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ウォーシュ議長で何が変わったのか?
市川 眞一
2026/06/23

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概要

FRBは、6月16、17日のFOMCで、4回連続して政策金利の変更を見送った。もっとも、デュアルマンデートである「雇用の最大化」、「物価の安定」については、明らかにインフレ抑制に軸足をシフトさせている。ケビン・ウォーシュ新議長の下でも、金融政策の方向性について、大きな変化はないと言えるだろう。一方、市場との対話などテクニカルな面で、新たな取り組みの兆しが見られた。


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■ 金融政策の方向に変化なし

今回のFOMCでの注目点は、ケビン・ウォーシュ新議長による政策の変化、及び中東情勢による金融政策への影響の2つだった。結論から言えば、金融政策そのものに関して、議長交代による大きな影響はなかったのではないか。FRBは、市場が事前に想定した通り、インフレ抑制へ軸足を移した。それを端的に示すのが参加者18名の政策金利の見通しで、2026年末は3ヶ月前と比べ明らかに上方へシフトしている(図表1)。

ウォーシュ議長は、金融政策の決定に当たり、基調的物価の動向を見る上で、値上がり、値下がりとも値動きの大きな品目を一定程度控除して算出したトリム平均を重視する考えを示してきた。4月の個人消費支出物価上昇率は前年同月比3.8%、コア指数は同3.3%だが、ダラス連銀が算出するトリム平均は、同2.4%に止まっている(図表2)。ただし、FRBが「長期的な目標」とする2%を下回っているわけではない。

一方、米国とイランは60日間の停戦延長で覚書を交わし、足下、原油市況は下落した。それでも、ペルシャ湾岸主要産油国が受けたダメージ、ホルムズ海峡における航路の安全性など、中東情勢が物価に与える影響は依然不透明と言えよう。

前回のFOMCにおいて、3名の地区連銀総裁が、声明にフォワードガイダンスとして利下げ方向を示唆することに反対した。こうした状況を考えれば、FRBが先行きの利上げを視野に入れていることは、既に市場に織り込まれていたと考えられる。議長が交代しても、その方向に変化はなかった。

■ 新議長の真価が問われるのは・・・

ウォーシュ議長のこれまでの発言では、1)基調的インフレ重視、2)量的緩和からの脱却、3)市場との対話の見直し・・・の3点が金融政策の変化を示唆するものとして注目されてきた。今回のFOMCでは、声明でフォワードガイダンスの部分が削除され、且つ同議長はFFレートの見通しを示していない。



一方、声明文で新たに言及したのは、「銀行システムへの十分な準備預金の維持という方針を再確認した」の部分だ。敢えて量に触れたのは、最近のFOMCにはなかったことである。

FRBは、リーマンショック期、新型コロナ期に国債などを購入して大量のマネタリーベースを供給した(図表3)。正常化の過程にあるが、5月末のマネタリーベース対GDP比率は17.2%、リーマンショック以前の5~6%台を大きく上回る水準だ。今回、FRBは量に関する政策変更は見送ったものの、問題意識を示した可能性は否定できない。

何れにせよ、米国の経済状況を考えれば、少なくとも当面、FRBは中東情勢を見極めつつ、インフレの抑制に軸足を置かざるを得ないだろう。今回のFOMCは、議長が交代したなかでも、そうしたFRBのスタンスを明確に示したと言える。

シカゴマーカンタイル取引所(CME)が先物から算出した年末時点でのFFレートの予想誘導水準を見ると、現状の3.50-3.75%で据え置かれる確率は12.8%へ低下、1回の利上げを意味する3.75-4.00%が35.2%、2回の4.00-4.25%が35.0%になった(図表4)。

今回のFOMCに関して、ドナルド・トランプ大統領の反応はまだ明らかではない。自身が指名した直後だけに、あからさまな批判は控えると見られる。

ただし、中間選挙がさらに近付けば、再びFRBへの圧力を強める可能性は否定できない。仮にそうした場合、ジェローム・パウエル前議長のように毅然と耐えられるか、そうした時こそ、ウォーシュ議長の真価が問われるのではないか。


市川 眞一
市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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