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日銀会合、想定通りの据え置きながらサプライズも
梅澤 利文
2026/04/30

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概要

日銀は4月28日の会合で政策金利を0.75%に据え置いたが、3名の委員が利上げを主張した。会合後の為替市場は一時円高に振れたものの、最終的には円安が進行した。展望レポートではインフレリスクを重視し、物価上昇圧力が続く見通しが示された。中東情勢や原油価格の動向次第で、今後の金融政策はより引き締め方向に動く可能性があり、6月会合での利上げの可能性が意識されると見ている。




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日銀、市場予想通りのタカ派的据え置きでも円安圧力は小幅

日銀は4月28日に終了した金融政策決定会合(会合)で、大方の市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.75%で据え置くことを決定した(図表1参照)。金融政策を決める9人の政策委員のうち、中川順子審議委員と高田創審議委員、田村直樹審議委員の3人は政策金利を1.0%に引き上げることを提案したが反対多数で否決された。今回の会合では四半期毎に更新される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が合わせて発表された。

会合の発表内容を受け、為替市場では小幅に円安に振れたが、タカ派(金融引き締めを選好)であったこともあり、限定的な円安にとどまった。 

反対票はタカ派で知られる2名に加え中川委員も投じた

日銀の発表を受けた為替市場の反応を時系列的に追ってみる。最初の結果発表は28日正午ごろで、政策金利は据え置くとの発表ながら3名の反対(利上げ支持)が判明した。また、展望レポートでインフレ上振れへの懸念が示された。主にこの2点を背景に、為替市場では1ドル159円台から一時158円台まで円高が進行した。為替市場には想定通りのタカ派的据え置きではあったが、ややサプライズを含んだ反応だった。

午後3時半からの植田総裁の会見のトーンもややタカ派的だった。ただし、経済見通しなどは展望レポート通りで、新たな材料に乏しかったことなどから、会見を終えたころには159円台後半に向け円安が進行した。それでも、過去の会合においてたびたび見られた、会見後の過度な円安とは異なる穏やかな反応だった。

今回の日銀の会合について、3名の反対票、中東情勢を踏まえた経済見通し、植田総裁の会見の順にポイントを確認する。

3名の反対理由を確認すると、高田委員は、「物価安定の目標」は概ね達成されていることなどを指摘した。田村委員は、物価上振れリスクが大きいことから中立金利に少しでも近づけることを求めた。中川委員は中東情勢の不透明感あるが、物価上振れリスクが高いことなどを指摘した。

高田、田村両委員はタカ派で知られており、反対票に意外感はない。高田委員は全会一致で据え置きを決定した2025年12月会合の後、1月、3月と反対票を投じてきた。田村委員が利上げに転じたが、過去のタカ派的コメントから違和感はない。

一方、比較的中立、発言内容によってはハト派(金融緩和を選好)とみられていた中川委員が利上げを支持して反対票を投じたのは意外だった。中川委員は現状を緩和的な金融環境とも指摘している。なお、中川委員の任期は6月29日までで、次回6月会合(15日~16日)に参加が見込まれる。緩和的な金融環境が変わらなければ、再度利上げを支持する可能性も見ておきたい。

植田総裁は中東情勢悪化でも物価上昇なら利上げの可能性を示唆

次に、展望レポートのポイントを述べる(図表2参照)。最大の注目点はインフレ懸念を景気悪化より重視している可能性があることだ。例えば、リスクバランスでは、景気の下振れ、物価の上振れ双方への懸念を指摘しているが、強調しているのは「とくに、物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある」と指摘し、物価への懸念がにじんでいる。

図表2で経済見通しを確認すると、GDP(国内総生産)成長率は26年度こそ大幅な下方修正となっているが、27年度は0.7%と、前回から小幅な修正にとどめている。

一方、消費者物価指数(CPI)は26年度が大幅に上方修正されたうえ、27年度も物価上昇圧力が残ると見込んでいる。さらに、今回から発表となった28年度分では、コアコアCPIが物価目標を上回る予想となっており物価への警戒心がうかがえる。

なお、今回の展望レポートの前提は原油価格(ドバイ原油)が1バレル105ドル程度を出発点に、見通し期間の終盤にかけ70ドル台程度まで下落することを想定しており、短期収束シナリオが基本だ。しかし、中東情勢はやや悪化シナリオに近づきつつある。その場合、金融政策は現在の想定に比べてより引き締め姿勢を迫られるだろう。

植田総裁の記者会見では、景気・物価見通しなどは展望レポートに沿った内容で、その意味では目新しい材料はなかった。しかし、物価上振れのリスクを強調するなど、タカ派的なトーンであった。

植田総裁の会見で注目されたのは、物価の上振れリスクが顕著に高まったと判断すれば、中東情勢に改善が見られず、ホルムズ海峡の封鎖が続くような環境でも「場合によっては利上げもありうる」と言明したことだ。展望レポートは早期終息を基本シナリオとしているが、欧州中央銀行(ECB)が示したような中東情勢がさらに悪化し、物価が上昇を続けるシナリオが実現するような局面では利上げを選択するということだろう。

また、利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」について植田総裁は、「そうならないように次回以降の会合で適切に政策を判断していく」と述べた。利上げの遅れに対する警戒感を示唆したこともタカ派的であった。

なお、ドル円は30日に1ドル160円台へと円安が進行した。原油価格再加速を受け米国金利が上昇するなど海外要因が大きいと思われる。しかし、日銀は円安が基調的な物価の動きに影響を与えるなら対応する姿勢と思われる。6月会合に向け利上げの必要性が高まるように思われる。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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