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- 9月「中銀ウィーク」にみる今回の金融政策の特色
9月の「中銀ウィーク」では、日米欧を中心に多くの国・地域が金融政策決定会合を開き、日米欧はいずれも利上げを実施した。米国はタカ派姿勢が強まり、ECBや日銀は物価リスクを重視した。一方、インフレ低下と通貨安の落ち着きからブラジルは利下げを継続、メキシコや北欧諸国はデータ次第で据え置きと利上げを使い分ける姿勢だ。スイスは金利据え置きとともに為替介入スタンスをやや修正した。
FOMCの前後(主に後)、多くの国・地域で金融政策決定会合が開催された
9月の第2週から第4週頃にかけて、世界の多くの国や地域で金融政策決定会合(以下、会合)が開催された(図表1参照)。金融政策への影響力が大きい米金利を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)開催に合わせて会合が設定される傾向があるようだ。ただし、米国は利上げを決定したが、当然ながら国によりある程度、金融政策に違いがみられた。
米国は9月に発表された経済データを受け利上げ見込みが急速に強まった
日米欧の中央銀行が金融政策を同時期に決定する今回(9月)の「中銀ウィーク」では、日米欧ともに、事情は異なるが(後述)、利上げを決定した。他の国を見ると、南アフリカ、ノルウェーのように利上げで追随する国もある一方、英国などは据え置きとし、ブラジルは利下げを決めた。
今回の中銀ウィークは市場予想と実際の決定に違いが目立たなかった。会合前の「市場予想(図表1、左から3列目)」と、会合での決定である「9月政策(右から2列目)」が一致している。この点についてだけなら、波乱が抑えられた中銀ウィークであった。
当レポートでは、日米欧は結果発表から1-2週間程度経過しており、結果よりも、その後の展開などを主に整理する。他の国については、特色のある中央銀行について要点をまとめたい。
日米欧は9月会合で利上げをしたが、道筋は異なっていた。市場は9月初めには、日銀と欧州中央銀行(ECB)の9月会合の利上げをほぼ確実視していた。一方、米国の9月会合に対する市場の利上げ見通しは、9月月初で五分五分程度に過ぎなかった。8月月初に発表された軟調な7月雇用統計の記憶や、8月の消費者物価指数(CPI)などのインフレ状況を確認したい意向があげられる。さらに米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁(9月2日、「金利は適切な水準」)らが利上げに対しやや慎重姿勢だったことも多少影響したとみられる。
しかし、9月に発表された8月の雇用統計やCPIなどは利上げの必要性を示唆する内容だったことを受け市場は利上げ見通しを急速に強めた。9月のFOMCで示されたドットチャートでも年内あと1回か2回の追加利上げが(一部の例外を除く、図表2参照)支持されるなどタカ派(金融引き締めを選好)度合いが高まった。
9月のFOMC後の参加者のコメントに変化がみられる。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は24日にロンドンのイベントで、AI需要の強さや、米国経済の堅調さを指摘し、追加利上げの必要性を示唆した。発言に変化がみられる参加者は別にもいる。フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は9月のFOMC前は比較的ハト派(金融緩和を選好)的であったが、24日に開催されたフィラデルフィアでのイベントで、「今後、自分の予想通りに状況が推移するなら、小幅な引き締めが正当化される」として追加利上げを支持する考えを示した。筆者は、年内追加利上げを選挙前の10月より後の12月を想定している。来年の利上げは、今後の展開次第であり、現段階では見込んでいない。
日銀、ECBの今後の金融政策は9月の利上げ程、明確ではなかろう
ユーロ圏ではECBが米国より1週間ほど先に利上げを決定した。ラガルド総裁が指摘するように「迷う余地のない」決定だった。問題は今後の金融政策だ。ECBは政策の道筋を示さず選択の柔軟性を確保した。利上げが迫られるとすると、エネルギー価格、つまり中東情勢が主要な要因とみられるが、仮に戦闘が早期に終結しても、二次的効果が残るようなら追加利上げの要因となり得よう。
カギとなるのはイランと米国との戦闘の期間だ。トランプ大統領は、終結の時期について11月の中間選挙後との見通しを示している。戦闘当初の想定からすると、これでも遅い終結だが、現実を見ると、これが本当なら早期終結に思えてしまう。大統領側近からは任期中に終結を迎えるか危ぶむ声が報道されているからだ。ECBは経済見通しの作成にあたり、戦闘終結までの期間などを反映させてシナリオを構築している。戦闘が長期化するならば、追加利上げの必要性が高まるとみられる。
日銀の9月会合における利上げは、市場が事前に織り込み、ECB同様に確実視していた。利上げの決定にサプライズはないが、反対が2票出た点でタカ派度合いが減じられた。また、日銀会合後の植田総裁の会見内容も期待したほどのタカ派ではないとの見方が広まった。
市場は1年後の政策金利の水準は2%を上回ると見込んでいる。ターミナルレート(利上げの最終到達点)はさらに高く、おそらく2.5%近辺と思われる。日銀が中立金利の範囲(1.1%~2.5%)の上限あたりに達することが想定されている。
日銀の物価のリスク認識などから、今後も利上げ姿勢であることは確かだと思われる。また、利上げペースも今回の会合で3ヵ月に1度程度にシフトさせたが、今後も同様のペースが想定される。ただし、金融環境の緩和度合いを確かめながらの政策運営を緩やかにシフトさせていく可能性もあるとみられる。それでも当面は利上げ姿勢維持で何ら変わらないだろう。日銀の物価上振れリスクへの懸念や、インフレ率も物価指標によっては高いからだ。一例を挙げれば、日銀が25日に発表した、生鮮食品に加え、ガソリンの暫定税率廃止や補助金などの「特殊要因」を除いたコアCPIは、8月分が前年同月比2.6%上昇と、7月の2.3%上昇を上回り再加速した。上振れリスクに注意が必要だ。
植田総裁は会見で金融環境についても緩和的と述べ、その見方として①長期金利、②銀行貸出の動向、③資産市場の3点を挙げた。そのうち、①の長期金利についてはかなり引き締まっているとの認識だった。そのうえ会見時から、長期金利はさらに上昇しており、緩和的とは言い難いだろう。
しかし、②の貸出動向を銀行の総貸出平均残高の伸びで見ると、水準は高く緩和的だ(図表3参照)。会見で植田総裁は②については、まだ緩和的と指摘した。しかし、過去3ヵ月の伸びは鈍化傾向で、仮にこのペースが半年程度維持されるなら、緩和度合いを慎重に点検する必要はありそうだ。
③の資産市場についても植田総裁は緩和的としているが、先行きは読みにくい。筆者は日銀の当面の利上げ姿勢は維持するとみているが、金融環境の点検には注視が必要とみている。
国特有の事情はあれど、中東情勢や米国金利が共通の背景に
日、米、ユーロ圏以外で注目したいのはブラジル中銀が、他の国が利上げや据え置きとする中、9月会合でも利下げを決定したことだ。昨年中頃まで5%台だったインフレ率(IPCA)は足元4%台前半と、物価目標(3%±1.5%)の範囲に収まっている。また、レアル安にも落ち着きがみられ、ブラジル中銀は今年3月から利下げを開始した。今回の利下げで、5会合連続となる。実質金利の高さなどからは利下げ余地はありそうだ。
ただし、ブラジル中銀はさらなる緩和に慎重姿勢も示し始めた。(中東情勢を含め)不確実性が高いこと、インフレ率は鈍化してきたが、物価目標の中心値は依然上回っていることから慎重な政策運営が求められるとしている。足元のインフレ率を9月のIPCA-15で見ると、前月比で0.7%上昇と警戒水準となった。期待インフレ率も高止まりしている。そのうえ、ブラジルでは10月に大統領選挙を控えることも、慎重姿勢の背景だろう。利下げ余地はあることから基本利下げ姿勢を継続するとみるが、政策運営にあたり、これまでとは異なり、慎重な判断が求められそうだ。
同じ中南米のメキシコは、3会合連続で6.50%に政策金利を据え置いた。米国の利上げに対して、機械的な反応はしない考えが声明文に示された。しかし、これまでの据え置き重視の姿勢から、「データ次第で次の政策(利下げの再開など)を柔軟に判断する」スタンスにシフトしたとみられる。
北欧では24日にスウェーデン中央銀行が政策金利を据え置いた一方で、ノルウェー中央銀行は利上げとし(ともに市場予想通りながら)、対応が分かれた。ノルウェー中銀はインフレ率が3%台で推移しており、物価目標を上回ることから、以前から示唆していた利上げを決定した。
スウェーデン中銀は、8月のCPIが前年同月比で0.3%上昇と低水準なことなどが据え置きの背景とみられる。しかし、声明文などで、足元の物価鈍化は財政措置による一時的なもので、今後のインフレ懸念は高く、利上げの必要性を示唆している。物価などの見通しに変化がなければ年内(11月か12月会合に)利上げの可能性が高いと説明している。ノルウェーと利上げのタイミングは異なるが、金融政策の方向は同様とみられる。
ブラジルのような例外はあるが、米国の利上げや、その背景となった中東情勢悪化の長期化などを受け、利上げ、もしくは警戒的な据え置きが今回の中銀ウィークで幅広く見られた。
最後にスイス中銀は、据え置きではあるが、注目点としては為替政策(スイスフラン)に変化があったことが挙げられる。中東情勢の悪化など地政学リスクが起きるとスイスフランは上昇する傾向がある。スイスの金利がゼロ%であるのも、スイスフラン高に対する政策対応の一環だ。
今回の会合でスイス中銀は政策金利を据え置く一方で、声明文ではスイスフラン売り「意欲の高まり」との従来の表現を削除し、「必要に応じた市場関与」へと和らげた。スイスフラン高圧力にやや落ち着きがみられ、足元ではむしろスイスフラン安に転じている。また、スイス中銀は小幅ながらインフレ見通しを上方修正したことを踏まえ、積極的なスイスフラン高抑制の介入姿勢を後退させる局面と判断したとみられる。
スイス中銀がゼロ金利政策を採用した当時、「いつマイナス金利へ向かうのか」に注意が向けられた時期もあった。当時も今も、スイス中銀はマイナス金利政策を回避したい意向と思われる。今後の展開に不確実性も多いが、マイナス金利へ向かう方向より、ゼロ金利政策からの脱却の方向に向かう可能性も考えられそうだ。
中銀ウィークの金融政策を振り返ってきた。金融政策は米国とすべての国が同じ方向というわけではないが、ある程度の相似性が見られたのは、中東情勢の影響など共通要因の影響が大きい局面であるからと思われる。それはスイスのような国についても、例外とは言い切れなかったようだ。
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