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FOMCブラックアウト期間直前に示された対立点
梅澤 利文
2026/07/28

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概要

FRBは7月FOMCを前にブラックアウト期間入りした。6月のドットチャートでは年内の金融政策についてFOMC内の対立が浮き彫りとなった。ウォーシュ議長はタカ派・ハト派双方の発言を行い、結果として中立姿勢とみられる。地区連銀総裁にはインフレ懸念から利上げ寄りの声も強いが、執行部の多くは据え置きでまとまりそうだ。なお、FRB改革として設置されたタスクフォースでの議論の行方が注目される。



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6月のFOMCでは、年末までの金融政策をめぐり、意見の相違が見られた

米連邦準備制度理事会(FRB)は7月28-29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催予定だ。FOMCに先立ち、FRBは7月18日から30日までをブラックアウト期間と定め、対外的に金融政策に関する発言を自粛している。

前回(6月)のFOMCでは、年内の金融政策をめぐって、合計9名が据え置きまたは利下げ(利下げは1名)を指示した(図表1参照)。反対に、合計して同数の9名が26年末までに1回から3回の利上げを支持し、FOMC内での対立が浮き彫りとなった。発言機会が多いブラックアウト期間直前のコメントから、対立の構図を整理する。

7月会合を前にFOMC参加者の発言は利上げの有無を巡り分かれている

6月のFOMCにおけるドットチャートでは、26年末の政策金利の水準を「利上げ」方向とみる参加者と、据え置きもしくは利下げ(利下げは1名)をみる参加者がそれぞれ合計9名で拮抗した。6月のFOMCには19名が参加した(図表2参照)。しかし、金融政策に関する過度な情報発信に反対姿勢を示すウォーシュ議長はドットチャートへの見通しを提出しなかった。

図表1のドットチャートから、年内の追加利上げ見通しを巡る対立以外に読み取れるのは、27年以降の利上げに消極的なことだ。仮に年内利上げがあったとしても、比較的短期の利上げにとどめるのがFOMC参加者の現状認識であると思われる。ブラックアウト期間前の発言などを参照し現状認識を振り返るとともに、今後の注目点を整理する。

ウォーシュ議長は7月14日、15日に議長就任後初となる半期議会証言に臨んだ。議会証言の中でタカ派(金融引き締めを選好)的な発言として、同日に発表され、前月に比べ鈍化した6月の米消費者物価指数(CPI、図表3参照)について、「任務は完了していない」と述べたことが挙げられる。もっとも、15日の証言ではAIがインフレを抑制する可能性を示唆した。FOMC参加者の多くはAI投資が(短期的には)インフレ要因とみている。ニューヨーク(NY)連銀総裁やジェファーソン副議長が講演などでAIのインフレ圧力について言及している(図表4参照)。生産性改善などによりAIがインフレを押し下げるのはまだ先、という声が多い中、ウォーシュ議長の議会証言での発言はハト派(金融緩和を選好)的と思われる。結局バランスをとれば、ウォーシュ議長は中立(据え置き)的なスタンスを演じているように思われる。図表2の「政策姿勢」は、ブラックアウト期間前の発言等を参考に筆者が判断したものだ。ウォーシュ議長は14日の議会証言の発言(図表4参照)だけならばタカ派だが、議会証言2日目の発言や、7月初旬のECBフォーラムでのインフレ懸念低下発言などを考慮して中立とした。

ただし、筆者はウォーシュ議長の政策運営スタイルを消化できていない。市場にも同様の「もやもや感」があるようだ。7月のFOMCはインフレ鈍化など経済指標をみると「据え置き」が順当だ。しかし、短期金融市場の織り込みを見ると、一部は利上げを織り込んでいる。金融政策の先行きを語らないウォーシュ議長のスタイルを前に、「ひょっとしたら」感が捨てきれないようだ。

利上げ観測の背景として、地区連銀総裁の中にインフレ懸念の根強さが挙げられる。特に、投票権を持つクリーブランド連銀のハマック総裁やダラス連銀のローガン総裁はFOMCで利上げを支持する可能性がある。図表4で両氏のブラックアウト期間前の発言を見ても、インフレへの懸念を持ち続けているようだ。なお、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、ドットチャートで年内の利上げ支持を公言している。その点ではタカ派だが、1回の利上げ支持なので、ややタカ派としている。議長、副議長にNY連銀総裁を加えた執行部はインフレについて個々には温度差があるものの、おおむね据え置きを支持するとみられる。

NY連銀のウィリアムズ総裁は足元のインフレ率は高いと認識しつつも、今後のインフレ鈍化を見込んでいる中、金融政策について「現在の政策スタンスは適切な位置にある」と述べ据え置きを示唆している。

なお、同じ執行部でもボウマン副議長らに「?」をつけているのは、最近、金融政策に対し目立った発言がないからだ。ただボウマン副議長は過去の発言等を振り返りハト派とした。1年前のFOMCでボウマン副議長は、ウォラー理事とともに、据え置きに反対し、利下げを支持した。その路線ならば副議長は、疑問符つきながらハト派と思われる。

一方、判断が難しいのはウォラー理事だ。当時はボウマン副議長とともにハト派だった。しかし、最近金融政策の姿勢を明確に変えた。ウォラー理事は今年5月のフランクフルトでの講演で「長い間、緩和バイアスを支持してきたが、労働市場とインフレに関する最近の指標を受けて考えが変わった」と述べている。7月には、インフレ指標の内容によっては利上げを支持する可能性を示唆したと述べたことから、ややタカ派とした。ただし、他のFOMC参加者にも共通したことだが、発言のタイミングで政策姿勢の評価が変わりうる。不確実性が高い状況では柔軟に政策姿勢を調整することは、市場への説明が伴うなら妥当だろう。

7月のFOMCを占うと、金融市場が織り込むように、利上げの可能性も残されるが、基本は据え置きと筆者はみている。利上げ判断の1つの目安とされた6月のCPIが鈍化したことは据え置き支持の材料となろう。しかし、ウォラー理事が指摘したように、インフレ鈍化を確認するには、低い伸びが数か月続くことが必要と指摘している。利上げをあきらめた据え置きでなく、利上げの必要性を確認するための据え置きを7月のメインシナリオとしたい。

タスクフォースの概要が徐々にあから化になる中、意見の相違も見られる

6月FOMCで、ウォーシュ議長はFRB改革の骨格として5つの分野にタスクフォースの設置を発表した。①FRBのコミュニケーション、②FRBのバランスシート政策、 ③データの活用方法や依存について、④ FRBのインフレの枠組み、⑤生産性と雇用、が示され、7月9日に各タスクフォースの外部の責任者が発表された。

内容は年末をめどにまとめられる運びだが、発表された責任者が議論をリードすると思われる。一方、FOMC参加者からも、数は多くないが、様々な意見が聞かれるようになった。

①の「FRBのコミュニケーション」には政策金利の将来的な道筋をFRBが示唆する「フォワードガイダンス」を存続させるべきか検討される見込みだ。ウォーシュ議長がドットチャートも含め、今後の政策の道筋を示すことに消極的だからだ。しかし、ウォラー理事はローマのイベントで、フォワードガイダンスの問題点を指摘しつつも、明確に擁護する姿勢を示した。過去の例として、コロナ禍後にインフレが急加速する中、フォワードガイダンスにこだわり、据え置きが長期化したことに反省を示した。一方で、利上げに踏み切る局面ではフォワードガイダンスが市場との有効な対話ツールであったことを強調した。ウォラー理事は、市場が判断に迷っているときに当局が説明することの重要性を指摘した。7月FOMCを前に、市場には不安をベースに利上げを織り込む動きもある。フォワードガイダンスはある程度、懸念を和らげる可能性もあることを踏まえれば、筆者はウォラー理事に一理あると考える。

FRBのバランスシート政策について、5月にバー理事は講演で、健全な銀行システムを促進する要だと指摘した。ウォーシュ議長はバランスシートの規模などを変えたい考えのようだが、具体策はこれからだ。

③のデータの活用方法や依存について、なのか④のFRBのインフレの枠組みなのか不明だが、ウォーシュ議長からインフレ指標について、議会証言などで発言があった。ウォーシュ議長は変動の大きい項目を除いたコアインフレ指標に否定的なうえ、これまで好意的に述べていたトリム平均(データを順に並べ、上位と下位から一定割合を除外して算出)にも否定的であった。この指標もタスクフォースで検討されるのだろうが、否定ばかりでなく、決めることも必要と思われる。

足元でも、意見の相違が目立つのはAIのインフレへの影響だ。タスクフォースでは、⑤の生産性と雇用などで検討されそうだ。ウォーシュ議長が、AIは生産性を向上させ、ディスインフレ(インフレ鈍化)を引き起こすというのが持論だからだ。しかし、図表4にあるように、ジェファーソン副議長は足元のAI投資はインフレ要因と指摘している。同様のコメントはNY連銀のウィリアムズ総裁からも聞かれた。また、他の地区連銀からもAI投資がインフレ懸念要因と指摘するペーパーなどが過去に発表されている。もっとも、タスクフォースは生産性に関する議論をカバーし、AIや生産性とインフレの関係はFRBが決めるという棲み分けは可能かもしれない。

ウォーシュ議長はFRB改革の骨格となるタスクフォースの責任者として各タスクに3人ずつの外部有識者を発表した。FOMC参加者の一部にはすでに異論があるようだ。タスクフォースの結論と金融政策との棲み分けなど、争点が浮かび上がりそうだ。ウォーシュ議長の手腕に期待したい。


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梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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