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- グローバル・マクロ・ウィークリー・レポート(2026年9月第3週)
ピクテ・アセット・マネジメント マクロ・リサーチ・チームが、世界の主要国における最新のマクロ経済動向を解説いたします。
■米国
8月の経済指標は、需要面では堅調な結果となった一方、供給面では期待を下回りました。総合およびコア指数ともに小売売上高は力強く持ち直し、家計支出の底堅さを示しました。一方、供給面では、製造業生産の弱さが重しとなり、鉱工業生産は横ばいにとどまりました。これは、過去数年にわたり低下傾向が続いた後、76.3%で横ばいとなった設備稼働率の動きとも整合的です。8月の消費者信頼感の低下や、9月の地区連銀製造業景況感調査が市場予想を下回ったことに加え、高止まりする消費者物価および生産者物価を踏まえると、経済指標は今後数ヵ月にかけて弱含む可能性が示唆されます。
9月の地区連銀製造業景況感調査のうち、先行して公表されたニューヨーク連銀およびフィラデルフィア連銀の調査結果は、ともに市場予想を下回りました。ただし、いずれもプラス圏は維持しています。特にニューヨーク連銀製造業景況指数は、前月に2021年12月以来の高水準を記録した後、9月は13.0ポイント低下して7.6となり、市場予想を下回りました。内訳を見ると、新規受注(▲15.3ポイントの2.0)および出荷(▲14.9ポイント低下の▲3.2)が大幅に低下した一方、雇用は小幅な改善(+1.3ポイントの10.6)となりました。また、仕入価格は現況(+4.5ポイントの63.1)、見通し(+9.6ポイントの67.3)ともに上昇し、インフレ圧力の高まりを示しています。販売価格については、現況が5.4ポイント上昇して28.1となった一方、見通しは6.4ポイント低下して42.3となりました。総じて、今回の調査は、足元の原油価格上昇を背景にスタグフレーションリスクが高まっていることを示唆しています。
8月の住宅関連指標は総じて軟調な内容となりました。住宅着工件数、建設許可件数、中古住宅販売仮契約件数はいずれも低下しており、当社が算出する住宅投資関連指標の弱いシグナルとも整合的です。
FOMC(米連邦公開市場委員会)は政策金利であるFF金利の誘導目標レンジ25bp引き上げ、3.75〜4.00%としました。今回の決定は市場の予想通りであり、全会一致の決定となりました。今回の利上げは、インフレ率の低下がなお不十分であり、目標水準への回帰に時間を要する可能性への懸念を背景としています。声明文では「今回の政策措置は、委員会の2%目標へのより迅速な回帰を後押しする」との認識が示されました。
経済見通しについて、地政学情勢に起因する世界的な不確実性が依然として高い一方、個人消費の底堅さ、設備投資の堅調さ、および生産性の力強い伸びが強調されました。
FOMC参加者の経済見通しの中央値を見ると、成長率とインフレ率の見通しはいずれも上方修正されました。2026年10-12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年比2.3%(+0.1ポイント)、2027年は2.4%(+0.1ポイント)へ引き上げられました。一方、2028年は2.2%で据え置かれ、長期的な成長率の推計も2.0%で変更ありませんでした。
インフレ率については、コアPCEインフレ率の見通しが2026年第10-12月期に3.4%(+0.1ポイント)へ引き上げられました。2027年は2.5%で据え置かれ、2028年は2.2%へ小幅に上方修正(+0.1ポイント)されています。2029年以降のインフレ率はFRB(米連邦準備制度理事会)目標である2.0%で推移すると見込まれています。
また、FF金利の中央値見通し(ドット・チャート)は、年内に追加で1回の利上げを示唆しています。その後、2027年は4.1%で据え置かれ、2028年は3.9%、2029年は3.6%へ低下する見通しです。長期的な名目中立金利は3.2%へ上方修正されました(+0.1ポイント)。
こうした内容を踏まえ、当社はメインシナリオを修正し、2026年10-12月期に追加で1回の利上げを見込む一方、新たな利上げ局面入りは想定していません。また、現在の状況は1999年当時とは異なります。当時のITブームは広範な景気過熱を伴っており、GDP、個人消費、設備投資はいずれも現在を大きく上回るペースで拡大していました。また、生産性向上の恩恵も経済全体に広く波及していました。一方、現在のAIブームは依然として限定的な分野に集中しており、全要素生産性(TFP)の改善につながっている兆候は確認されていません。総じて、当社はFF金利の最終到達点を4.00〜4.25%と見込んでおり、その後FRBは2027年を通じて金利を据え置くと予想します。
■ユーロ圏
7月の鉱工業生産は前月比で▲0.1%と2ヵ月連続の減少となったものの、減少幅は市場予想を下回る結果となりました(前月分は▲0.1%に下方修正、2026年7-9月期のキャリーオーバーは▲0.1%)。国別では、フランスが前月比▲0.4%、ドイツが同▲1.5%となった一方、イタリアは同+0.7%、スペインは同+0.6%となりました(2026年7-9月期のキャリーオーバーはそれぞれ▲0.4%、▲0.8%、0.0%、+0.5%)。セクター別では、資本財生産の基調はマイナス圏で悪化が続いている一方、消費財およびエネルギー生産はプラス基調を維持しており、モメンタムも改善しています。
水準でみると、鉱工業生産はコロナ禍前の水準を1.5%上回っているものの、トレンドを11.1%下回っています。特にドイツ(トレンド比▲20.9%)を中心に、ユーロ圏の多くの国で生産は依然としてトレンドを下回る水準にあります。前年比では、▲0.2%と長期平均(+0.7%)を下回っており、モメンタムも前期比年率+1.8%と、2026年4-6月期の+3.3%から鈍化しました。
工場受注は6月に3ヵ月連続で減少し、モメンタムも引き続きマイナス圏かつ悪化傾向にあります(前月比▲0.5%、前期比▲1.8%)。一方、製造業のセンチメントには底入れの兆しがみられます。平均を0.1標準偏差上回る水準まで改善しており、2022年8月以来の高水準となっています。製造業PMIの活動関連指数は52.8へ上昇し、2022年3月以来の高水準となりました。新規受注と生産はいずれもモメンタムが改善しており、製造業の企業景況感も60.9へ上昇しました。ESI製造業信頼感指数は、受注残に対する見方が悪化した一方、生産見通しの改善と完成品在庫の減少を背景に小幅に上昇しました。企業はサプライチェーン混乱リスクへの備えとして受注を前倒ししているとみられます。これに、防衛支出の拡大やインフラ投資、AI関連投資が加わり、イラン情勢を背景としたエネルギーコストの上昇や金利を巡る不透明感が続く中でも需要を下支えしています。
8月のCPI(消費者物価)総合指数は前年比3.2%へ下方修正されました(前月比+0.4%、7月は+0.3%、6月は▲0.1%)。一方、コアインフレ率は前年比2.4%で据え置かれました。前月比では+0.2%と長期平均を上回っており(7月は+0.3%、6月は+0.1%)、コア指数のモメンタムは前期比年率2.6%へ鈍化しました。
コア財インフレは前年比+1.2%と、2024年2月以来の高い伸びとなりました(前年は+0.9%)。企業は原油・天然ガス価格の上昇による新たなコスト圧力に直面しており、国内需要が底堅く推移すれば、こうしたエネルギー関連のコストの上昇が販売価格に一段と反映される可能性があります。モメンタムも前期比年率1.9%へ加速しました。コアサービスインフレは3.0%へと3ヵ月連続で低下しました。依然として高水準ながらも鈍化しつつある賃金上昇率が背景にあり、月次CPI上昇率への寄与は42%となっています。モメンタムは前期比年率2.8%へ低下しました。食品インフレは前年比1.1%で横ばいとなった一方、エネルギー価格は+14.3%と2023年1月以来の高い伸びとなりました。CPIへの寄与は41%に達しており、液体燃料(前年比+25.8%)とガス価格(同+8.0%)が主な押し上げ要因となっています。
中期的なインフレ期待はECBの目標近傍で安定しています。ECB(欧州中央銀行)の消費者インフレ期待調査によると、8月の1年先期待インフレ率は3.0%、3年先期待インフレ率は2.9%へそれぞれ小幅に上昇しました(前回はそれぞれ2.9%、2.7%)。Indeed賃金トラッカーは8月に3.3%へ上昇し、スペインが押し上げ要因となりました。3ヵ月移動平均ベースでは3.1%へ加速しています。労働生産性の上昇と賃金上昇率の鈍化を背景に、2026年4-6月期の単位労働コストおよび国内的なインフレ圧力は低下しました。一方、インフレの上振れリスクとしては、エネルギー価格の上昇や底堅い国内需要に加え、サービスインフレの低下を妨げている労働需要の強さが挙げられます。
当社は、2026年の平均インフレ率を2.9%、2027年を2.6%と予想しています。インフレ率は10月に3.4%でピークを迎えた後、2027年4月にベース効果による大幅な低下が生じるまで、概ね3.2%前後で推移すると見込んでいます。
■日本
日本銀行(日銀)は9月の金融政策決定会合で、市場予想通り政策金利を25bp引き上げ、1.25%としました。ただし、会合結果は市場が想定していたほどタカ派的ではありませんでした。今回の決定は9対2で採択され、浅田委員と佐藤委員の2名が反対票を投じました。この結果は市場でややハト派的と受け止められ、円相場には下押し圧力がかかりました。ドル円相場は157円近辺まで上昇し、日本の2年国債利回りは小幅に低下しました。今回の利上げの背景として日銀は、企業コストの上昇に加え、賃金上昇の販売価格への転嫁が進むなかで、消費者物価が一段と上昇していることを挙げています。また、中長期的なインフレ期待は引き続き上昇しており、基調的なCPIインフレ率も2%に近づいていると評価しました。景気面では、中東情勢の影響が続くなかでも、世界的なAI関連需要の拡大や雇用・所得環境の改善に加え、政府による重点的な財政支援策を背景に、日本経済は緩やかな回復を続けているとの認識が示されました。
こうしたインフレ環境を踏まえると、金融政策の引き締め方向は維持されるとみられます。当社では2027年1-3月期に追加で1回の利上げを予想しており、早ければ12月にも実施される可能性があるとみています。最終的な政策金利は1.50%に達すると見込まれ、日銀は2027年を通じて引き締め的な金融政策スタンスを維持すると予想しています。インフレリスクは引き続き上方に傾いています。日銀の政策委員会も「企業間取引における価格上昇圧力が消費者物価に波及し始めており、賃上げを販売価格へ転嫁する動きも続いている。こうした状況のもと、中長期的なインフレ期待は上昇を続けており、基調的なCPIインフレ率は2%に近づいている」と指摘しています。
8月のCPI総合指数は前年比1.9%と、市場予想をわずかに下回り、前月から横ばいとなりました。生鮮食品を除くコア指数は前年比1.7%と、前月の1.8%から小幅に鈍化しました。生鮮食品・エネルギーを除くコアコア指数は前年比1.9%と横ばいとなり、こちらも市場予想をわずかに下回りました。先行きについては、エネルギー価格の再上昇と円安を背景に、インフレ率は高止まりした後、一段と上昇すると予想しています。2027年初に前年比3.0%でピークを迎えた後、ベース効果の影響やエネルギー価格の安定を前提として、2027年後半にはディスインフレが進み、同年12月には前年比1.2%まで低下する見通しです。当社は2026年の平均インフレ率を前年比1.8%、2027年を同2.0%と予想しています。なお、この見通しは2027年初に政策金利を1.5%へ引き上げる追加利上げが1回実施されることを前提としています。
■スイス
8月の貿易統計は、非常に好調だった7月の結果から減速しました。輸出は前月比▲17.2%(実質▲8.6%)、輸入は同▲11.6%(実質▲3.1%)と大幅に減少しました。主因は主力の化学・製薬部門で、同部門の輸出は▲32.2%と大きく落ち込みました。特に、製薬関連が下押し要因となっています。また、時計輸出も2ヵ月連続の増加の後、8月は前月比▲7.2%と減少に転じました。主要貿易地域別に見ると、輸出の減少は北米(前月比▲31.0%)、アジア(同▲18.9%)、欧州(同▲9.1%)のすべてでみられました。国別では、中国、米国、スロベニア向けの輸入減少が特に大きくなっています。輸入についても同様の構図で、化学・製薬部門が主な下押し要因となりました。地域別では、スロベニア(前月比▲49.9%)を中心に、北米およびアジアからの輸入も減少しています。総じて、7月には回復の兆しを見せた輸出は、足元では再び横ばい圏の推移に戻っており、輸入も同様の動きとなっています。
■英国
8月のCPI総合指数は前年比3.1%と、7月の2.9%から小幅に上昇し、市場予想と一致しました。一方、コア指数は前年比2.6%と横ばいとなりました。コアサービスインフレも前年比3.4%と前月並みの水準を維持しました。住宅コストを含むCPIHインフレ率は前年比3.3%と、7月の3.1%から上昇し、市場予想をわずかに上回りました。内訳を見ると、電気・ガス・その他燃料価格のインフレ率は前年比6.0%へ加速し(前回5.0%)、交通サービス価格も前年比11.8%(同9.1%)へ上昇しました。一方、食品インフレ(前年比1.1%)および衣料品インフレ(同0.6%)は小幅に鈍化しました。先行きについては、足元のエネルギー価格上昇を背景に、CPI総合指数は今後も上昇基調が続くとみています。インフレ率は11月に前年比3.8%でピークを迎え、その後数ヵ月は3.5%前後の高水準で推移すると予想しています。ただし、2027年初以降はディスインフレが進み、特に2027年後半にかけて鈍化ペースが加速するとみています。2027年10-12月期には前年比2.2%まで低下する見通しです。当社は2026年の平均インフレ率を3.1%、2027年を2.8%と予想しています。こうした見通しを踏まえると、イングランド銀行(BoE)は年内に1回の追加利上げを行う必要があり、インフレ率がピークを迎えるとみられる11月の金融政策委員会(MPC)会合で実施される可能性が高いと考えています。もっとも、当社のメインシナリオでは、2027年末にかけてインフレ率が目標近傍まで低下すると見込まれることから、それ以上の追加利上げは不要としています。
9月のMPC会合では、BoEは市場予想通り政策金利を3.75%で据え置きました。今回も、9名の委員のうち3名、ヒュー・ピル(Huw Pill)委員、ミーガン・グリーン(Megan Greene)委員、キャサリン・マン(Catherine Mann)委員が利上げを支持し、従来と同様の構図となりました。3名は、エネルギー価格ショックによる二次的なインフレ圧力が強まるリスクを踏まえ、追加利上げが必要だと主張しています。特に、チーフエコノミストのヒュー・ピル委員は、現在の不確実性と変動制の高い環境に内在する、より持続的なインフレ圧力を理由に25bpsの利上げを支持したと説明しました。また、キャサリン・マン委員は、依然として高いインフレ圧力に加え、2027年初にインフレ率が4%まで加速することを示す短期見通しへの懸念を挙げました。一方で委員会は、価格設定や賃金設定における二次的効果を示す明確な兆候は、現時点では限定的であると評価しています。また、MPCメンバー全員が、金融政策目的で保有している英国国債の保有残高をゼロまで縮小する方針に合意しました。これは、年間200億ポンドの国債売却を段階的に実施することで、2034年までに達成される予定です。
こうした状況を踏まえ、当社は従来予想していた2026年10-12月期の25bp利上げ(メインシナリオでは11月のMPC会合での実施)に加え、2027年初頭にも追加で25bpの利上げが実施されると予想しています。その結果、政策金利の最終到達点は4.25%となり、金融政策は緩やかな引き締め領域に入ると見ています。
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