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- 世界同時金利上昇の背景
G20財務大臣・中央銀行総裁会議及び関連イベントで、スコット・ベッセント米財務長官は、日本の経済・金融政策に強く容喙した。もっとも、米国の長期金利上昇は、インフレ圧力に加え、財政の拡張に対する市場の見方を反映しているのではないか。国際社会の分断は、主要国の財政状況を悪化させるだろう。それは、通貨価値の構造的な下落と名目金利の上昇を招く可能性が強い。
■ インフレ要因としての国際社会の分断
ノースカロライナ州で開催されたG20財務相・中銀総裁会議は、主要国の長期金利が軒並み上昇するなか、例年にも増して市場の関心が高かったと言える。会議自体は改めて各国の分断を印象付けた一方、ベッセント財務長官による日本の財政・金融政策への容喙が目立った。
G7各国の長期国債利回りは、1990年代以降、約30年間に亘り低下トレンドをたどった(図表1)。1991年12月の旧ソ連崩壊で、米国主導のグローバリゼーションが進み、労働コストの低い中国、ASEAN諸国、インド、メキシコなどへ世界の生産拠点がシフト、安価な工業製品が先進国の物価安定に寄与したことが要因と考えられる。
しかし、2020年代に入り状況は一変した。新型コロナが国際的なサプライチェーンを寸断、地政学的には、中国による香港の体制統合、ロシアのウクライナ侵攻、武装組織ハマスによるイスラエル襲撃、米国、イスラエルのイラン攻撃など、国際社会の亀裂を象徴する事件が続発している。
分断は1)サプライチェーンの断裂、2)地域紛争の激化、3)資源の奪い合いを招き、構造的なインフレの要因と言えよう。従って、グローバリゼーションの下で低下を続けてきたG7各国の長期金利は、大きくトレンドを変化させたのではないか。
そして、分断の政治状況は、財政の拡張をもたらすと考えられる。明快な例は国防費だ。北大西洋条約機構加盟国は、昨年6月の首脳会議で、2035年を目途に関連予算を合わせた国防費の対GDP比を5%に引き上げるとの目標を掲げた。また、各国で景気対策や投資拡大へ向け財政支出が拡大している。結果として、政府債務対GDP比率は多くの国で上昇傾向だ(図表2)。
■ 米国の金利上昇は日本が要因か?
ベッセント米財務長官は、米国の長期金利上昇について、日本の影響を繰り返し指摘している。しかし、より本質的には、既に40兆ドルの大台を超えた米国の連邦政府債務の膨張が、民間のAI投資と競合することで、資本のクラウディングアウトが起きているのではないか(図表3)。議会予算局(CBO)は、8月20日、2026会計年度の財政赤字について、2月時点の想定を2千億ドル以上上回り、2兆1千億ドルに達するとの推計を示した。
デフレ期に日本の財政赤字が問題なく消化されたのは、日銀が受け皿になったからだ。国債・財投債の発行残高に占める日銀の保有比率は、2023年12月末には53.8%に達した(図表4)。
足下、この巨大で市場原理に影響を受けない「投資家」が構造的な売り越しに転じたことで、日本の長期金利は市場原理で決定される方向へ正常化しつつあると考えられよう。ただし、そのプロセスは平坦ではなく、紆余曲折が想定される。
一方、米国の国家債務の膨張に関して、インフレ圧力の下、FRBが日銀と同様の役割を果たすとは思えない。むしろ、ケビン・ウォーシュ議長は、FRBのバランスシート圧縮検討を公言している。
長期金利上昇を懸念する米国財務省は、8月19日、国債買戻しについて、1回当たりの額を従来の20億ドルから40億ドル以上へ引き上げる方針を示した。しかし、これは目先の需給調整に過ぎず、現段階で効果を確認できていない。
日本、米国など主要先進国は、今後、国際社会の分断によるインフレ、そして国家債務の膨張、2つの問題により、構造的な金利上昇圧力に直面する可能性がある。それは、国家の信用力に関わる問題だ。金利上昇、通貨価値下落に備えたポートフォリオを組む必要があるのではないか。
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