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- 中国株式市場におけるロング・ショート戦略の機会
多様化・深化を続ける中国の株式市場において、なぜロング・ショート戦略が有効なのでしょうか。本稿では、ピクテ・アセット・マネジメント 中国株式トータル・リターン戦略 シニア・インベストメント・マネージャー、ラン・ワン・サイモン(Lan Wang Simond)が、その理由を解説します。
中国株式市場はどのように変化してきたのか
私が1990年代半ばに中国で資産運用業務に従事し始めて以来、金融市場を取り巻く環境は大きく変化してきました。当時の中国は、非常に景気循環性の高い市場であり、成長を続ける石油化学産業に支えられ、玩具や靴などの安価な製造品を世界に供給する国として知られていました。しかし、今日では、ハイテク産業をはじめとする付加価値の高い分野が台頭し、可処分所得はこの10年でほぼ倍増しています。その結果、中国は世界最大級の消費市場の一つへと変貌を遂げました。
上場企業はわずか数社から数千社へと増加し、上海証券取引所および深圳証券取引所はいずれも時価総額ベースで世界トップ10に入っています1。
また、投資機会の多様化も進んでいます。例えば、MSCIゴールデン・ドラゴン指数に占めるテクノロジー企業の比率は、2011年の21%から現在では42%にまで拡大しています2。市場の多様化が進むにつれ、ファンダメンタルズ分析の必要性は一段と高まっています。中国株式市場における投資機会を最大限に活かすためには、専門家チームによるアクティブなボトムアップ・アプローチが不可欠です。
さらに、規制面の変化も見逃せません。かつては外国人投資家に対して完全に閉鎖されていた国内A株市場は、現在では国際的な投資家に向けて段階的に開放されています。ストック・コネクト・プログラムの導入により、投資家は香港証券取引所を通じて、上海・深圳のA株市場に、香港上場株と同様のルールでアクセスできるようになりました。
中国株式市場は依然として政府の規制変更に敏感な政策主導型の市場であるものの、コーポレート・ガバナンスや会計の透明性は10年前と比べて大幅に改善されています。
なぜロング・ショート戦略は中国株式市場で効果を発揮するのか
中国ではすでに大きな構造的変化が進行しており、多様化と消費主導型経済への移行は今後も続くと見られます。このような急激な変化は、勝者を生み出す一方で敗者も生み出します。ロング・ショート戦略は、その両方に投資機会を見出すことが可能です。
経済構造の転換に伴い、中国経済の成長率は鈍化しています。過去30年間にわたり年平均10%という高成長を遂げてきた中国は、現在では成長ペースがその半分程度に低下しています。その結果、一部のセクターでは成長性や収益性の面で課題に直面しています。
国有企業(SOE)は、素材やエネルギーなど特定の産業では依然として支配的な地位を占めていますが、それ以外の分野では民間セクターが活況を呈しており、ダイナミックで世界クラスの企業が数多く存在します。
図表1:MSCIゴールデン・ドラゴン指数におけるセクター構成比の変化(過去15年間)
出所 : MSCI, Pictet Asset Management.
期間:2011年3月1日~2026年2月27日
どこに最大の投資機会があるか
中国当局が戦略的な優先分野と位置づける産業には、長期的に有望な投資機会が数多く存在します。その代表例がバイオテクノロジー分野です。研究および製造の両面で注目されており、中国は初期段階の治験実施拠点3として米国を抜き、世界最大規模となっています。こうした活気ある中国企業は、ファイザー(Pfizer)やメルク(Merck)といった大手多国籍企業からも注目を集めています。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)によれば、中国発の医薬品の売上高は2030年までに年間340億米ドル、2040年には2,200億米ドルに達する可能性があるとされています4。
AI(人工知能)もまた成長分野の一つです。ディープシーク(DeepSeek)の AIアシスタントは、1年前に世界のテクノロジー・セクターに大きな衝撃を与え、中国が有する「コスト」と「スピード」という2つの重要な優位性を浮き彫りにしました。大規模言語モデル(LLM)に限らず、半導体製造装置などの他の分野においても、中国企業は市場投入までの期間を先進国の競合他社の数分の一に短縮し、コストも大幅に抑えています。これは、低コストかつ高性能な技術が求められる現代において、極めて重要な競争優位性です。
そのため、私たちは、世界的に高い競争力を有する産業や、収益の改善と妥当なバリュエーションを兼ね備えた企業に対して、強気の姿勢を取っています。
一方で、経済的な逆風や競争激化、過剰生産能力に直面している企業には、空売りの機会があると考えています。自動車産業や、スマートフォン、パソコンなどの消費者向け電子機器を含む一部のセクターでは、主要部品のコスト上昇が重荷となっています。また、不動産などの伝統的なセクターについても、慎重な見方をしています。
なぜ今、中国株式市場ではベータではなくアルファに注目すべきなのか
中国の経済環境は依然として厳しい状況にあります。成長率は年率4〜5%程度で安定しているものの、価格圧力により企業収益は圧迫されています。当局は積極的に対応しているものの、その主眼は経済危機の回避にあり、大規模な財政出動ではないと見ています。中国株式市場全体の利益成長率は、今後5年間で年平均約7%と、比較的緩やかな水準にとどまると予想しています。
より高いリターンを目指す投資家にとっては、市場全体へのエクスポージャー(ベータ)に依存するのではなく、アクティブなボトムアップ型の銘柄選択によるアルファ創出に注力することが重要です。詳細な分析を通じて、原材料価格や利益率への圧力から十分に守られている企業を見極めることが可能となります。
ロング・ショート戦略を採用することで、中国の成長の恩恵を享受しつつ、同国の構造転換に伴うリスクや、新興国市場全般に見られるボラティリティによる下振れリスクを抑制することがでるでしょう。
[1] https://www.msci.com/documents/10199/113f7338-90a7-47ce-bed9-f51e67ee0a44
[2] https://www.msci.com/documents/10199/113f7338-90a7-47ce-bed9-f51e67ee0a44
[3] https://www.ft.com/content/ad55ee0c-ae32-42df-8e64-a2690454be8d?syn-25a6b1a6=1
[4] https://www.morganstanley.com/insights/articles/china-biotech-boom-generics-to-innovators
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