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- FIMAレポ・ファシリティの実像
7月末、日米政府は円買いの協調介入を実施した。もっとも、円を対ドルで最大8円程度リバウンドさせるのが精一杯のようだ。そうしたなか、注目を浴びているのがFIMAレポ・ファシリティである。外貨準備が保有する米国国債を担保とすることで、FRBからドルを借り受けることができる。ただし、ドルを調達する上限が変わるわけではなく、FRBに対して利払いが発生することが盲点だろう。
■ 円安の基調は変わっていない
財務省が7月30、31日に実施した為替介入は、史上最大級の総額11~15兆円だったと推定される(図表1)。米国財務省も31日に円買い・ユーロ売り介入を行ったと発表した。片山さつき財務大臣は、8月3日に談話を発表、「今後、更なる協調介入を実施することも躊躇しない」と明言して、円安阻止へ強い意欲を示している。
もっとも、日米協調介入にも関わらず、効果はドル・円を最大で8円動かす程度に止まった(図表2)。日米の実質金利差が縮小しておらず、円キャリートレードのファンダメンタルズが崩れたわけではない。現時点で円からドルへの資本の流れが変わったとは言えないだろう。
■ ドル調達を容易にするFRBの制度
今回、注目されるのは、将来の介入に際して、FIMAレポ・ファシリティの「活用を予定している」と財務大臣談話に書かれたことだ。これは、米国国債を担保としたFRBによる外国当局へのドルの貸出である。ニューヨーク連銀に口座を持つ外国の中央銀行、通貨当局に対し、債券担保付現金貸借取引(レポ)によって、ドル資金を供給できる(図表3)。期間は原則としてオーバーナイトだが、ロールオーバー(期間延長)が可能で、1対象当局当たり1日600億ドルが上限とされた。
この制度を使えば、日本政府は、外貨準備が保有する米国国債を売却することなく、売るためのドルを調達できる。片山財務相は、8月3日の会見で、「流動性については、全く心配していないというイメージは伝わったのではないか」と語った。
■ ドル売りの制約要因は消えない
FIMAレポ・ファシリティはあくまでレポであり、ドルを借り受けるには、担保として米国国債を差し出す必要がある。外貨準備が保有する6月末の証券の残高は9,286億ドルだ(図表4)。7月30、31日のドル売り介入額は800億ドル程度であり、この規模の介入を続けるならば、FIMAレポ・ファシリティの活用では最大限で11回程度が限界だろう。
円売りを仕掛けようとするファンドは、当然、日本政府の介入原資を計算する。FIMAレポ・ファシリティを活用しても、ドルを無限に調達できるわけではなく、外貨準備が保有する米国国債の担保化が進めば、介入原資の枯渇により円売りが加速する可能性が消えるわけではない。
さらに、支払金利が発生することも重要だ。FIMAレポ・ファシリティ制度は、米国国債を担保に入れてドルを調達した場合、スタンディング・レポ・ファシリティ(SRF)の最低応札金利と同水準をFRBに払うことを義務付けた。現時点で日本政府がこの制度を利用してドルを調達した場合、FRBに年利3.75%の利息を払うことになる。
今年度予算で、外国為替資金特別会計(外為特会)は、米国国債などの運用収入が4兆6,542億円とされ、2兆8,513億円の剰余金が見込まれている(図表5)。それは、防衛費増額などの財源だ。
FIMAレポ・ファシリティを使えば、外為特会の利払い費が急増する可能性があり、財政へのインパクトは無視できない。コスト負担の重さから、レポ取引を解消する場合、ドルを買い戻してFRBへ返済する必要が生じる。そこを投機筋に狙い撃ちされ、円安が加速する展開も十分に起こり得る。
FIMAレポ・ファシリティを活用したドル売り・円買い介入は、米国に為替介入を容認してもらう代わりに、米国国債の金利上昇による迷惑は掛けない、そうした介入手法だ。結局、財政・金融政策によって円の本質的魅力を高める以外、小手先の手段で円安を本格的に止めるのは難しい。
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