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- イラン戦争によるエネルギー産業へのインパクト
米国とイランが和平合意に至っても、原油供給への長期的な不安は払拭できそうにない。一方、人工知能(AI)は社会・経済を大きく変えつつあるが、その活用はまだ黎明期と言える。今後、インフラとして電力供給力が一段と重要性を増すだろう。化石燃料依存度の低下を迫られる以上、原子力が有力な電源として再認識される可能性が強い。日本が勝ち残れるか、瀬戸際なのではないか。
■ 改めて脚光を浴びるのは・・・
国際エネルギー機関(IEA)によれば、2024年、世界のデータセンターの電力消費量は416TWh、総需要量の1.4%だった。現段階で国際的な需給を左右する存在ではないが、IEAはベースケースで2030年まで年率14.7%、高成長ケースだと同20.3%の伸びを想定している(図表1)。つまり、標準的シナリオでも、5年間でドイツ1ヶ国分に匹敵する年間需要が新たに生まれる計算だ。AIを進歩させ、利用を拡大するには、電力インフラの整備が重要な鍵を握るだろう。
一方、米国、イスラエルによるイランへの攻撃は、中東産エネルギーに依存することのリスクを国際社会に再認識させた。世界の総発電量のうち、石油を燃料とする比率は2.3%に過ぎない(図表2)。もっとも、21.3%を占める天然ガスは、カタールやサウジアラビアなど石油同様に中東のシェアが高く、価格が原油に連動する傾向がある。
また、ドナルド・トランプ大統領によって失速しているとは言え、地球温暖化も重要な課題だ。中長期的な視点としては、世界的に化石燃料への依存度を下げざるを得ないだろう。
そこで、改めて脚光を浴びつつあるのが原子力である。東京電力福島第一原子力発電所の事故で世界的に脱原発の動きが広がったものの、ロシアによるウクライナ侵攻を契機として、先進国、新興国を問わず多くの国で建設計画が浮上した。
原発は建設、安全管理に巨額の費用を要する一方、燃料費は安価であり、且つ安定的に電力を供給できる。また、発電時に温室効果ガスをほとんど排出しない。それらを総合的に勘案すれば、原発は中長期的な視点で安価であり、AI時代に必須の電源なのではないか。
■ 瀬戸際にある日本の関連企業
原子力回帰の国際的潮流において、現在の日本に大きな課題があることは間違いない。最大の問題は、長期に亘り原子力政策が漂流、国内で原発の建設が進まなかったことだろう。一方、IEAによれば、中国では過去10年間に28基の原発が運転を開始し、現在も35基が建設中だ(図表3)。
極めて複雑な構造を持つ原発は、建設経験によるノウハウの蓄積が施工能力を大きく左右する。当然、そのトラックレコードは受注の要だ。日本は2018年にトルコ、2020年には英国、2025年にもベトナムの建設事業から撤退した。福島第一事故後、国内での工事がストップするなか、日本政府・企業は、様々な事情があったにせよ、海外でも相次いで原発建設から手を引いてきたのである。
その結果、強く懸念されるのは、大学、大学院で原子力工学を学ぶ学生が減少傾向にあることだ(図表4)。これでは、小型モジュール炉(SMR)、高温ガス炉、核融合炉など次世代型原発の開発で、人材不足に直面する可能性が強い。
日本の原発建設は、1980年代がピークだった。エネルギーを筆頭に天然資源の乏しさが対米英開戦の要因になった上、第1次石油危機に見舞われ、原子力利用へ舵が切られたのである。
イラン戦争により多くの国が石油、天然ガスの調達難に直面したことで、国際的にエネルギーのアロケーションを見直す機運が高まった。AI・半導体関連、国防関連に並び、脱化石燃料のための代替エネルギー関連産業・企業への投資は、金融市場において長期的なテーマになると想定される。ただし、その有力候補である原子力に関し、投資対象に日本企業が含まれるか否かについては、重大な瀬戸際にあると言えるのではないか。
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