Article Title
グローバル・マクロ・ウィークリー・レポート(2026年6月第2週)
2026/06/16

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

ピクテ・アセット・マネジメント マクロ・リサーチ・チームが、世界の主要国における最新のマクロ経済動向を解説いたします。



Article Body Text

米国

5月の消費者物価指数(CPI)は総合CPIが前年同月比4.2%(前回3.8%)と上昇し、市場予想に一致しました。一方、コアCPIの上昇幅は小幅にとどまり、前年比2.9%(同2.8%)となりました。前月比では0.47%の上昇と、前月の0.64%から鈍化しました。

今回の上昇は主に、エネルギー価格の上昇がCPIの変動項目に波及したことを反映したものです。エネルギー価格は前年比22.1%上昇しました。6ヵ月年率換算ベースでは、インフレ率は5.6%まで上昇し、4年ぶりの高水準を記録しました。

内訳を見ると、コア財は前年比1.1%に低下しており、関税の影響が薄れつつある可能性が示唆されます。一方で、コアサービスは前年比3.4%に上昇し、伸びが加速しています。

なお、統計データの信頼性については依然として課題が残っており、価格データの37%が類似品目・カテゴリー、あるいは統計的手法によって補完されています。

今後の見通しとしては、インフレ率は夏場にかけて4.3%でピークを迎えた後、原油価格が緩やかに低下することを前提に、年後半から徐々に落ち着くと見込まれます。最新の予測では、総合CPIは2026年に前年比平均3.7%、2027年は同2.5%になる見通しです。コアCPIについては、現時点で二次的波及効果は限定的であり、エネルギー価格ショックの影響は相対的に小さい状況です。予測は据え置きとし、2026年の平均は前年比2.8%、ピークは3.0%、2027年の平均は前年比2.4%と見込んでいます。

6月のミシガン大学消費者信頼感指数は、予想を上回る回復となり48.9(前回44.8)となりました。現況指数と期待指数はいずれも上昇し(それぞれ+2.6ポイントの48.4、+5.2ポイントの49.3)、全体指数を押し上げました。

消費者の1年先インフレ期待は4.6%(前月4.8%)へ低下し、上昇を見込んでいた市場予想に反しましたが、5〜10年先のインフレ期待も3.4%(前月比0.5ポイント減)に低下し、市場予想に反しましたが、依然として高水準にあります。この水準は、FRBが景気サイクルを通じて平均2%の目標を達成するうえで、なお整合的とは言えません。今回の調査結果は、スタグフレーションリスクの緩和を示唆しています。

私たちの基本シナリオでは、米連邦準備制度理事会(FRB)は年間を通じて金融政策を据え置き、予防的な利上げ・利下げはいずれも見送ると予想しています。これは現在の市場予想と概ね一致しています。

ユーロ圏

欧州中央銀行(ECB)は6月の会合で予想通り利上げを実施し、2023年9月以来初めて3つの主要政策金利をそれぞれ25ベーシスポイント引き上げました。ECBは今回の利上げを「保険的」な措置ではなく、意図的かつ幅広い支持を得た政策判断として位置づけており、ラガルド総裁はインフレが広範に広がりつつある状況を踏まえ、「適切な決定」と表現しました。その核心となるメッセージは、ショックがもはやエネルギー価格のみにとどまらないという点にあります。ECBは、賃金やその他の二次的波及効果を含め、インフレが経済全体に広がる兆候を確認しており、これによりインフレの長期化が見込まれるため、引き締めが正当化されると判断しています。今回の決定は、ラガルド総裁が実現可能性は低いと指摘したマイルドシナリオを含む3つのシナリオすべてにおいて、明示的に「適切な判断」として評価されました。マイルドシナリオが含まれたのは、様々な前提の下でも政策判断の妥当性を示すためです。

ECBは物価安定を最優先の使命として揺るぎなく堅持する姿勢を改めて示しました。物価安定こそがECBの使命であり、ECBは市場が予測可能な形で反応関数に沿って行動するとしています。また、政策の方向性はデータ次第であり、特定の順序にあらかじめコミットすることなく、会合ごとに判断するとの方針を強調しました。

ECBスタッフ予測によると、インフレ率は中期的に目標水準へ緩やかに回帰する見通しです。総合CPIは2026年に2.6%、2027年に2.0%、2028年に2.1%と予測されており、コアCPIは2026年に2.3%、2027年に2.2%、2028年に2.1%と見込まれています。成長率は2026年に0.9%へ下方修正されましたが、経済は依然として大きな下振れリスクにさらされているというよりは底堅いと評価されており、2027年には1.3%、2028年には1.4%への改善が見込まれています。また、ECBは従業員1人当たりの報酬が3.2%前後で推移すると予測しており、これが実質所得と消費を下支えする一方で、基調的なインフレ圧力を持続させる要因にもなり得ると指摘しています。

こうした状況を踏まえると、今回の利上げはインフレを持続的に目標水準へ回帰させるための確信に基づく行動として解釈するのが最も適切であり、一時的な予防措置ではありません。また、インフレを招いている紛争やエネルギーショックが継続する場合には、追加利上げの可能性も残されていることが示唆されています。

私たちは、物価上昇圧力の高まりとインフレの定着を防ぐため、ECBが追加利上げを実施すると予想しており、これはさらなる引き締めの選択肢を残すECBのスタンスと一致しています。

ドイツでは、4月の鉱工業活動データが、インフラ投資や防衛支出に牽引された内需主導の景気回復の兆しが薄れつつあることを示しています。

4月の鉱工業生産は0.4%上昇(前月は0.1%減から上方修正)し、5ヵ月ぶりの増加となりました。市場予想と一致しており、建設部門が牽引しました。エネルギーと建設を除く鉱工業生産は横ばいで、消費財と中間財の生産(それぞれ前月比+1.9%、+1.4%)が下支えました。生産のモメンタムは改善しており(2026年1-3月期の前期比年率2.2%減、同2.4%減から改善)、一方で生産水準は危機前を11%下回り、トレンドを21%下回っています。

4月の工場受注は3ヵ月ぶりに減少し(前月比3.8%減、前月の+4.5%から下方修正)、予想以上の落ち込みとなりました。自動車部門(前月比5.3%減)が主な要因です。国内受注は2.9%減少し、海外需要も主にユーロ圏向けで落ち込みました(それぞれ前月比4.2%減、11.2%減)。工場受注のモメンタムは改善したものの、依然として弱く(前期比年率11.8%減、第1四半期の+15.8%から低下)、トレンドを13.2%下回っています。

4月の貿易黒字は145億ユーロ(GDP比3.8%)に縮小しました。輸出は前月比0.9%増(トレンドを0.4%下回る)、輸入は同1.2%増(トレンドを4.6%上回る)となりました。PMIの輸出新規受注は50の節目を下回り(4月は48.3)、今後の海外需要の弱まりを示唆しています。

製造業の景況感は底打ちし、景気循環的な回復の兆しを見せています(長期平均を0.7標準偏差下回る水準)。イランとの紛争によりエネルギーコストと金利が高止まりしているものの、財政刺激策が今後の支援材料となる見込みです。

英国

4月の国内総生産(GDP)は市場予想を下回り、前月比0.1%減となりました。これは、前期比+0.57%と堅調な2026年4-6月期のGDPナウキャストとは対照的な結果です。


内訳を見ると、サービス部門が0.2%縮小したことが下振れの主因であり、懸念される内容です。一方、製造業生産は0.4%増加しましたが、鉱工業生産全体および建設活動は横ばいにとどまりました。

総じて、今回の期待外れのGDP統計は、エネルギー価格高騰のマイナス影響を反映し、2026年4-6月期の成長率が前期比+0.1%と大幅に鈍化するとの私たちの予測と概ね一致しています。これは、2026年1-3月期の前期比+0.6%という極めて堅調な成長の後の減速を示すものです。

中国

5月のインフレ率は前年同月比1.2%と前月から横ばいとなり、市場予想を下回りました。主な押し上げ要因はエネルギー価格(前年同月比23.5%、前月の19.3%から上昇)であり、CPIへの寄与度は0.66ポイントとなりました。前月比では0.1%の上昇でした。一方、コアインフレ率は前年同月比1.1%へ低下しており、サービス、住宅賃料、自動車価格が主な下押し要因となっています。国内需要の軟調さが、二次的な価格波及効果を抑制しています。

生産者物価指数(PPI)は上昇し、前年同月比3.9%(前回の2.8%から上昇)となりました。石油・エネルギー関連品目が主因ですが、原油価格の低下を受け、前月比では落ち着いた動き(前月比+0.8%、5月の+1.8%から低下)となりました。

輸出の伸びはさらに加速し、5月は前年比+19%(4月の+13.7%から上昇)となりました。米国およびアジア向け輸出が牽引する一方、EUおよび英国向けは軟化しました。世界的なAI設備投資サイクルの継続により、AI関連製品やグリーンテック製品を中心としたハイテク製品への需要が引き続き輸出を支えています。また、エネルギーショックは再生可能エネルギー製品への需要を押し上げています。輸出はトレンドを45%上回る水準で推移しています。

信用環境は引き続き低調でした。社会融資総額は2兆人民元に増加したものの、融資残高の伸びは前年比5.5%へとさらに鈍化し、過去最低を更新しました。これは、家計部門におけるデレバレッジの継続によるものです。自動車および不動産販売の低迷は、個人消費および不動産市場の減速を示唆しています。さらに、企業の長期銀行融資への需要も弱まっており、国内需要の低迷およびエネルギー関連の価格圧力を背景に、設備投資が抑制されていることを示しています。



●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


新興国市場はもはや原油価格を恐れない

バリューチェーンの上位へ: 変わりつつある新興国株式への投資機会

金は大きな調整を乗り越えて上昇してきた

グローバル・マクロ・ウィークリー・レポート(2026年7月第5週)

アジアのエネルギーショックがクリーンエネルギーへの移行を加速する理由

テクノロジーの伝説:スティーブ・ウォズニアックがIT業界を展望する