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- 米国が日本へ円安阻止で協調する理由
7月30日夜より、円安に歯止めを掛けるべく、日米協調による大規模な介入が行われた模様だ。今回、特に目立つのは、スコット・ベッセント米財務長官の動きである。日本国債売り・円安が国際的なソブリン危機の発火点となるリスクを懸念してのことではないか。ただし、日米当局の協調・介入だけで中長期的に市場の動きに抗うのは難しい。日本の財政政策、金融政策が鍵を握るだろう。
■ 米国による対日協調の理由
7月30日夜に始まったと見られる政府の為替介入は、これまでとは異なるものと言えよう。日本時間の31日夜には、ベッセント財務長官がXへ投稿、日米当局の緊密な連携を演出した。さらに、フィナンシャルタイムズは、米国財務省が円買い・ユーロ売りの介入を行ったと報じた。
この一連の米国の動きには、3つのポイントがあるのではないか。1つ目は、米国が円売り・日本国債売りによるソブリン危機の飛び火を極めて深刻に懸念している可能性だ。それは、円安による対日貿易赤字の拡大とは違う次元の問題である。
2つ目は、ベッセント長官の投稿が、本来のカウンターパートである片山さつき財務相ではなく、高市早苗首相及び日銀にのみ言及していたことだ。同財務長官は、円売り、日本国債売りの要因が、日本の低過ぎる政策金利と考えているのだろう。
3つ目は、米国財務省による介入が、ドル売りではなく、ユーロ売りだったと伝えられている点だ。
円、ユーロなど主要6通貨に対するドルの相場を示すドルインデックスには、米国の期待インフレ率と同方向となる傾向がある(図表1)。また、期待インフレ率は、米国のコア個人消費支出(PCE)物価の先行指標だ(図表2)。
米国によるドル売り介入が、ドル安誘導と市場に受け止められ、ドルが急落した場合、中間選挙を前にインフレが加速しかねない。従って、円買いに際し、ユーロを売却したのだろう。つまり、米国はドル安を望んでいるわけではないと考えられる。
■ 円安阻止に必要な財政・金融政策
日本政府の為替介入も無限に続けられるわけではない。ドル売りの原資となる外貨準備は、今年に入って823億ドル減少、6月末は1兆2,875億ドルになった(図表3)。ゴールデンウィーク中の11兆7千億円分の為替介入に際して、ドル調達のため売却されたことが要因ではないか。
今回の介入も外貨準備を活用したと見られ、今後のドル売り原資は減少したはずだ。10兆円近い規模でドル売り・円買い介入を繰り返せば、外貨準備が実質的に枯渇するとの観測が拡がり、市場で円売りが加速する可能性は否定できない。
つまり、為替介入や日米の協調姿勢だけで、中長期的に円安の流れを止めるのは難しい。重要なのは、1)日本の財政政策に対する市場の信認を高め、国債消化を円滑に行うこと、2)日銀が着実な利上げを実施、期待インフレ率をコントロールすること、この2つが王道と言えそうだ。
もっとも、高市首相は、7月30日、来年4月より食品に関する消費税率の引き下げを実施する意向を示した。また、2027年度予算の概算要求に関する基本方針として、高市内閣は、成長投資枠の要求には上限を設けないとしている。これらは、財源の裏付けに欠ける財政拡大策であり、国債の安定消化の懸念材料と言わざるを得ない。
さらに、日米両国の期待インフレ率が接近したにもかかわらず、米国の政策金利の誘導水準は3.50-3.75%、日本は1.00%であり、極めて大きな実質金利差が残っている(図表4)。実質金利の低い国から高い国へ資本が流れるのは、むしろファンダメンタルズに基づく動きと言えるだろう。
為替介入と日米の協調姿勢だけで、ファンダメンタルズに対し長期間抗うことは難しい。ベッセント長官が日本と協調姿勢を採るのは、中間選挙までとなる可能性も否定できない。日本の財政政策、金融政策が変化しない限り、円安の流れが本格的に転換したと考えるのは早計ではないか。
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