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- グローバル・マクロ・ウィークリー・レポート(2026年8月第4週)
ピクテ・アセット・マネジメント マクロ・リサーチ・チームが、世界の主要国における最新のマクロ経済動向を解説いたします。
■米国
7月の鉱工業生産は前月比+0.2%(前年比+1.1%)と、市場予想の+0.3%をわずかに下回ったものの、2ヵ月連続の増加となりました。ただし、生産のモメンタムは鈍化しており(前期比年率+2.8%)、生産水準もトレンドをやや下回っています(トレンド比△0.7%)。製造業部門は前月比+0.2%と増加し(6月は+0.3%へ上方修正)、耐久財生産が+0.7%増加した一方、非耐久財生産は△0.4%減少しました。耐久財の内訳では、加工金属、コンピューター・電子機器、航空宇宙などのAI(人工知能)関連セクターが引き続き堅調な伸びを示しており、AI主導の設備投資が製造業を下支えしていることがうかがえます。製造業の設備稼働率は6月の修正値76.2%から76.3%へ小幅に上昇しました。
これまでに公表された8月の地区連銀製造業調査は、今後数ヵ月における製造業の回復見通しの改善を示唆しています。ニューヨーク連銀製造業景気指数は市場予想に反して拡大圏で一段と改善し(20.6、前月比+5ポイント)、フィラデルフィア連銀製造業景気指数も市場予想を上回り、プラス圏でさらに上昇しました(47.4、同+6ポイント)。内訳を見ると、価格関連指標の上昇トレンドはピークアウトして安定化している一方、活動関連指標は引き続き堅調な改善基調を維持しています。こうした結果は、スタグフレーション懸念の後退を示すとともに、製造業生産の回復を示唆しています。
詳細を見ると、フィラデルフィア連銀製造業景気指数は前月比6ポイント上昇の47.4となり、市場予想を大幅に上回るとともに、2021年4月以来の高水準となりました。一方で内訳はややまちまちで、雇用は27.9と前月比17.9ポイント上昇し、2022年4月以来の高水準となった一方、新規受注は30.1(同△9ポイント)、出荷は27.7(同△6.0ポイント)と、それぞれ低下しました。また、支払価格は40.9(同△13.0ポイント)、受取価格は17.7(同△9.7ポイント)といずれも低下しており、供給サイドのインフレ圧力が和らいでいることを示しています。
7月の住宅関連指標は強弱まちまちの内容となりましたが、全体としては依然として低調な状況が続いています。住宅着工件数は前月の大幅増加の反動もあり前月比△12.4%と大きく減少した一方、建設許可件数は前月までの低調な推移から一転して同+5.0%と増加しました。当社の住宅投資先行複合指標は引き続きマイナスシグナルを示しており、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数(34)と整合的です。ただし、足元では底打ちの兆候も見られており、今後は住宅活動が改善に向かう可能性が示唆されています。
7月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨によれば、委員会メンバーは依然としてインフレを懸念しているものの、大半の政策当局者は現時点での追加利上げには慎重な姿勢を維持しています。7月会合では、多くの参加者が政策金利の誘導目標レンジを3.50%〜3.75%に据え置くことを支持した一方、数名の参加者はインフレへの根強い懸念を背景に25ベーシスポイントの即時利上げを支持しました。
インフレは引き続き最大の懸念事項となっています。多くのメンバーはインフレリスクが上振れ方向に傾いていると認識する一方、関税やエネルギー関連要因の影響が薄れるにつれ、年後半にはインフレが緩和に向かうと見込んでいます。
景気見通しについては、米国経済は底堅さを維持しているとの評価が示されました。参加者は経済成長を堅調とみており、労働市場は概ね均衡しているほか、企業の設備投資、とりわけAI関連投資が経済活動を支えていると指摘しました。AIは議論の中でも主要なテーマとして取り上げられ、生産性向上への期待が示される一方、過剰投資、資金調達面の脆弱性、さらにはAI関連インフラや投入財に起因するインフレ圧力などのリスクも指摘されました。
総じて、政策当局者は追加引き締めの必要性を判断する前に、インフレ鈍化を示すさらなる証拠を見極めたいとの姿勢を示しています。また、ウォーシュ議長は、政策決定までの間により多くの経済データを確認できるよう、FOMCの開催回数を年間8回から6回へ減らす案を提起しましたが、正式な決定には至りませんでした。全体として議事要旨はややタカ派的な内容であり、追加利上げをめぐる議論が継続していることを示しましたが、差し迫った利上げを示唆する内容ではありませんでした。もっとも、7月会合以降は雇用統計、インフレ指標、小売売上高などが軟調な内容となっており、9月会合で政策金利が据え置かれる可能性を高めています。これは当社の基本シナリオとも整合的です。
■ユーロ圏
8月の総合PMIは52.1(前月比+0.1ポイント)と、市場予想に反して上昇し、2ヵ月連続で拡大圏を維持しました。製造業PMIは51.9からの低下を見込んでいた市場予想に反し、52.8へ上昇しました。7ヵ月連続で拡大圏を維持し、2022年5月以来の高水準となっています。サービス業PMIは51.7と7月から横ばいとなり、市場予想(51.5)を上回りました。これは消費者マインドの底堅さを示唆する内容です。
フランスの総合PMIは49.4から48.8へ低下し、市場予想(49.5)を下回りました。サービス業が悪化を主導し48.4(前月比△1.2ポイント)と8ヵ月連続で縮小圏となりました。一方、製造業PMIは49.8から51.5へ改善し、4ヵ月ぶりの高水準となるとともに、市場予想を上回りました。
ドイツの総合PMIは51.3から51.0へ小幅に低下したものの、2ヵ月連続で拡大圏を維持しました。製造業PMIは52.2から54.1へ大幅に上昇し、2022年5月以来の高水準となり、市場予想(52.1)を大きく上回りました。一方、サービス業PMIは49.8から48.5へ低下し、5ヵ月連続で縮小圏となりました。
項目別では、需要の改善が確認されました。新規受注、生産はそれぞれ52.0、52.1と、ともに2ヵ月連続で拡大圏を維持しています。製造業の生産指標は52.8と2022年3月以来の高水準となり、新規受注と生産のモメンタムも強まっています。企業はサプライチェーン混乱リスクへの備えとして発注の前倒しを進めており、防衛支出の拡大やインフラ投資、AI関連投資の増加がこれを後押ししています。一方で、イランを巡る地政学的緊張の高まりを背景に、エネルギーコストや金利見通しに対する不確実性は依然高い状況にありあります。企業の業況感見通しは、製造業で60.9へ上昇した一方、サービス業では57.0へ低下しました。雇用は50.8と2ヵ月連続で上昇し、製造業は50.1、サービス業は51.0となりました。投入価格と産出価格の伸びはともに鈍化しました。エネルギー価格の再上昇にもかかわらず、主として製造業における投入コストの低下を背景に価格圧力は緩和を続けています。仕入価格の低下ペースが産出価格を上回っていることから、企業はコスト低下分を顧客へ段階的に転嫁している状況であり、利益率の回復余地が生じていることを示唆しています。
総合PMIに基づく実質GDP成長率の推計では、2026年7-9月期の成長率は+0.4%となり、欧州中央銀行(ECB)および当社予想を上回る水準が示唆されています。他方、イラン紛争の再激化は、景況感および経済活動の下振れリスクとなっています。また、地政学的緊張の高まりを受けた原油・天然ガス価格の上昇により、インフレの上振れリスクも高まっています。一方で、PMIの改善は、地政学的緊張が緩和した場合、景気がより堅調な成長軌道へ回帰する可能性を示唆しています。
欧州委員会の消費者信頼感指数は8月に△15.5へ改善し、4ヵ月連続の上昇となりました。市場予想では低下が見込まれていましたが、実際には改善が続きました。中東情勢の再緊迫化を受けブレント原油価格が1バレル=94.2米ドルまで上昇したものの(5月高値は下回る)、消費者支出は比較的底堅く推移しているとみられます。ただし、同指数は依然として長期平均を下回っています。今後の下振れリスクとしては、エネルギー価格上昇による実質所得の圧迫や、不確実性の高まりによる予備的貯蓄行動の継続が、個人消費の正常化を遅らせる可能性が挙げられます。もっとも、2026年1-3月期の貯蓄率は14.3%と長期平均(13%)を上回っており、家計部門の一定の緩衝材となっています。
消費者物価指数(CPI)は前年比+2.9%、コアCPIは前年比+2.5%でそれぞれ確報となりました。総合CPIは前月比+0.3%(6月は△0.1%)、コアCPIも前月比+0.3%となり、いずれも中東情勢の緊迫化に伴う原油価格上昇の影響を受けています。コアCPIのモメンタムは前期比年率2.7%へ上昇しており、エネルギー価格上昇の一部が基調インフレへ波及している可能性が示唆されています。
財価格は前年比+0.9%へ加速し、そのモメンタムも前期比年率+1.6%へ上昇しました。企業は原油・天然ガス価格の上昇による再度のコスト圧力に直面しており、国内需要が底堅く推移すれば、エネルギーのコスト上昇分の価格転嫁が進む可能性があります。サービスインフレ率は前年比3.3%へ小幅上昇しました。賃金上昇率は依然高水準ながらも鈍化傾向にあり、月次CPI上昇分の約52%を説明しています。もっとも、サービス価格のモメンタムは前期比年率3.1%へ低下しました。食品インフレは前年比1.2%へ減速した一方、エネルギー価格は前年比+10%と大幅に上昇し、月次CPI上昇分の32%を占めました。液体燃料(前年比+18.3%)とガス価格(前年比+6.2%)が主な押し上げ要因をなっています。
直近のPMI調査では、主として製造業における投入コスト低下を背景に価格圧力の緩和が続いています。製造業・サービス業ともに投入価格の伸びが産出価格の伸びを下回っており、企業がコスト低下分を段階的に顧客へ還元しながら、同時に利益率の回復を進めていることを示しています。販売価格見通しは全業種で低下傾向にあるものの、依然として長期平均を上回る水準にあります。また、消費者の今後12ヵ月のインフレ期待は大幅に低下しました。ただし、原油価格が4月以来の高値に上昇していることから、インフレの上振れリスクは依然残っています。
中期的なインフレ期待はECBの目標近傍で安定しています。ECBの専門家予測調査(Survey of Professional Forecasters:SPF)では、5年先のインフレ見通しは2.0%で据え置かれた一方、1年先の見通しは2.2%へ小幅上昇しました(前回2.1%)。また、7月の5年先5年物インフレスワップレートは2.1%で横ばいでした。ECBが公表した消費者期待調査では1年先のインフレ期待は2.9%(前回3.0%)、3年先は2.7%(前回2.8%)へ低下しており、消費者は足元のエネルギー価格上昇を一時的なショックとみていることが示唆されます。
賃金上昇率は2026年4-6月期に前年比+2.4%となり、上方修正後の前期値+2.6%を下回りました。2024年7-9月期のピークである+5.6%から大幅に低下しています。一方、Indeed賃金トラッカーは7月に+3.3%へ上昇し、3ヵ月移動平均ベースでも+3.0%へ加速しました。
労働市場は引き続き逼迫しており、6月の失業率は過去最低水準の6.3%で推移しています。雇用者数の伸びは2026年4-6月期に前期比+0.1%(前年比+0.5%)と長期平均を下回る水準にとどまりましたが、労働需要は足元で持ち直しています。GDP(国内総生産)成長率が雇用の伸びを上回っていることから労働生産性は上昇しており、賃金上昇率の鈍化と相まって、単位労働コストおよび国内インフレ圧力の低下につながっています。一方で、労働需要の回復は賃金上昇を下支えし、サービスインフレのさらなる鈍化を抑制する可能性があります。
当社では、ユーロ圏のインフレ率を2026年平均で2.8%、2027年平均で2.5%と予想しています。インフレ率は2026年10月に3.2%でピークを付けた後、2027年4月頃までは3.1%前後で推移し、その後はベース効果により大きく低下し、2027年後半にはECB目標水準近辺へ収束すると見込んでいます。
ドイツでは、8月のZEW調査の期待指数が34.2と前月比+7.9ポイント改善し、2月以来の高水準となりました。また、現況指数も△66.1と前月日+16.5ポイント改善し、市場予想を上回りました。自動車、製薬、鉄鋼、銀行など輸出関連セクターを中心に収益見通しが改善しています。
■日本
7月のCPIは、総合指数、コア指数とも日本銀行(日銀)の物価目標に近い水準まで上昇しました。総合指数は前年比+1.9%となり、生鮮食品・エネルギーを除くコアコア指数も同じく前年比+1.9%と、いずれも市場予想に一致しました。先行きについては、インフレ率は緩やかな上昇を続け、12月には前年比+2.8%、2027年2月には同+3.4%でピークを付けた後、とりわけ2027年後半にかけて徐々に低下し、2027年10-12月期には+1.3%まで低下すると見込んでいます。もっとも、基調的なインフレ圧力は依然として高水準で粘着的であり、賃金上昇も底堅く推移していることから、当社は日銀が2026年10-12月期に追加で25ベーシスポイントの利上げを実施し、無担保コール翌日物金利の誘導目標を1.25%へ引き上げると引き続き予想しています。ただし、その後の追加利上げについては経済・物価指標次第となる可能性が高いと考えています。
■スイス
7月の輸出は大幅に増加し、貿易黒字は81億スイスフランと月次ベースで過去最高を更新しました。これはGDPの約11%に相当する規模です。名目輸出は前月比+13.8%(実質同+10.7%)と大きく増加した一方、輸入は前月比△4.5%(実質同△2.8%)と低調な結果となりました。輸出の急増は今回も主力の化学・製薬セクターが牽引し、輸出増加分の約25%を占めました。加えて、時計、金属、電力も輸出の押し上げに寄与しました。仕向け地別では、7月の輸出増加は欧州向け(前年比+22.9%、うち約90%がスロベニア向け医薬品関連)およびアジア向け(同+7.1%、主に中国向け)が牽引しました。一方、北米向け輸出は減少しました。輸入については、化学・製薬関連品目および自動車の減少が主な押し下げ要因となりました。地域別では、欧州およびアジアからの輸入が減少した一方、北米からの輸入は米国向けを中心に改善しました。総じてみると、今回の統計は輸出の上昇トレンドを改めて裏付ける内容となりました。一方、輸入は引き続き横ばい圏で推移しており、明確な増勢は確認されていません。
■英国
8月のPMI調査はサービス業主導で一段と改善しました。総合PMIは52.5(前月比+0.3ポイント)と市場予想を上回り、サービス業PMIが52.8(同+0.7ポイント)へ上昇したことが押し上げ要因となりました。一方、製造業PMIは51.5(同△0.4ポイント)へ低下したものの、市場予想とほぼ一致しました。総じてみると、足元のPMIはサービス業を中心に景気見通しが改善していることを示しており、当社の基本シナリオとも整合的な内容となっています。ただし、製造業の回復については依然として不透明感が残っています。
家計部門に目を向けると、8月のGfK消費者信頼感指数は市場予想を上回る改善となり、引き続き長期平均を下回る水準ではあるものの、その乖離は縮小しています。7月の小売売上高は減少したものの、消費支出は引き続き底堅く推移しており、実質所得の改善が見込まれるなか、小売売上高も今後持ち直しに向かうと予想されます。
■中国
2026年1月~7月の対内直接投資(FDI)は前年比△6.2%となり、年初から続く減少傾向が継続しました。ただし、流入資金の構成には改善がみられています。ハイテク産業向け投資は前年比+32.7%の1,823億人民元へ大幅に増加し、FDI全体の41.6%を占めました。また、新規設立された外資系企業数は前年比+4.4%の3万7,711社となっています。サウジアラビア、フランス、韓国からの投資が大幅に増加しており、全体としてFDIが減少するなかでも、一部セクターに対する海外投資家の関心は引き続き高いことが確認されました。
調査ベースの都市部失業率は6月の5.0%から7月には5.2%へ上昇しました。地元戸籍保有者、出稼ぎ労働者の双方で失業率が上昇しています。主要31都市の失業率も5.2%へ小幅上昇した一方、年初来平均は5.2%で横ばいとなりました。
不動産市場では、70都市の新築住宅価格が前年比△3.2%となり、37ヵ月連続の前年比下落となりました。ただし、下落率は2月以来で最も小さく、継続的な政策支援が住宅市場への下押し圧力を緩和しつつあることが示唆されています。なお、上海は例外的な動きを示しており、新築住宅価格は前年比+3.0%と上昇しました。
7月の小売売上高および固定資産投資はいずれも市場予想を下回る結果となりました。小売売上高は前年比+0.6%と、6月の同+1.0%から減速し、市場予想も大きく下回りました。特に耐久消費財など高額商品の販売不振が目立っており、自動車販売は前年比△17.0%と大幅に減少しました。このほか、建材、家具、石油製品の販売も低調でした。1月~7月の固定資産投資は前年比△6.7%となり、上半期の△5.7%から減少幅が拡大しました。主因は不動産投資で、前年比△19.2%と大幅な落ち込みが続いています。加えて、インフラ投資および製造業投資も引き続き力強さを欠いています。
鉱工業生産は引き続き内需要関連指標を上回る伸びを示したものの、前月からは減速しました。7月の鉱工業生産は前年比+4.5%と、6月の同+5.3%から鈍化し、市場予想も下回りました。減速の背景には、製造業のモメンタム低下に加え、公益事業生産の伸び鈍化や鉱業生産の減少幅拡大があります。もっとも、コンピューター・通信機器(前年比+19.1%)、鉄道車両・造船(同+13.6%増)、特殊設備製造(同+12.6%増)など、高付加価値製造業では引き続き堅調な成長がみられました。総じて、7月の経済指標は外需と一部のハイテク産業が引き続き経済活動を下支えしていることを示しています。一方で、国内需要は依然として低調であり、不動産部門の調整が引き続き成長見通しの重荷となっています。
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