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- バイオ農業で世界を養う
人口増加と気候変動により、世界の食料生産に負荷がかかる可能性があります。新世代のバイオスティミュラント(生物刺激剤)は、環境を守りながらこの問題の解決に貢献できるかもしれません。
急増する食料需要
国連によると、世界の人口は今後60年間でさらに20億人増加し、2080年代半ばには100億人を超えてピークに達する見通しです。つまり、養うべき人口が大幅に増えるということです。さらに、私たちの食事量も増えています。一人当たりのカロリー摂取量は、時間の経過とともに、また経済が豊かになるにつれて明らかに増加しています1。
こうした予測は数年前であれば政府関係者を不安にさせていたかもしれませんが、現在では農業業界は追加的な需要を満たす方法を見出したようです。
科学技術の進歩は、こうした追加的な食料の生産を可能にするだけでなく、現実的なものにしています。栄養供給の基盤となるのは、小麦、トウモロコシ、米、大豆といった主要穀物であり、人間の食料としても家畜の飼料としても利用されます。
これら4つの主要作物の生産量は、2034年までに約33億トンに達すると予測されており、2010年比で70%の増加となります2。このような成長は、主に生物由来の肥料、農薬、そして、植物の成長を助ける天然物質であるスティミュラントの進歩に大きく支えられています。
化学物質から生物由来製品へ
これは、化学物質の使用に重点が当てられていた過去半世紀とは明らかに異なる傾向を示しています。作物保護に利用可能な有効成分の数は1960年代以降6倍に増加し、現在では約600種に達しています。こうした化学的介入は成果を上げてきました。例えばトウモロコシの収穫量は、1960年代の1ヘクタール当たり1.1トンから、現在では3.4トンへと3倍以上に増加しています。
しかし、この生産性向上はサステナビリティの面で一定の代償を伴いました。化学肥料の使用による環境や健康への影響は、水質汚染や人間・野生生物への毒性作用など、近年ますます顕著になっています。
幸いなことに、生物農薬が実用的かつ持続可能な代替手段として台頭しています。これには、土壌の微生物叢(びせいぶつそう、生態系における微生物の集合)を改善し施肥効果を高める生物肥料、植物の細胞壁を強化し高温や干ばつへの耐性を高めるバイオスティミュラント、特定の害虫を対象とするバイオ殺虫剤が含まれます。これらのイノベーションは化学物質による悪影響を軽減できるだけでなく、未処理の場合と比較して最大100%の収量向上も期待できます。
規制と消費者の圧力
農業生産性におけるこの第二の革命はまだ始まったばかりです。生物農薬が化学農薬の主要な代替品として普及しつつあるのは、適用方法の標準化や革新的な新製品の登場によるものです。同時に、消費者がオーガニックや自然食品を好む傾向が強まり、化学物質に対する規制も強化されていることから、従来型農業資材の使用は減少しています。実際、EUは過去13年間で2,000種類の化学物質の使用を禁止しており、2030年までにさらに5,000〜7,000種類を禁止する計画です。一方、米国の「植物バイオスティミュラント法(Plant Biostimulant Act )」は、バイオ製品に対する障壁を引き下げ、農家による生物農薬の導入を構造的に後押ししています。
さらに、経済的な観点からも生物農薬の優位性が高まっています。化学肥料の主要生産国であるロシアとウクライナの戦争により、化学肥料の投入コストが上昇し、すでに厳しい状況にある農家の利益率を圧迫しているためです。
加えて、世界的に干ばつや高温、洪水などによる作物へのストレスが深刻化する中、生物農薬はこうしたリスクを軽減し、従来型資材への依存を抑えつつ収量を向上させることができるため、需要が高まっています。
研究によると、散布された化学農薬の最大95%は土壌、水、大気中に流出しますが、微生物を利用した生物農薬は生態系を汚染することなく同等の保護効果を発揮します。同様に、従来型の窒素肥料は生産1 kg当たり約2.2 kgのCO₂を排出し、土壌や水を汚染する可能性があります。
従来型の農薬は依然として市場規模で優勢ですが(2024年の市場規模は従来型が2,390億米ドル、生物由来の資材は210億米ドルにとどまる)、生物農薬の成長ペースははるかに速くなっています。生物農薬は2000年以降、年平均13%の成長率を達成しており、今後も同様のペースで成長を続けると予測されています。一方、従来型農薬の成長率は一貫して年平均3%にとどまっています。
◆ 投資のためのインサイト
ピクテの環境特化型プライベート・エクイティ戦略は、環境課題の解決に実質的かつ具体的に貢献している企業を見つけることに重点を置いています。
バイオ農業分野には大きな可能性があると考えています。この分野は、増大する食料需要や天然由来成分へのニーズ、そして環境保護の必要性に応えるのに適した位置づけにあります。最近、アンビエンタ(Ambienta)と提携してアグロノバ・バイオテック(Agronova Biotech、以下アグロノバ)へ共同投資を行ったことは、その証です。
同社は、欧州でも数少ない大規模なバイオソリューション・プラットフォームの一つです。その製品ラインナップは多様で強靭性があり、植物の成長や養分吸収、ストレス耐性を高めるバイオスティミュラント、作物を害虫、菌類、病害から守るバイオコントロール、そして有機肥料などが含まれます。
アグロノバの有機肥料は、土壌中の窒素の生物蓄積を約36%削減し、バイオスティミュラントは肥料の使用量を最大50%削減できるため、排出量と流出の両方を低減します。
この取引はバイラテラル方式で締結されたもので、規制上の障壁により新規参入が制限されている細分化されたサステナビリティ市場で事業を展開する機会を得ることができました。ピクテが強い確信を持つ理由は、アグロノバの高度な研究開発力、実績ある経営陣、そして経営方針を共有する創業家、さらにはグローバル展開や製品ポートフォリオの拡充、M&Aの可能性などを通じたポテンシャルにあります。
[1]Our World in Data, October 2025
[2]OECD-FAO Agricultural Outlook 2025-2034, July 2025
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