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- スイス株式および債券の長期パフォーマンス(1900年〜2025年)
ピクテ・ウェルス・マネジメントは、スイス株式・債券の長期パフォーマンスに関する調査の最新版を発表しました。今回の分析では、従来の起点であった1926年をさらに遡り、1900年から2025年にかけてのスイス株式およびスイスフラン建て債券のパフォーマンスを網羅しています。
目次
1. スイス株式および債券の長期パフォーマンス(1900年~2025年)
2. 2025年のマクロ経済環境と政策動向
3. 2025年のスイス株式の動向
4. 株式市場における弱気相場の影響の薄れ
5. 忍耐と粘り強さがもたらす持続的な成果
6. 60/40ポートフォリオ:リスクとリターンの最適解
7. 結論
1. スイス株式および債券の長期パフォーマンス(1900年〜2025年)
スイス株式市場の起源は、ジュネーブ(1850年)、チューリッヒ(1873年)、バーゼル(1876年)における証券取引所の設立に遡ります。現在、スイスは世界第9位の株式市場であり、世界の時価総額の約2.1%を占めています。1900年以降、スイス株式の名目リターンは年率6.8%に達しています。
スイス企業は、収益の大半を海外市場から得ており、投資家に対して広範な地域分散投資の機会を提供しています。2025年時点において、スイス・パフォーマンス指数(SPI)構成銘柄の収益の83%はスイス国外で創出されています。
スイス株式市場は世界でも有数のディフェンシブ市場であり、ヘルスケアおよび生活必需品の2セクターだけでSPIの時価総額の約半分を占めています。さらに、金融セクターを加えると、これら3セクターで指数全体の約70%を占め、スイス㈱市場が世界でも特に集中度の高い市場の一つであることが明らかになります。ロシュ(Roche)、ノバルティス(Novartis)、ネスレ(Nestlé)はSPIの主要構成銘柄であり、2025年末時点で時価総額の37%、約6,500億スイスフランを占めています。
過去126年間にわたり、スイスは世界でも最低水準のインフレ率(平均2.1%)を維持し、強固な通貨を保持してきました。この高い安定性を背景に、スイス国債は1900年以降、年率4.6%の名目リターンを約2%の実質リターンへと転換しており、ディムソン・マーシュ・スタントン(Dimson-Marsh-Staunton)のグローバルデータによれば、主要債券市場の中でも最高水準のパフォーマンスを示しています。
分析によれば、1900年にスイス株式へ1,000スイスフランを投資した場合、2025年末には397万スイスフランに増加していたと試算されます。
— ナディア・ガルビ(Nadia Gharbi,シニア・エコノミスト)、ジャファル・アバレシュ(Djâafar Aballecheシニア・クロスアセット・スペシャリスト)
主なポイント
・スイス株式市場の回復
スイス株式は過去3年間で大幅に回復し、長期的な上昇トレンドへ復帰しました。
・スイス株式が世界トップクラスのパフォーマンスを記録
2025年、スイス株式はスイスフラン建てで17.8%、米ドル建てで34.7%のトータルリターンを記録し、多くのグローバル指標を上回りました。
・1世紀にわたる堅調なリターン
1900年以降、スイス株式の名目リターンは年率平均6.8%と、スイス国債の3.9%を大きく上回っています。
・長期投資における損失回避傾向
1931年以降にスイス株式へ投資し10年間保有した場合、損失が生じたケースは確認されていません。さらに1909年以降に投資し14年間保有した場合も同様です。
・バランス型ポートフォリオ:安定した成長と低リスク
スイス株式60%・スイス債券40%のポートフォリオは、1900年以降、年率6%の名目リターンを達成しています。また、1912年以降に開始した10年間の投資では一貫してプラスリターンを記録しており、株式100%ポートフォリオと比較してボラティリティも大幅に低くなっています(12%対19%)。
・長期投資はマーケット・タイミング戦略を上回る
スイスの有価証券に関する分析は、ピクテの投資哲学の核心となる原則を裏付けています。それは、短期的なマーケット・タイミング戦略よりも長期投資戦略の方が優れたリターンをもたらすという確信です。
2. 2025年のマクロ経済環境と政策動向
2025年は、関税問題およびスイスフランの急激な上昇により、スイス経済にとって厳しい1年となりました。低インフレへの対応として、スイス国立銀行(SNB)は政策金利を段階的に引き下げ、6月には0%に到達しました。債券利回りはレンジ内での推移にとどまり、債券リターンは名目ベースでほぼゼロ(-0.1%)となりました。
今後、インフレ率はやや上昇が見込まれるものの、引き続き低水準にとどまると予想されます(図表1)。マイナス金利再導入のハードルは依然として高く、SNBはコミュニケーション方針を変更し、中期的なインフレ見通しを重視するとともに、マイナスインフレ率に対する許容度を高めています。その結果、インフレ率が低水準で推移しているにもかかわらず、市場では政策金利がマイナス圏に入る可能性がほぼ織り込まれています。
マイナス金利導入には、スイスフランの継続的かつ顕著な上昇、国内マクロ経済見通しの著しい悪化、または欧州中央銀行(ECB)をはじめとする他の主要中央銀行との政策金利差の大幅な縮小といった要因が必要となるでしょう。
ECBによる追加緩和は、基本シナリオには含まれておらず、政策金利は据え置かれると予想しています。また、米国との関税が39%から15%に引き下げられたことで、マクロ見通しに対するリスクはよりバランスの取れたものになっています。これにより、欧州連合(EU)との競争環境が改善し、スイス産業界に一定の安心感をもたらしています。
スイス経済を取り巻く外部環境は引き続き厳しく、スイスフランは安全資産としての役割を維持すると見られます。SNBが政策金利を据え置く限り、金利水準は全般的に低水準で推移する可能性が高いでしょう。
図表1:スイスCPIインフレ率と10年国債利回り
出所: Pictet Wealth Management, Refinitiv
期間:2025年12月31日時点
3. 2025年のスイス株式の動向
2025年は、地政学的および経済の両面で大きな変動が続く中、主要資産クラスの多くで堅調なリターンが得られた年となりました。貿易パターンの変化、人工知能(AI)の急速な進展、中央銀行による政策見直しが相まって、新たな投資環境が形成されつつあります。
世界の株式市場は、トランプ米大統領が多くの国に対して大幅な「相互関税」を導入したことを契機に、2025年春に急落しました。しかし、その後は反発し、SPIは4月の安値から年末にかけてトータルリターンベースで約25%上昇しました。この回復は、一連の二国間貿易協定の締結や、中国との一時的な貿易休戦を背景に、米国の関税率が4月2日の「解放の日」とされたピーク時から段階的に引き下げられたことによるものです。
この回復を受け、スイス株式市場は2025年に3年連続でプラスリターンを達成しました。SPIは配当込み・スイスフラン建てで17.8%上昇し、米ドル建てでは34.7%の上昇となりました。これらは、いずれも米ドル建てで測定したS&P 500の17.9%、およびMSCIオール・カントリー・ワールド指数の22.9%と比較しても遜色のない水準です。
図表2: 過去17年間のスイス株式の平均年間リターン(スイスフラン建て、%)
出所: Pictet Wealth Management, FactSet
期間:2025年12月31日
4. 株式市場における弱気相場の影響の薄れ
図表2は、2009年から2025年までのスイス株式の平均年間リターン(スイスフラン建て)を示しています。同期間における平均リターンは年率8.5%であり、1900年以降の長期平均6.8%を大きく上回っています。直近では、インフレ急騰に対応した中央銀行の積極的な利上げにより、2022年に株式市場は一時的に下落しましたが、2025年の堅調なパフォーマンスによりこの下落は完全に相殺されました。その結果、2025年末時点の市場水準は2021年比で11%上回っています。株式市場の下落局面は投資家にとって大きなストレスとなりますが、長期的には回復力を有し、弱気相場の影響は時間の経過とともに薄れる傾向があります。
1900年から2025年までの126年間において、スイス株式を10年間保有した場合、トータルリターンがマイナスとなったケースは8回のみであり、その多くは第一次世界大戦後の景気後退や、1929年のウォール街大暴落に起因しています。一方で、2001年のITバブル崩壊や2008年の世界金融危機を含む期間では、10年間の保有によるマイナスリターンは発生していません。すなわち、1931年以降に投資し10年間保有した場合、損失は確認されていません。さらに保有期間を14年に延ばすと、1909年以降のいかなる投資開始時点においても損失は発生していません(図表3は14年間保有した場合の各年代のリターンを示しています)。加えて、20年の投資期間では、1900年以降のすべてのケースでプラスリターンが達成されています。
以上より、規律を持ち忍耐強く継続する株式投資こそが、長期的にポートフォリオのレジリエンスを高める最も有効な手段であることが示唆されます。
図表3:スイス株式における保有期間別リターン
出所: Pictet Wealth Management, DMS Global dataset, FactSet
期間:2025年12月31日時点
5. 忍耐と継続がもたらす持続的な成果
複利効果の強さを示すため、1900年初頭に1,000スイスフランを投資し、配当を再投資しながら一切引き出しを行わなかった場合のトータルリターンを考察します。試算によれば、この投資は126年後に397万スイスフランに達します。もっとも、これは理論値であり、売買手数料や印紙税、リバランスコスト等は考慮されていません。そのため、本分析では年間リターンから50ベーシスポイントを控除しています。この調整後でも累積リターンは約200万スイスフランに達します。複利の効果により、投資期間の長さが成果に大きな差をもたらすことが確認されます。
一方、債券投資では株式ほどのリターンは期待できません。1900年にスイス国債へ1,000スイスフランを投資した場合、2025年時点での資産額は約125万スイスフランにとどまり、株式の約3分の1の規模となります。ただし、債券は株式と比較してボラティリティが低く、標準偏差は株式19%に対し債券は5.2%と、安定性に優れています。この安定性はリターンの低さとのトレードオフであり、長期平均リターンは株式が年率6.89%であるのに対し、スイス国債は3.9%にとどまります。実質リターンでは、株式が約4.6%、債券が約1.8%となっています。
スイス債券はポートフォリオのリスク低減に寄与しますが、長期的な資産形成の観点では、株式が依然として優位な投資対象であることに変わりはありません(図表4)。したがって、十分な投資期間と適切なリスク許容度を前提とすれば、株式への高い配分は合理的な選択といえます。
図表4: 1900年から2025年までの株式、債券、および60/40ポートフォリオの名目価値と消費者物価指数の推移(基準=100)
* 60/40 ポートフォリオ= 60%株式 + 40% 債券
出所: Pictet Wealth Management, DMS Global dataset, FactSet
期間:2025年12月31日
6. 60/40ポートフォリオ:リスクとリターンの最適解
株式と債券を組み合わせたバランス型ポートフォリオの主たる目的は、株式の上昇余地を捉えつつ、株式市場の下落局面において国債の安定化効果を享受する点にあります。これは、スイス国債の低いボラティリティ(債券5.2%、株式19%)と、株式との歴史的に低い相関関係(全調査期間平均で約25%、2000年以降は-5%)によって裏付けられています。1900年以降、SPIは37年間において年間マイナスリターンを記録していますが、そのうち29回では、スイス国債指数がプラスのリターンを確保しており、60/40ポートフォリオにおいて株式損失の緩和に寄与してきました。
長期的に見ると、スイスの60/40ポートフォリオは年率6%の名目リターンを達成しており、株式単独ポートフォリオと比較してボラティリティも大幅に低くなっています(1900年以降で12%対19%)。また、分析によれば、1912年以降にスイスのバランス型ポートフォリオへ投資し、少なくとも10年間保有した場合、損失は確認されていません(図表5)。
図表5:スイス60/40ポートフォリオの10年平均リターン(年率)
*1912年以降、各年に投資を開始した場合
出所: Pictet Wealth Management, DMS Global dataset, FactSet
期間:2025年12月31日
7. 結論
スイス株式は、その強靭性と長期的価値を改めて示しています。2022年の調整局面を経て、過去3年間で力強い回復を遂げ、プラスリターンという長期トレンドへ回帰しています。2025年には、スイスフラン建てで17.8%、米ドル建てで34.7%の堅調なトータルリターンを達成し、多くのグローバル指標を上回るとともに、3年連続でのプラスリターンを記録しました。この回復により、市場は2022年以前の水準を大きく上回り、スイス株式が低迷期から回復し、長期投資家に報いる特性を有することが改めて確認されました。
1900年以降、スイス株式は年率6.8%、スイス国債は3.9%の平均名目リターンを記録しています。特筆すべき点として、1931年以降にスイス株式への投資を開始し10年間保有したケースでは損失が発生しておらず、1909年以降に開始した14年間の投資では一貫してプラスリターンが実現しています。さらに、リスク回避志向の投資家にとっては、スイス株式と債券による60/40ポートフォリオが有力な選択肢となります。同ポートフォリオは1900年以降、年率6%の名目リターンを達成しており、1912年以降に開始された10年間の投資期間において損失は確認されていません。また、株式単独ポートフォリオと比較してボラティリティも大幅に低くなっています(12%対19%)。
これらの分析結果は、世界的な不確実性やマクロ経済環境の変化の中においても、スイス金融市場における分散投資、規律ある運用、ならびに長期投資がもたらす持続的なメリットを明確に示唆しています。
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