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- ナフサが示すインフレのリスク
ホルムズ海峡の封鎖状態が続くなか、政府は石油製品の調達に力を注いでいる。高市早苗首相は、6月2日の中東情勢に関する関係閣僚会議で、年度を越えて供給にメドが立ったと説明した。仮に量が確保されても、価格の問題は解消されない。ナフサの輸入価格は、4月、前年同月比49.2%上昇した。最終製品への転嫁により、インフレ圧力が強まる可能性を想定すべきだろう。
■ 募る民間企業の危機感
パッケージの白黒化を発表したカルビーに対し、首相官邸幹部の苛立ちが報じられた。高市政権が石油・石油製品の確保に汗を流し、市中における供給懸念の封じ込めを極めて重視していることは十分理解できる。有名企業の行動を契機に生産・消費が委縮すれば景気に悪影響が及びかねず、税収にも響くだろう。また、買い占め・売り惜しみにより、結果として供給不足になる可能性は、2024~25年におけるコメの例でも明らかだ。
もっとも、民間企業が危機下で独自の防衛策を講じるのは当然である。現実に4月の貿易統計を見ると、原油の輸入量は前年同月比63.7%、天然ガスは同20.6%、ナフサは同43.6%減少し、供給不安が数字として顕在化した(図表1)。
また、ナフサに関しては、2025年の供給量のうち、中東からの輸入が全体の42%に達している(図表2)。一方、中東以外からの輸入が22%、国内生産は36%だ。ただし、国内生産と言っても、原料が原油である以上、あくまで精製プロセスが国内で行われているだけである。原油の調達に支障が生じれば、国内生産も困難になるだろう。
「産業のコメ」と呼ばれるナフサは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエンなど、広範な石油化学基礎製品の原料だ。供給不安が続く場合、その影響は極めて大きいと想定される。資源エネルギー庁の統計によれば、3月末時点でのナフサの在庫は半月分程度に過ぎない。中東情勢を日本がコントロールできない以上、民間企業の危機感は簡単には解消されないだろう。
■ 供給が満たされても問題は価格
ナフサの原料である原油の備蓄量は、5月の時点で官民合わせて6,572万klである(図表3)。2025年の国内における石油製品の生産状況によれば、ナフサの産出量は原油に対して9.7%だ(図表4)。つまり、ナフサの実質的な備蓄量は637万klであり、67日程度の消費量に相当する。
原油及びナフサの中東からの輸入分の一部を米国などにより代替し、輸入量をイラン戦争前の70%程度と想定、不足分を在庫の取り崩しで賄えば、平時に必要なナフサの7、8ヶ月分を確保できるだろう。さらに、代替調達の確保が可能である場合、高市首相による「年度を越えて供給のメドが立った」との説明には十分な合理性がある。
もっとも、それは机上の計算であり、必ずしもナフサ由来の製品がミクロベースの需要家に行き渡ることを担保しているわけではない。先行き不安から流通段階で少しずつ在庫の積み増しがあるだけでも、昨年のコメのような状況が起こり得る。
さらに、供給が回復したとしても、問題は価格だ。4月における原油の輸入単価は、昨年の1万1,690円/bblから、今年は1万6,120円/bblへ37.9%値上がりした。ナフサの価格も、前年同月比49.2%上昇している。特に中東以外からのナフサの輸入単価は10万6,556円/klであり、中東産の8万9,660円/klに比べ2割近く割高な水準だ。
原油及び関連製品への懸念は、供給量がある程度回復した場合でも、ホルムズ海峡への懸念がリスクプレミアムになることで、価格が以前の水準へ下がる保証がないことである。これは、コスト上昇要因であり、需要側の企業は先行きを警戒せざるを得ないだろう。マクロ的に見れば、最終的に製品価格へ転嫁される可能性が強い。
高市政権は供給不安によるパニックの抑止に努めており、それは一定の成果を挙げている。ただし、それでも、今後、少なくともインフレ圧力はさらに強まると考えるべきではないか。
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