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- グローバル・マクロ・ウィークリー・レポート(2026年7月第4週)
ピクテ・アセット・マネジメント マクロ・リサーチ・チームが、世界の主要国における最新のマクロ経済動向を解説いたします。
■グローバル
米国の輸入関税について、トランプ大統領は一時的な10%のグローバル輸入関税から、約60の貿易相手国を対象とする10~12.5%程度の新たな関税制度へ移行しました。この新制度は法的枠組みを再構築したものであり、米国の輸入品のほぼ全てを対象としています。法的根拠は、最高裁判所によって無効とされた緊急権限から、サプライチェーンにおける強制労働対策の不備を根拠とする国別の通商法301条へと移行しました。この新たな関税は、緊急権限(通商法122条)に基づき、全世界を対象に2月に発動された150日間の暫定的な10%関税に代わるものです。当該暫定関税は最高裁判所によって無効とされたため、より伝統的な通商法に基づく手段への移行が余儀なくされました。
米国政府は、EU、英国、カナダ、日本、インド、オーストラリアを含む約60の国・地域からの輸入品に対し、10%または12.5%の恒久的な関税を課しています。米国通商代表部(USTR)の調査では、対象国を以下の2つのグループに分類しています。1)強制労働に関する輸入禁止措置を少なくとも部分的に導入している国(追加関税10%)、2)そのような措置を講じていない国(追加関税12.5%)です。英国、EU、カナダ、メキシコなど約15の国・地域が10%グループに属し、残る約45の国・地域が12.5%グループに分類されています。EUについては、最近の合意により、従来のMFN(最恵国待遇)関税を含めた主要輸出品に対する15%の単一関税上限が設定されており、一部の主要セクターではトランプ関税がゼロ、またはゼロに近い水準まで引き下げられています。12.5%の関税による影響が最も大きい国としては、中国、インド、日本、韓国、南アフリカ、ブラジル、スイス、タイ、ベトナムなどが挙げられます。
総じてみると、世界一律の関税率が10%であった場合と比較して、貿易加重平均輸入関税率は10.8%から11.4%へ上昇する見込みです。米国GDP成長率への影響は△0.9%と従来推計から変わりませんが、新たな貿易措置は米国におけるインフレ圧力をわずかに強める要因となる見通しです。CPI(消費者物価指数)への影響は1.3%(従来1.2%)と推計されます。
■米国
米国・イラン間の軍事衝突の再燃については、直近数週間における軍事攻撃の再開を踏まえ、追加的な継続期間を2ヵ月(7月~8月)と想定するよう前提を更新しました。これに伴い、インフレ見通しの前提となる原油価格の推移も修正しています。具体的には、ブレント原油価格は8月末まで1バレル100米ドルで推移した後、12月にかけて徐々に70米ドルへ低下し、その後、2027年を通じて同水準を維持すると想定しています。このシナリオでは、原油価格インフレ率が8月に前年比+49%(前月比+18.2%)と新たなピークに達すると見込まれます。ただし、この水準は3月に記録された前月比+43.2%のピークと比べても、インフレ全体への影響という観点では限定的と見られます。
この結果、総合CPIは8月に前年比+3.7%まで上昇した後、軍事衝突が比較的短期間で終結することを前提に、原油価格の正常化が進むにつれて、12月には同+3.1%まで低下すると予測しています。さらに先を展望すると、2027年にはインフレ率がFRB(米連邦準備制度理事会)の目標に向けて緩やかに収束していく見通しです。ただし、その過程では大幅な下振れ局面も想定されます。具体的には、2027年5月のインフレ率は前年比+1.5%と予測されており、これは大幅なマイナスのベース効果によるものです。原油価格インフレ率は、同年3月に前年比△29.6%、4月に△32.0%、5月に△33.0%まで低下すると見込まれます。
以上を総合すると、CPIは2027年末に前年比+2.2%、2027年通年では平均は+2.1%と予測されます。これは2026年の平均予測である+3.3%から大幅な低下となる見通しです。こうした見通しは、FRBが今後1年間にわたり政策金利を据え置くべきであるとの見方を裏付けるものであり、現行の金融環境は十分に適切な水準にあると考えられます。一方で、2027年にかけてより強いディスインフレ圧力が見込まれることに加え、GDP(国内総生産)成長率も潜在成長率を下回ると予想されることから、2027年後半に利下げへ転じる可能性が残されています。
7月のS&P グローバルPMI(製造業購買担当者指数)は、サービス業が牽引する形で一段の改善を示しました。サービス業PMIは53.6(前月比+2.4ポイント)へ上昇し、拡大局面をさらに強めています。一方、製造業PMIは回復が期待されていたものの、53.8(同△0.1ポイント)へ小幅に低下しました。ただし、依然として良好な水準を維持しています。製造業の内訳を見ると、実体経済活動と価格関連項目の双方が指数低下の要因となっており、スタグフレーション懸念は後退しています。全体として、最新の調査結果は製造業が緩やかな回復基調にあることを示しています。加えて、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数およびニューヨーク連銀製造業景況指数の動向を踏まえると、その回復の兆候はより明確になっていると考えられます。
■ユーロ圏
7月の総合PMIは予想を上回る51.9(前月比+1.9ポイント)へ上昇し、4ヵ月ぶりに拡大圏へ回復しました。製造業PMIも市場予想を上回る52.0(前回51.4)となり、2025年10月以降で6回目の拡大圏入りとなりました。イラン情勢を受けてエネルギーコストや金利を巡る不確実性は高まっているものの、防衛支出やインフラ投資の拡大が今後の景気の下支え要因になると見込まれます。サービス業PMIは51.6(前月比+3.2ポイント)と市場予想を上回る改善を示し、紛争前の水準を回復しました。これは、消費者マインドの改善を反映していると考えられます。
フランスの総合PMIは49.6(前回47.2)へと上昇しました。サービス業が改善を牽引し(49.8、前月比+3ポイント)、製造業は拡大圏を維持したものの50.0(同51.2)へ低下しました。ドイツの総合PMIは51.2(同49.5)へ上昇し、4ヵ月ぶりに拡大圏へ回復しました。サービス業は49.6(同48.6)、製造業は52.2(同50.3)へとそれぞれ上昇しています。
項目別では、需要の改善が確認されました。新規受注は49.0、生産は49.5となり、それぞれ2月、3月以来の高水準となりました。製造業の生産指数は51.9へ上昇し、新規受注と生産の双方で改善が見られています。景況感は製造業で59.2、サービス業で58.1へ上昇しました。雇用は2025年12月以来初めて改善し、総合で50.3となりました(製造業49.1、サービス業50.7)。投入価格と産出価格はいずれも鈍化しました。製造業では投入価格の低下と納期短縮を背景に価格圧力が緩和されたものの、依然として高水準にあります。
総合PMIに基づく実質GDP成長率の推計では、2026年4-6月期の成長率は0%となる見込みです。一方、当社のナウキャストでは同四半期の成長率を0.4%と推計しています。2026年7-9月期については、PMIが示唆する成長率は0.4%と見込まれ、ECB(欧州中央銀行)および当社予想を上回っています。イラン情勢の再激化は市場心理および経済活動にとって下振れリスクとなっています。一方、価格上昇圧力は製造業を中心に緩和が続いており、主として投入コストの低下が寄与しています。両セクターとも投入価格の鈍化ペースが産出価格を上回っており、企業がコスト低下分を顧客価格へ徐々にしか反映していないことを示唆しています。その結果、利益率の回復が一部で進んでいるとみられます。地政学的緊張の高まりを背景に、原油価格は4月以来の高値圏まで上昇しており、インフレの上振れリスクが高まっています。一方、PMIの改善は、地政学的緊張の緩和が実現した場合、経済がより堅調な成長軌道へ回帰する可能性を示唆しています。
ユーロ圏消費者信頼感指数は7月に△15.9となり、市場予想を上回りました。過去4ヵ月間で3回目の改善となりましたが、水準としては依然として2023年1月以来の低水準にとどまっています。米国とイランの一時停戦を背景に個人消費の改善が示唆されている一方、依然として慎重姿勢は根強い状況です。米国とイランの枠組み合意を受けて、ブレント原油価格は一時70米ドル台まで低下しており、エネルギー価格上昇を通じた実質所得への下押し圧力が強まるリスクは後退していきました。しかし、その後の紛争再燃を受けて原油価格は再び上昇しており、家計や企業への影響を引き続き注視する必要があります。下振れリスクとしては、エネルギー価格の上昇による家計所得の圧迫に加え、不確実性の高まりを背景とした予防的貯蓄行動の継続により、個人消費の正常化が遅れる可能性が挙げられます。ただし、2026年1-3月期の貯蓄率は14.3%と長期平均(13%)を上回っており、家計部門にとって一定の緩衝材として機能すると考えられます。
中期的なインフレ期待はECBの目標水準近辺で安定しています。2026年7-9月期のECB専門家予測調査(SPF)では、5年先のインフレ期待は2.0%で横ばいとなりました。一方、1年先のインフレ期待は2.2%(前回2.1%)へ小幅上昇しています。7月の5年先5年物インフレスワップレートも2.1%で横ばいとなりました。Indeed賃金トラッカーは6月に前年比+3%で安定した一方、3ヵ月移動平均では2.5%へ加速しました。労働市場の需給緩和は今後も賃金上昇圧力の抑制を通じて、サービスインフレの低下に寄与するものと見られます。
融資成長率は6月に前年比+2.8%へ加速し、2026年4-6月期を通じても堅調な伸びを維持しました(前期比年率+2.9%)。増加は主として企業向け貸出が牽引しています。銀行融資の月次フロー(3ヵ月移動平均)は、家計向け融資を中心に拡大しました。
- 非金融法人(NFC)向け融資残高は6月に前月比+0.6%と増加し、2026年4-6月期を通じて堅調な伸びを維持しました(前年比+3.5%、前期比年率+3.7%)。満期別では、1年超5年以下、および5年超の融資を中心に、全ての期間でプラス寄与となりました。一方、家計向け融資の伸びは前年比+2.3%、前期比年率+2.3%にとどまりました。
- 国別では、銀行融資の伸びはスペイン(前期比年率△0.4%)が最も弱く、ポルトガル(同+9.8%)が最も高い状況でした。
- 新規与信のGDP比前年差は1.1%へ上昇しました(前期0%)。企業向け融資が押し上げ要因となり、2022年7-9月期以来の高水準となっています。一方、家計向けでは、2024年1-3月期以来初めて低下しました。
2026年4-6月期のECB銀行貸出調査では、企業向け融資基準は、リスク認識の高まりやフランスの影響を受けたものの、市場予想ほど厳格化されませんでした。企業向け融資需要は、大企業による設備投資や在庫・運転資本需要を主因として、減少が見込まれていたにもかかわらず増加しました。先行きについては、銀行は企業向け融資基準を引き続き引き締める見込みである一方、企業の融資需要は増加すると予想しています。
家計向け融資基準は、住宅ローンおよび消費者信用を中心に、2023年7-9月期以来で最大の引き締めとなりました。家計向け融資需要は、住宅購入需要の弱まりを主因として、市場予想を下回り2023年10-12月期以来で最大の減少となりました。もっとも、銀行は先行きについて、住宅ローンおよび消費者信用の融資基準が緩和されるとともに、需要の減少幅も縮小すると見込んでいます。
ECBは7月23日の理事会で3つの主要政策金利を据え置きました。預金金利は2.25%、政策金利は2.40%、限界貸出金利を2.65%に維持しました。
プレスリリースにおいて理事会は、インフレ率を中期目標である2%で安定させることへの強いコミットメントを改めて表明しました。また。政策決定は引き続き、インフレ見通し、新たに公表される経済・金融データ、基調的なインフレ動向、および金融政策の波及効果の強さに関する評価に基づいて行うことを強調しました。さらに、声明では、不確実性は依然として高く、エネルギーショックによるインフレへの影響が完全には顕在化していないとの認識が示されました。その上でECBは、間接的および二次的影響を含め、ショックの強度と持続期間を引き続き注視していく方針を示しました。
記者会見において、ラガルド総裁は、サービス業の回復と製造業の緩やかな持ち直しを背景に経済活動は底堅さを維持しているものの、エネルギー価格上昇を受けて先行指標は短期的な成長の脆弱性を示していると述べました。また、中期的な成長見通しについては民間消費と政府支出に支えられ改善しているとしながらも、足元では成長リスクは下方に傾いていると指摘しました。これは、成長とインフレのリスクが概ね均衡しているとの評価がしめされたECBフォーラム時点からの変化を示しています。一方で、インフレに対するリスクは依然として上振れ傾向にあるとの認識が示されました。これは、持続的なエネルギー価格の上昇圧力が二次的影響の発生確率を高める可能性があるためです。ただし、紛争の早期終結や企業による価格転嫁が想定を下回る場合には、インフレ圧力の緩和につながる歓迎すべき展開となるとも述べました。金融環境については、市場金利の上昇を背景に、6月時点と比べて一段と引き締まったとの認識が示されました。ラガルド総裁は、今回の金利据え置き決定は全会一致であったと説明する一方、一部の理事会メンバーは追加利上げの是非について検討していたことを明らかにしました。
今後については、ECBは9月会合までに公表されるGDP、消費者信頼感指数(2回)、インフレ統計(2回)、PMI調査(2回)、従業員1人当たり報酬額など、多数の経済指標を評価することになります。ラガルド総裁は、ECBはフォワードガイダンスを提供するのではなく、新たに入手されるデータへの対応の枠組みを示しているとし、輸送コスト、企業調査、賃金動向などを通じて、エネルギーショックの直接的および間接的な影響を引き続き注視する考えを強調しました。また、総裁は、現時点では二次的影響が強まっていることを示す明確な証拠は確認されていないとしつつも、「現時点では」との表現を用いて判断を留保しました。
全体として、プレスリリースと記者会見はいずれも若干タカ派的なトーンとなっており、当社では、引き続き9月のECBによる25bpの追加利上げを予想しています。
ドイツでは、6月のZEW調査の期待指数が市場予想を上回る改善を見せ、△26.3(+15.8ポイント)と2月以来の高水準となりました。現況指数も市場予想を上回り、△77.6(+3.4ポイント)へと改善しました。鉄鋼、製薬、銀行、建設、サービス業で収益見通しが改善しました。
7月のifo景況感指数は市場予想を上回る86.6へと上昇しました。現況指数は86.5へとわずかに低下した一方、期待指数は市場予想を上回る86.7(+2.4ポイント)へと上昇しました。改善は幅広いセクターに及びました。製造業のifoおよびPMIは平均を0.4標準偏差下回る水準(2022年6月以来の高水準)となっています。製造業の活動は財政刺激策(防衛支出およびインフラ投資)の恩恵を受け、今後も下支えされる見通しであり、米国とイランの間で新たな合意が実現すればエネルギーコストの低下や金利に関する不確実性が低下することが期待されます。
■スイス
2026年4-6月期の貿易統計は、数四半期にわたり低調な推移が続いた後、改善が見られました。特に輸出は名目ベースで前期比+8.8%(実質ベースでは同+0.6%)の回復を見せ、4四半期連続の減少から回復しました。輸出の回復は、電力および化学・医薬品関連の輸出増加が主な要因となりました。一方で、時計輸出は引き続き減少しています。地域別では、北米向け(前期比+21.5%)およびアジア向け(同+6.8%)が牽引し、欧州向けは横ばいでした。輸入も化学・医薬品分野を中心に幅広いセクターおよび主要貿易相手国に支えられ、前期比+4.9%(実質ベースでは同+1.5%)と回復しました。全体として、足元では輸出入とも改善が見られるものの、輸出には依然として弱さが残っています。ただし、世界の製造業サイクルや世界貿易の回復に支えられ、来年にかけて輸出は緩やかに持ち直すと予想しています。また、貿易加重ベースで見たスイスフランの水準も、現時点では過度な割高感を示していません。
■英国
6月のCPIは前年比+2.6%(前回+2.8%)と、市場予想をわずかに下回る水準まで低下しました。一方、コアCPIは前年比+2.6%と前月から横ばいで、市場予想をわずかに上回りました。CPIH(住宅費用含む消費者物価指数)は前年比+2.8%(前回+3.0%)へ低下し、市場予想に沿った結果となりました。住宅ローン返済額を除くRPI(小売物価指数)も同様に、前年比+2.9%(前回+3.0%)へ低下し、緩やかな低下基調を維持しています。内訳を見ると、輸送および食料・非アルコール飲料が、月次のCPI変化率および前年比インフレ率の双方に対して最も大きな押し下げ要因となりました。
先行きについては、年内はインフレ率が比較的高止まりするものの、緩やかな低下基調を維持すると見ています。12月のCPI上昇率は前年比+2.5%と予測しており、その後もインフレ圧力は徐々に緩和し、2027年後半には同+2.2%程度まで低下する見通しです。全体として、2026年のインフレ率見通しは年平均+2.7%(従来+2.8%)へ小幅に下方修正する一方、2027年については年平均+2.3%で据え置きとしています。
トランプ大統領による新たな関税措置の発表を受け、英国から米国へ輸出される多くの製品には、WTOのMFN(最恵国待遇)関税に加え、米国の10%の「トランプ関税」が課されることになりました。一方、EUに適用される新たな15%の税率は、包括的な上限措置として設計されています。その結果、英国の対米輸出品に対する実効的関税率は、EUの対米輸出品に対する関税率を上回る可能性があります。表面上の関税率は英国の方が低いものの、実際の輸出競争力はむしろ損なわれています。これは英国商工会議所が従来から指摘していた通り、ブレグジット後の英国輸出企業が有していた対米競争上の優位性を損なう要因となっています。英国がEUよりも不利な立場に置かれる可能性がある理由は、多くの英国製品に適用される実効関税率が「10%+MFN関税」であるのに対し、EUの実効関税率は「15%またはMFN関税のいずれか高い方」であり、追加的な二重課税が生じないためです。このため、MFN関税率が5%を超える製品については、英国製品はEU製品よりも高い実効関税率に直面する可能性があります。
具体例として、チーズなど一部の品目では、EU産品への関税が15%であるのに対し、英国産品には10%の追加関税に加えてMFN関税14.9%が課されるため、実効関税率は24.9%となります。一般に、英国で従来からMFN関税率が高い品目は、ファッション・高級品、一部の食品、特定の消費財などであり、これらの分野が特に大きな打撃を受けています。こうした品目では、英国製品の対米実効関税率がMFN+10%となる一方、EU製品は15%が上限となるため、英国輸出業者の価格競争力が低下することは避けられないとみられます。
英国とは対照的に、EUの企業にとって米国の新たな通商政策は、より明確な事業環境をもたらしています。大半のセクターでは最高関税率は15%であり、一部のセクターではMFN関税のみ(ゼロまたはゼロ近傍)が適用されます。これは、現在より高い実効関税率に直面している英国の競合企業に対し、EUの企業が商業面で相対的に有利な立場を活用できることを意味します。総じてみると、今回の新たな通商枠組みは、英国当局がEU委員会との連携の下で対米共通貿易政策を協調的に進めるインセンティブを高める要因になると考えられます。
7月のPMI調査は、特にサービス業を中心に市場予想を上回る内容となりました。サービス業PMIは51.8へ上昇し、中立水準である50を上回りました。これは、2026年7-9月期におけるサービス業生産の大幅な回復を示唆しています。また、この結果は7月の消費者信頼感指数の改善とも整合的です。GfK消費者信頼感指数は△17(前回△23)と市場予想を上回ったものの、依然として低水準にとどまっています。総じてみると、足元の景況感指標は、需要面・供給面の双方において2026年7-9月期の経済活動が大幅に回復していることを示しており、KOFのGDPナウキャストの最新推計とも整合的な内容となっています。
■中国
6月の工業企業利益は前年同月比+15.1%となり、5月の同+21.1%から伸び率は鈍化しました。もっとも、2026年上半期累計では前年同期比+18.7%の3.95兆人民元となり、1〜5月の同+18.8%からの減速は小幅にとどまりました。国内需要が依然として低迷する中でも、外需が景気の下支えとなっており、企業収益の底堅さが維持されていることを示唆しています。所有形態別では、国有企業の利益は前年同期比+17.9%の1.3兆人民元、株式会社が同+24.7%の3.4兆人民元、民間企業が同+13.0%の9,656億人民元となりました。セクター別では、鉱業が前年同期比+33.5%と最も高い伸びを示し、製造業が同+20.1%となる一方、公益事業は△4.2%となりました。特に、非鉄金属製錬・圧延加工業(前年同期比+99.4%)、コンピュータ・通信・その他電子機器製造業(同+96.9%)、化学工業(同+67.8%)が、大幅な増益を記録しました。
中国への外国直接投資(FDI)は2026年上半期に前年同期比△5.0%となり、1〜5月の同△8.6%から減小幅は縮小しました。ただし、年初来でみるとFDIの減少傾向は継続しており、その改善ペースは、この減少局面が始まって以来最も大きいものとなっています。この改善は、2024年に記録した急激な落ち込みの反動という側面もありますが、内需の低迷、企業バランスシートを巡る不透明感、さらには保護主義的な通商政策による輸出への下押し圧力などを背景に、海外からの投資資金は引き続き逆風にさらされているものとみられます。
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