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- 利上げを模索する日銀 もう1つの制約要因
米国のスコット・ベッセント財務長官は、日本政府との協調介入後、日本国債の低金利が世界の「アンカーであり続けた」と語った。デフレ期を通じて、日銀は異次元の金融緩和を継続、生み出されたマネタリーベースは国際金融市場へ供給されてきたと言える。インフレへの対応から、日銀は利上げを迫られているが、それが世界のマネーフローを変化させる可能性には注意が必要だろう。
■ 日本が世界の資金供給源
ベッセント財務長官は、日本政府と協調して実施した7月31日のユーロ売り・円買い介入後、多くのメディアへ露出してその背景を説明した。このなかで、同長官は、「長年、日本国債は世界の金利のアンカーであり続けた」と語っている。
国際収支統計によれば、比較可能な1996年以降、金融収支は2013年を除いて対外資産の取得超過、つまり、日本は世界にマネーを供給し続けてきた(図表1)。2025年までの直近10年間だと、その額は合計で208兆9,082億円に達する。
また、日銀の資金循環により、主な経済主体の資金過不足状況を見た場合、海外は国内の政府・地方自治体と並ぶ構造的な資金不足セクターだ。それを資金余剰の家計、非金融法人企業がファイナンスしてきたと言えよう(図表2)。
ベッセント財務長官が指摘したのは、日本が長期に亘りデフレ下で低金利政策を継続、国際金融市場における資本の源泉になり、米国を含む世界の金利の安定に寄与してきたとの見方ではないか。それは、データから十分に証明されている。
ちなみに、2008年秋のリーマンショック以降、日銀、FRB、ECBは大量のマネタリーベースを市場に供給した(図表3)。2017年以降、FRB、ECBは金融政策の正常化を目指したが、2020年春の新型コロナ禍によってむしろ量的緩和の強化を余儀なくされたのである。マネタリーベースが減少に転じたのは2021年の秋以降だった。
特筆されるのは、経済に対する量的緩和の規模だ。マネタリーベースの対GDP比を見ると、米国のピークが2021年8月の27.0%、ユーロ圏は同年5月の48.9%なのに対し、日本は同年9月の119.0%である(図表4)。FRB、ECBも大胆な緩和策を実施したが、日銀が突出していることに疑問の余地はない。この金融政策により、日本は世界の資金供給源になったと言えよう。
■ アンカーが機能しなくなるリスク
今年6月の時点で、米国のマネタリーベース対GDP比率は16.9%、ユーロ圏は25.2%と推定される。一方、日本の場合、低下基調にはあるものの、水準は80.0%とまだ非常に高い。低金利だけでなく、マネタリーベースの過剰供給も、円の余剰感から円安方向への圧力の一因と言えよう。
金融緩和に裏打ちされた世界への資金供給により、昨年末の時点で、日本の対外資産は1,805兆6,342億円、負債は1,243兆8,838億円、純資産残高は561兆7,504億円になった(図表5)。資産の768兆6,530億円は証券で、うち192兆2,808億円が米国において発行された債券だ。
日本の資金が逆流した場合、米国の金融市場にも影響が及ぶ可能性は否定できない。
ベッセント財務長官の懸念は、日本の金融政策がインフレに対して”behind the curve(出遅れ)”に陥ったとの観測から日本国債が売られた場合、急速な金利上昇の波が米国に伝搬するシナリオと見られる。従って、日銀の秩序ある利上げにより、そうしたリスクを抑えるよう求めているのだろう。
一方、日銀が急速、且つ大幅な利上げを実施した場合、「アンカー」が機能しなくなる結果、国際金融市場の安定が失われる可能性もある。つまり、国際金融市場の安定を維持する上では、日銀による利上げにも相応のリスクがあるわけだ。
日銀による異次元の緩和に依存してきた以上、米国は一蓮托生とも考えられる。それだけ日銀の異次元の緩和は異常であり、摩擦を起こさずソフトランディングするのは極めて難しいのではないか。
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