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- 注意すべきウォーシュ議長のB/S政策
中東情勢が再び緊迫し、原油などエネルギーの価格が上昇するなか、7月27、28日、ケビン・ウォーシュ議長にとって2回目のFOMCが開催される。市場のコンセンサスは、年内に2回の利上げとなった。もっとも、ウォーシュ議長が重視するのは、金利よりも量ではないか。リーマンショック、新型コロナ禍の下、大量のマネーが供給された。その見直しが行われる可能性が高まっている。
■ 新議長は市場との対話を放棄
今回のFOMCを終えると、次回は夏休みシーズン明けの9月15、16日だ。折り返しとなる8月27~29日には、例年恒例のカンザスシティ連銀主催による年次経済政策シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会議が開催されるが、先行きの金融政策について語ることを嫌うウォーシュ議長は、市場に対して言質を与えないだろう。
シカゴマーカンタイル取引所(CME)が先物価格から算出する市場が織り込むFFレートを見ると、24日現在、2026年末は3.75-4.00%の確率が32.0%、4.00-4.25%が38.8%、4.25-4.50%は18.5%だ。イラン戦争が始まった2月末以降、3.50-3.75%で据え置きとの見方が強まったが、5月22日にウォーシュ議長が正式に就任した前後から、年内に1、2回の利上げが行われるとのシナリオを想定するようになった(図表1)。
米国の場合、市場の期待インフレ率は、FRBが重視するコア個人消費支出(PCE)物価に6ヶ月程度先行する傾向がある(図表2)。従って、期待インフレ率をコントロールすることは、FRBにとり物価の安定を確保するための重要なツールの1つと言えるだろう。歴代の議長は、市場との対話を通じて、金融政策の方向を市場に織り込ませ、期待インフレ率に影響を与えようとしてきた。
ウォーシュ議長は、市場との対話ではなく、別の方法でデュアルマンデートである雇用の最大化と物価の安定を目指すようだ。その方法については、同議長が設けた5つのタスクフォースが、極めて重要な意味を持つのではないか。
■ 注目のタスクフォースは「量」
ウォーシュ議長の下、1)コミュニケーション(市場との対話)、2)バランスシート政策(準備預金制度と資産構成の評価)、3)データソースの利用(新たな情報源の確保と収集方法の評価)、4)生産性と雇用(AI等新技術が及ぼす影響)、5)インフレの枠組み(構造変化を踏まえたインフレの再定義)、以上5つのタスクフォースが設けられた。このうち、最も注目されるのは、量的政策に直結するFRBのバランスシートに関する議論だろう。
FRBの金融政策は、リーマンショックが大きな転機になった。歴史的な量的緩和である3回のQEを通じて、保有する有価証券残高が急増する一方、負債側では超過準備が大きく拡大した(図表3)。2017年10月より、保有資産の段階的圧縮を開始したものの、2020年春以降の新型コロナ禍に直面、再び大規模緩和を余儀なくされたのである。
FRBが供給するマネタリーベースの対GDP比率を見ると、リーマンショック以前は5~6%台で安定していた(図表4)。その後のQE、新型コロナ対策により、2021年8月には27.0%へと上昇している。現在は17.4%程度と推定され、ピークから10%ポイント近く低下したものの、リーマンショック前の平時を依然として10%ポイント以上上回る水準だ。
ウォーシュ議長は、この大量に供給された流動性こそが、インフレ、そしてプライベート・クレジットなどの金融商品が暴走するリスクの温床になりかねないと考えているのではないか。敢えて5つのタスクフォースを立ち上げたものの、本丸はバランスシート政策と見られる。その正常化を目指すことで、期待インフレ率をコントロールする考えだろう。
ただし、1990年代初頭における日本のバブル崩壊期が示すように、中央銀行による量的な引き締めは、政策金利の引き上げ以上に難易度が高い。ウォーシュ議長率いるFRBが正常化を急ぐ場合、資産市場に大きな影響を及ぼすことも想定される。この点については、まず、タスクフォースの議論及び結論を見極めなければならない。
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