは9.1トンと前年同期比24%減少したが、前期比では31%増加した。高価格と国内供給制約、極めて高い現地プレミアムが需要の重しとなった一方、投資代替としてchi ringsへの需要が一部流れた。
その他アジアでは、韓国の金地金・コイン需要が12.5トンと前年同期比80%増加し、データ系列上の過去最高を記録した。金価格上昇が投資家を引き付け、国内供給の逼迫と現地プレミアム上昇につながった。日本は3.8トンと小規模ながら大幅に増加し、2四半期連続で明確な純需要を記録した。豪州は3.9トンと前期には届かなかったが、近年平均と比べれば高水準だった。1月は金地金販売店に投資家が列を作るほど需要が強かったが、2月に勢いが鈍化し、3月には価格調整を受けた利益確定売りが増えた。
■ 投資需要:金現物裏付けETFおよび類似商品
金現物裏付けETFおよび類似商品の保有量は、2026年第1四半期に62.0トン増加した。これにより、世界の金ETFは7四半期連続の純流入となった。ただし、2025年第1四半期の229.9トン増、また過去4四半期平均の約200トン増と比べると、流入ペースは大きく鈍化した(図表5参照)。1月と2月には大規模な流入がみられたものの、3月に主に米国ファンドから大きな流出が発生し、その多くを相殺した。世界の金ETFの運用資産残高は120億米ドル増加し、6,070億米ドルとなった。
地域別では、アジアが唯一、四半期を通じて毎月一貫した流入を記録した。アジアの金ETFは84トン増加し、2025年第4四半期の過去最高91トンに迫る水準となった。特に中国が地域全体の成長を主導した。中国では、安全資産需要、国内株式市場の下落、通貨安が金ETF購入を後押しした。
インドでも金ETF保有が増加した。四半期後半には利益確定売りが出たものの、金ETFには記録的な20トンの流入があった。これは、金地金・金貨需要の拡大やデジタルゴールド商品への資金流入と同様、インド投資家の金投資志向が強まっていることを示している。
日本でも、国内の金現物裏付けファンドおよび海外上場ETFに投資するファンドを通じて、金ETF需要の伸びに貢献した。日本では金地金・金貨需要も小幅ながら明確な純需要を示しており、金投資全体への関心が高まっている。
一方、欧州の金ETFは8トンの流出となった。2月初旬には金価格の調整を受けて解約が発生し、3月にはインフレ懸念の高まりも需要の重しとなった。ただし、3月後半には金価格の回復に合わせて流入が再開した。
北米では、16トンの流出となった。3月の急反転により、9カ月続いた流入基調が途切れた。米ドル高、金利および金利見通しの上方シフトが金需要の重しとなった。また、1月と3月の金価格調整局面では、ETF流出と金取引活動の増加が同時にみられ、利益確定、デレバレッジ、流動性確保のための売却が発生した可能性が示されている。
その他地域では、主に豪州を中心に2トンの小幅な流入となった。全体として、26Q1のETF需要はプラスを維持したものの、アジアの継続的な流入が欧米、とりわけ米国ファンドの3月流出を相殺する構図だった。
■ 中央銀行
中央銀行およびその他公的機関による金需要は、2026年第1四半期に243.7トンとなり、前年同期比3%増、前期比17%増となった(図表7参照)。価格変動が大きく、売却活動も目立った四半期であったにもかかわらず、中央銀行の純購入は5年平均を上回る高水準を維持した。これは、中央銀行による金購入が短期的な価格変動ではなく、外貨準備の分散や地政学リスクへの備えといった戦略的要因に支えられていることを示している。
買い手では、ポーランド国立銀行が31トンを購入し、四半期最大の買い手となった。これにより金保有量は582トンに増加した。ポーランド中銀総裁は一部の金売却可能性に言及していたものの、同行は700トンの保有目標に向けた姿勢を維持しているとみられる。
ウズベキスタン中央銀行は25トンを購入した。2025年第4四半期の29トンよりは少ないものの、買い越し基調は続いている。これにより金保有量は416トンとなり、同行の総準備に占める金の比率は87%に達した。
中国人民銀行は7トンを購入した。前四半期の3トンから購入量は倍増し、金保有量は2,313トンとなった。これは中国の総準備の9%に相当する。その他の買い手としては、カザフスタン国立銀行が12トン、チェコ国立銀行が5トン、マレーシア中央銀行が5トン、グアテマラ銀行が2トン、カンボジア国立銀行が2トン、インドネシア銀行が2トン、セルビア国立銀行が1トン、UAE中央銀行が1トンを購入した。
一方で、2026年第1四半期は売却も目立った。資料作成時点で報告された中央銀行および政府系ファンドによる売却は115トンに上った。最大の売り手はトルコで、公的部門の金保有量は約70トン減少した。これは総公的保有量の約10%に相当する。売却の大半は3月に発生し、同月には外貨・流動性目的で追加的に80トンの金スワップも活用された。ただし、トルコ中銀総裁は、これらの取引の多くは満期時に金が準備に戻る性質のものだと説明しており、資料では戦術的な流動性対応と位置付けられている。4月時点では、トルコの保有量は約535トンで安定している。
アゼルバイジャン国家石油基金(SOFAZ)は22トンを売却した。これは2025年に購入した53トンの一部を巻き戻す動きであり、売却後の金保有量は178トンとなった。ロシア中央銀行も22トンの売却を発表した。その他、キルギス国立銀行が1トンを売却し、ブルガリア国立銀行はユーロ導入に伴い2トンを欧州中央銀行へ移管した。
中央銀行の報告には遅れが生じるため、数値が今後修正される可能性があることには注意が必要なものの、未報告の購入も高水準にとどまっており、2022年以降続いている大規模な公的部門の金需要はなお継続している。2026年通年についても、地政学的不確実性と外貨準備分散の動機が残る限り、中央銀行は世界の金需要に大きく寄与すると見込まれている。
■ テクノロジー他
エレクトロニクス分野では、AIインフラの急拡大が高信頼性・高性能チップ向けの金需要を支えた。これらの用途では、コストよりも技術仕様や信頼性が優先されるため、金の使用が維持・拡大しやすい。一方、消費者向けエレクトロニクスでは、高価格を背景にメーカーが金の削減・代替を進めており、市場は二極化している。
その他産業用途では、主に金めっきやインドの伝統衣装に使われる金糸向け需要が高価格により減少し、前年同期比8%減の10.4トンとなった。歯科用途は、セラミック代替品への移行が続いたことで7%減少し、2.0トンとなった。全体として、テクノロジー分野ではAI・半導体関連の構造的成長が金需要を支える一方、価格感応度の高い伝統的・消費者向け用途では金使用の抑制が進んでいる。
■ 今後の見通し
今後についてWGCは、2026年以降も地政学的要因が金需要の中心的なドライバーであり続けるとの見方を示している。継続的な地政学リスクは、中央銀行による純購入、世界的な金ETFへの資金流入、地金・金貨の積み増しを支えるとみられる。
一方で、金利が高止まりする可能性がETF需要を抑え、投資需要全体はプラスを維持しつつも2025年を下回る可能性がある。金地金・金貨需要については、高値圏の金価格、インフレ懸念、代替投資先の乏しさ、不確実性の高まりを背景に、特にアジアで引き続き強さを保つ見通しである。
宝飾品需要については、高価格と地域的な税制変更の影響により、数量ベースではさらに下押し圧力がかかると見込まれる。ただし、経済ショックがなければ支出額は底堅く推移する可能性がある。
中央銀行需要は、価格変動にもかかわらず堅調さを維持し、通年では2025年に近い700〜900トン程度が見込まれている。
一方、供給面では、鉱山生産は高価格と採算改善を背景に小幅な増加が見込まれるが、一部地域のエネルギー不足が生産を抑制する可能性がある。リサイクル供給も増加基調にあるものの、在庫の少なさ、金価格の上昇期待、地政学的リスクプレミアムにより、増加幅は限定的になるとみられている。
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