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なぜ日米の超長期金利は上昇したのか?
田中 純平
2026/05/21

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概要

いま、日米の超長期金利(30年国債利回り)が大きく上昇している。その要因として、エネルギー価格の上昇に伴うインフレ期待の高まり、FRBの利下げ期待から利上げ期待への転換、日米双方における政府債務の悪化などが指摘されている。しかし、その根本原因は、米国が「世界の警察」としての役割を放棄したことにあると考えられる。



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日米の超長期金利が急上昇

いま、日米の超長期金利に再び上昇圧力がかかっている。2026年5月19日(火)の米国30年国債利回りは一時5.19%まで上昇し、直近のピーク水準であった2023年10月23日の5.17%を上回った(図表1)。

日本でも、2026年5月18日に30年国債利回りが一時4.21%まで上昇し、過去最高水準を更新した(図表2)。なぜ、日米の超長期金利はともに大きく上昇しているのか?。

ホルムズ海峡封鎖の長期化観測などが超長期金利の上昇要因だが・・・

そもそも、日米の超長期金利は今月11日(月)から、すでに上昇トレンド入りの兆し出ていた。きっかけは、米国とイランの戦争終結期待の後退である。トランプ米大統領は、米国とイランの停戦が「大きな生命維持装置に頼る状態」にあると述べ、自身の提案に対するイラン側からの回答を「ごみ同然」と表現した。これを受けて、WTI原油先物価格は終値で前日比2.8%高の1バレル98.07ドルを付けた(図表3)。

12日(火)は米国の4月消費者物価指数(CPI)が前年同月比で市場予想を上回ったほか、翌13日(水)も米国の生産者物価指数(PPI)が前年同月比で市場予想を上回ったことなどから、米連邦準備制度理事会(FRB)の「利上げ」観測が高まった(図表4)。

さらに、5月14日(木)~15日(金)に北京で行われた米中首脳会談でホルムズ海峡封鎖の打開策が示されなかったことなどから、15日(金)のWTI原油先物価格は終値で前日比4.2%高の1バレル105.42ドルを付けた。

一方、日本固有の要因としては高市政権による補正予算編成の観測が挙げられる。エネルギー価格の高騰を受け、7~9月の電気・ガス料金に対する補助金の実施が検討されている。今年3月に再開したガソリンなど燃料への補助金の原資は4月末で9,800億円あるものの、夏前には枯渇するリスクが一部で指摘されている。金融市場では、この補正予算が編成されることへの警戒感から、特に財政インパクトが大きい30年国債が売られている(金利は上昇している)と考えられる。

超長期金利上昇は米国が「世界の警察」を放棄した代償か?

しかし、そもそもホルムズ海峡の封鎖をもたらした原因をたどれば、それは「覇権国」としての米国の衰退から始まっているのではなかろうか。米国が「世界の警察」としての役割を2013年に放棄して以降、2014年にはロシアがウクライナ領であったクリミア半島を一方的に併合した。さらに2022年には、再びロシアがウクライナに軍事侵攻し、欧州がロシア産エネルギーの禁輸措置を決定したことで、世界のエネルギー・バランスは大きく崩れはじめた。

また、米国自身も、長期間に及んだイラク戦争やアフガン戦争の反省から、イランへの地上部隊派遣(全面戦争)には消極的になっており、イランによるホルムズ海峡封鎖を許す隙を与えたと指摘されている。この結果、エネルギー価格上昇→インフレ圧力上昇→超長期金利上昇、という構造が出来上がったとも解釈できる。

実際、ロシアによるウクライナ侵攻が起こった2022年2月には、月次の米国30年国債利回りが、ちょうど100カ月移動平均線を下から上へ突き抜けていたことが分かる(図表5)。

この超長期金利のトレンド転換は、1989年のベルリンの壁崩壊や1991年のソ連崩壊後に続いたグローバル化時代(金利低下局面)が、金融市場において終わりを告げたタイミングとして位置付けられる。

言い換えれば、筆者の見立てでは、今後は「世界の警察」が不在となる脱グローバル化時代(金利上昇局面)に入ったと考えるべきであり、投資家自身も、このような新しい環境を前提に備え、身構える必要があるのではないだろうか。


田中 純平
田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
投資戦略部長

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。日経CNBC「朝エクスプレス」、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」に出演。週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載中。日本経済新聞やブルームバーグではコメント多数引用。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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