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- AIの環境負荷を測定する
ピクテ・アセット・マネジメント、テーマ株式インベストメント・マネージャー兼シニア環境エコノミストであるヴィクトラス・クリオニス(Viktoras Kulionis)が、AI(人工知能)の電力消費量を取り巻く議論を多角的に考察します。
環境問題を論じる一部の識者にとって、AI(人工知能)は、破壊的で尽きることのない飢えの呪いをかけられたギリシャ神話の王エリュシクトンの現代版ともいえる存在です。
彼らの見解によれば、AIが必要とする資源はあまりにも膨大であり、その普及によって電力需要が急増し、地球の淡水資源が枯渇するとともに、世界の炭素排出量も急増するとされています。放置すれば、AIは気候変動をさらに加速させるだけだというのです。
一見すると、この主張は十分に説得力があるように見えます。AIモデルを稼働し続けるために必要な電力量は決して小さくありません。
米国エネルギー省の資金提供を受けた報告書によれば、米国におけるAIの電力消費量は、現在の年間数十テラワット時から、2028年までに165〜326テラワット時へ増加する可能性があると予測されています。これは、米国の全世帯の5分の1へ電力を供給できる規模に相当します。
しかし、さらに詳しく見ていくと、データはより多面的な実態を示しています。AIの環境負荷は比較的小さく、特に他の産業と比較した場合、今後も管理可能な水準にとどまる可能性が高いだけでなく、この技術は地球温暖化の要因に貢献する可能性も秘めています。
データセンターへの懸念
デジタル経済やAIを支える原動力であるデータセンターは、とりわけその電力消費量の大きさから、主要な懸念対象となっています。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、データセンターの電力使用量は2030年までに年間最大15%のペースで増加する可能性があります。
水の使用量も懸念材料のひとつです。半導体の過熱を防ぐため、データセンターではしばしば大規模な冷却システムに水を絶えず循環させています。最大規模の施設では、1日に500万ガロン(約2,000万リットル)以上の水を使用することもあり、これは人口5万人の都市の1日の消費量に相当します。
さらに、炭素排出量への懸念もあります。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究によれば、データセンターは現在、年間約4億トンの炭素を排出しており、この数値は今後10年以内に10億トンへと倍増以上になる可能性があります。
しかし、AIインフラが環境に与える影響は、見出しの数字が示唆するほど大きくはありません。公の議論では、しばしば重要な背景事情が欠けています。
まず、そのエネルギー消費量は、ほとんどの産業と比べて控えめです。例外は米国ですが、これは世界のコンピューティング能力の4分の3が集中していることを考えれば驚くことではありません。IEAによれば、米国では2030年までの電力消費増加分の半分以上がAIによって牽引されると予測されています。
しかし、世界全体で見ると状況は大きく異なります。世界全体では、データセンターが全電力使用量に占める割合は約1%にすぎず、AIが占める割合はその4分の1にとどまります。また、IEAによると、データセンターの電力使用量が現在のペースで増加したとしても、今後10年間の電力需要全体の増加分への寄与は約10%にとどまります。
注目すべきことに、この数値は2030年までの電気輸送、空調、その他多くの産業から予想される寄与度を下回っています(図1参照)。
水の消費量についても、管理可能な水準と言えます。データセンターが世界の総水使用量に占める割合は1%をはるかに下回り、AIに関連するワークロードはその4分の1にすぎません。
こうした統計の数値は、水不足に直面している地域にコンピューティングインフラが設置された際に生じる供給逼迫を覆い隠してしまうものの、そのような場合でも、より適切な計画と厳格な開発規制によって問題を回避することが可能です。
データセンターのカーボンフットプリントも、大きな問題にはならないはずです。
データセンターが世界の温室効果ガス排出量に占める割合は約0.5%であり、AIが占める割合はその一部にすぎません。
これらを総合すると、AIが温室効果ガス排出量、ひいては気候変動に与える影響は管理可能な範囲にとどまると考えられ、それだけを理由に政府や規制当局がAIの拡大を厳しく監視すべきだとは言えないことが示唆されます。
相対的な影響と絶対的な影響
この点を最も明確に示すのが、AIのカーボンフットプリントと、人々が当たり前のものとして受け入れている日常的な活動のカーボンフットプリントとの比較です。私たちが旅行をし、食事をし、冬には体を暖かく保ち、夏には涼しく過ごすために機器を使用する際の炭素排出量は、AI検索による排出量をはるかに上回ります。
例えば、サーロインステーキの生産と調理によって発生する量と同じ量の炭素を排出するには、GoogleのAI検索エンジン「Gemini」で61万7,000回のAI検索実行する必要があります。一方、欧州の都市から米国西海岸へのビジネスクラスでの往復フライトで排出される炭素量(3.8トン)は、60年間にわたり毎日6,000回のAI検索を行った場合と同量です。
AIのカーボンフットプリントを評価する上で、データセンターによる再生可能エネルギーの利用も同様に重要です。
データセンターはクリーン電力の大口利用者です。現在、データセンターは電力購入契約(PPA:Power Purchase Agreement)の30%超を占めています。PPAとは、電力需要者が最長20年間にわたり、事前に合意した価格で再生可能電力を購入することに合意する特別な契約です。PPAがデータセンターにとって標準的な選択肢となるにつれ、AIの環境負荷は拡大するのではなく縮小していくと考えるのが妥当でしょう。
カーボンハンドプリントとカーボンフットプリント
AIの環境フットプリントをめぐる公の議論で見落とされがちなもうひとつの論点が、排出量削減におけるAIの潜在的な役割です。AIを適切に活用すれば、産業全体のカーボンフットプリントの削減に貢献できます。これは、重工業、建設、農業、運輸といった排出量が多く、削減が難しいセクターにも当てはまります。
航空業界を例に挙げましょう。現在、航空業界は世界の温室効果ガス排出量の約3%を占めています。航空機が気候に与える影響の大きな部分は、ジェットエンジンから排出される白い雲状の水蒸気の筋である「飛行機雲」によるものです。しかし研究者たちは、AIを活用して持続的な飛行機雲を発生させるルートを予測・回避することで、その発生を半分以上削減できることを明らかにしています。この応用だけでも、地球温暖化ポテンシャルを約0.5%低減できると推定されており、AI自身の現在の環境負荷を上回る可能性があります。
AIが本来備えている排出量削減能力は、環境関連製品業界で「カーボンハンドプリント」と呼ばれるものです。カーボンフットプリントとは対照的に、カーボンハンドプリントは、その技術が広く導入することで、温室効果ガス排出量に対してプラスのシステム的効果をもたらすことを指します。AIのカーボンハンドプリントは非常に大きな可能性を秘めています。より優れた気候モデルの開発に活用できるだけでなく、企業が資源をより効率的に利用し、廃棄物を削減する助けにもなります。
だからといって、AIに対して提起されている懸念を全面的に退けるものではありません。
AIが消費する電力量に注目することは重要です。特に、自律型AIエージェントの利用拡大は、コンピューティング能力と電力需要の急増を招くリスクをはらんでいます。
さらに、エネルギー効率がAI開発の特徴となる時期を正確に予測することは不可能です。極端なシナリオとして、資本投資やエージェント型AIの利用が加速した場合、電力消費量が現在利用可能な最良の予測を上回る可能性もあります。
しかし同時に明らかなのは、この技術がすべてを飲み尽くす怪物へと変貌する運命にあるわけではないということです。再生可能エネルギーの利用拡大や、より効率的な電力網の発展によって、AIのカーボンフットプリントは管理可能な水準にとどまる可能性が高いと考えられます。そして同様に重要なのは、ギリシャ神話の悲劇の王とは異なり、AIの力は地球を傷つけるのではなく、守るために活用できるという点です。
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