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- 新体制下のFRB:ウォーシュ氏率いるFRBについて債券投資家が知っておくべきこと
ケビン・ウォーシュ(Kevin Warsh)氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長として承認されました。本Q&Aでは、ピクテ・アセット・マネジメントの債券投資戦略・ソリューション部門、ヘッドであるミカエル・ベンハイム(Mickael Benhaim)が、米国の中央銀行による金融政策運営を公然と批判してきた人物がFRB議長に就任することで、投資家が何を想定すべきかを解説します。
Q :ウォーシュ氏の下で、FRBが政府から過度な影響を受け、独立性を失うリスクはありますか。また、それは債券投資家にとってどのような意味をもつのでしょうか。
ケビン・ウォーシュ氏は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の独立性を堅持する姿勢を示しており、自身のリーダーシップの下では、金利決定機関は実務上、政治的干渉から自由であり続けると述べています。しかし、こうした発言については、同氏がこれまで中央銀行の政策運営に対して繰り返し批判を行ってきた事実と併せて評価する必要があります。
ウォーシュ氏は、FRBが使用するインフレ指標から金利見通しの示し方に至るまで、金利決定アプローチのいつくかの側面に深い懸念を抱いており、こうした見解はトランプ大統領自身の不満とも重なっています。
このことから、金融政策が最終的に政府の影響を受け、金利がトランプ政権の財政支出、成長戦略、通商政策上の優先事項と、より密接に連動する可能性があると考えられます。そして、債券投資家がこうした状況をリスクと判断すれば、米国債に対してより高いリスクプレミアムを要求するようになるかもしれません。その結果、イールドカーブのスティープ化、米国債のタームプレミアムの上昇、さらには米ドルのボラティリティ拡大につながる可能性があります。
Q :ウォーシュ氏が重視するインフレ指標は、FRBが現在使用しているものとは異なります。これは利下げを示唆しているのでしょうか?
ウォーシュ氏は、「トリム平均」または「メディアン(中央値)」と呼ばれるインフレ指標を重視しています。この指標は、インフレ率の極端に高い値と低い値を除外するものであり、FRBが現在採用している個人消費支出(PCE)価格指数と比べて、物価上昇圧力が低めに示される傾向があります。
トリム平均を政策判断の指針とすること自体は、ウォーシュ氏率いるFRBの下では、金利水準が従来より低くなる可能性を示唆しています。現在、トリム平均インフレ率は2.3%とされており、FRBが重視する指標よりも0.5パーセントポイント以上低く、コロナショック以降で最大の乖離となっています。
もっとも、ウォーシュ氏のFRB議長就任によって、直ちに利下げ局面が到来すると期待すべきではありません。同氏は、平均インフレ目標(インフレ率が一時的に2%の目標を上回ったり下回ったりすることを容認する枠組み)を廃止し、より厳格な政策運営へ移行すべきだと主張しています。これは、インフレ率が2%を上回った場合、FRBが利上げに踏み切りやすくなることを意味します。
エネルギー価格が上昇している現状を踏まえると、FRBが高い実質金利をより長期間維持する可能性が高く、これも債券利回りおよび米ドルに対して上昇圧力をかけることになるでしょう。
Q :ウォーシュ氏率いるFRBでは、透明性やコミュニケーションが低下する可能性はありますか。その場合、市場にはどのような影響をもたらしますか?
ウォーシュ氏の二大構想の一つが、「フォワードガイダンス」の廃止です。フォワードガイダンスは2008年の金融危機直後に導入された政策で、投資家、企業、家計に対して将来の金利パスを明確に示すことを目的としています。理論上は、FRBのドットプロット(金利予測分布図)に象徴されるこのアプローチによって、金融市場が不意をつかれるリスクは抑制されます。
しかし、ウォーシュ氏はこの仕組みを逆効果と捉えており、新たな情報が急激な政策転換を示唆する局面では、FRBの柔軟性を損なうと考えています。私の見解では、フォワードガイダンスへの依存度が低下すれば、FOMC会合間における政策経路の想定範囲が広がることになります。
その結果、市場の不確実性が高まり、特に残存期間2年以内の債券を中心に、短期金利のボラティリティが上昇する可能性があります。情報発信の頻度が低下し、明確さが損なわれれば、平時の情報が乏しくなる一方で、経済指標の発表やFOMC会合といったイベントが市場に与える情報の重みが増し、急激な市場変動が起こるリスクが高まります。実際、米国債市場はすでに高いボラティリティにさらされやすい状況にあります。
米国債利回りのインプライド・ボラティリティ
出所:Bloomberg
期間:31.12.2000年12月31日~2026年3月31日
Q:ウォーシュ氏率いるFRBは、市場が深刻な混乱に陥った場合に、救済に動く可能性が低くなるのでしょうか。
ウォーシュ氏のもう一つの大きな構想は、FRBのバランスシートを金融政策ツールとして活用することに関するものです。同氏は、FRBが保有する約7兆米ドル規模の国債は過大であると考えており、実行可能になり次第、これを縮小したいという意向を公言しています。量的緩和などの政策に消極的な姿勢は、深刻な経済・市場の混乱に直面した場合でも、FRBが必ずしも安全網として機能するとは限らないことを示唆しています。
長期的には、FRBのバランスシート縮小志向に加え、銀行に対してより多くの短期国債を保有させ、準備預金を減らすよう促す流動性規制と相まって、民間投資家がより長期、すなわちリスクの高い債券を保有せざるを得なくなる可能性があります。これは、米国債のタームプレミアムの構造的な上昇や、イールドカーブのスティープ化につながり得ます。
Q :これらを踏まえると、国債、社債、新興国債券で構成された分散ポートフォリオを保有する債券投資家は、FRBの指導体制の変化にどう対応すべきでしょうか。ヘッジや資産配分の変更を検討すべきですか。
分散ポートフォリオを保有する債券投資家は、ウォーシュ氏率いるFRBの下で、資産配分を直ちに根本から見直す必要はありません。ただし、以下の3点については慎重に検討する価値があります。
第一に、金利リスクを抑制するため、デュレーションの低い債券への配分を高め、デュレーションの高い債券への投資を抑えることです。これは、中央銀行の独立性に対する疑念や、財政支配、すなわち、政府が金利に影響力を持つリスクが高まる局面では、残存期間の長い債券が最もネガティブな影響を受けやすいと考えられるためです。
第二には、こうしたリスクに対する感応度が相対的に低い、コア投資適格債へのポートフォリオ配分を引き上げることが考えられます。
第三に、債券資産のうち、新興国ソブリン債への投資比率を高めることも選択肢となります。この選択肢はリスクを伴いますが、世界経済の分断化が進む中で、多くの新興国における経済運営の改善が進んでいることを踏まえれば、債券ポートフォリオ全体において新興国債券の戦略的な位置づけを引き上げる合理性があります。具体的には、健全なバランスシート、正統的な中央銀行、そして深化しつつある国内市場を有する国々への投資を意味します。
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