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- 中東情勢を受けた世界の金融政策の傾向と今後
メキシコ銀行は5月の会合で政策金利を0.25%引き下げた一方で、利下げサイクル終了を示唆した。世界の中央銀行は中東情勢の不確実性を前に政策金利を据え置く傾向があるが、ブラジルとメキシコは例外的に利下げを決定した。一方、豪とノルウェーは先行して利上げを決定した。今後は多くの国が利上げに転じる可能性も考えられるが、この程度は中東情勢悪化が長期化するほど高まるのではないか。
メキシコ中銀は市場予想通りの利下げだが、今後は据え置きを示唆
メキシコ銀行(中央銀行)は5月7日に開催した金融政策決定会合で、市場予想通り、政策金利を0.25%引き下げて6.5%とすることを決定した(図表1参照)。5人の理事のうちロドリゲス総裁ら3名が利下げに賛成し、残る2名(ともに副総裁)は据え置きを主張し、僅差での利下げとなった。
4月に発表されたインフレ指標はおおむね落ち着きを示唆したうえ、生産活動、消費などの指標は軟調で、第1四半期の経済活動が縮小していたことから、利下げは幅広く予想されていた。メキシコ中銀はこれまで利下げを続けてきたが、今回の声明文では、「利下げサイクルの終了が適切と判断した」と明記し、今後の据え置きを示唆した。
中東情勢による不確実性を前に、多くの中央銀行は様子見の据え置き姿勢
日米欧の金融政策決定会合(以降、会合)が集中した4月の最終週に加え、日本の大型連休とおおむね重なる今週まで、世界の様々な国で会合が開催された(図表2参照)。
世界の中央銀行は全体的に、政策金利を据え置いているのが特色だ。中東情勢を受け不確実性が高まる中、景気悪化とインフレ上昇懸念を見定めるための据え置きと見られる。例外はブラジルとメキシコだ。図表2では利下げを水色で示した。オーストラリア(豪)とノルウェーは利上げを決定したが、図表2では桃色で示した。ただし、利上げした2ヵ国は「例外」と見るよりは「先行」したと捉えたほうがよさそうだ。中東情勢の不確実性を前に、多くの中央銀行の「次の一手」は利上げである可能性が高いからだ。次に個別の中央銀行を取り上げ、この点を確認する。
大半の中央銀行の次の一手は、据え置きの長期化か利上げとなりそうだ
日米欧の4月の会合を振り返ると、日銀と欧州中央銀行(ECB)は、タイミングは不確かだが、次の一手は利上げの可能性の公算だ。4月の日銀会合は据え置きを決定したが、3名の政策委員が利上げを支持したことや、展望レポートでのインフレ見通しの上方修正から判断して利上げ姿勢が強まったと見られる。ユーロ圏ではECBは声明文で中東情勢の悪化(イラン紛争)が長期化すればするほど、インフレ懸念は高まることを指摘、次の一手が利上げである可能性が高いことを示唆した。
米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)は据え置きを決定した一方、声明文に「利下げ」を示唆する文言が残された。しかし、注目されたのは3名ものFOMCメンバーが利下げバイアスを残す声明文の文言に反対する異例の事態となったことだ。利下げのハードルは高まったのではないか。
次に、例外としたブラジルとメキシコを見ると、ブラジルは昨年、他の新興国が利下げを進める中、インフレとレアル安対応への必要性から、高水準の政策金利を維持した(図表3参照)。レアル高やインフレの落ち着きを受け26年3月会合で利下げに転じた。ただし、利下げ幅は0.25%刻みで慎重な面も見られる。
メキシコは通貨高などを受け過去2年ほど利下げ姿勢を維持してきたが、今回の会合では今後は据え置きに転じることが示唆された。大半の中央銀行同様、メキシコも据え置きに加わるなら、ブラジルの例外性が目立つかもしれない。
反対に豪とノルウェーは利上げを決定した。ノルウェーは市場予想では据え置きが見込まれていただけに、意外な決定だった。ノルウェー中央銀行は声明文で利上げの理由として、「インフレは高過ぎ、今後も高止まりする見通しだ」と説明した。豪中銀も5月の会合でインフレ懸念を利上げの理由とした。豪とノルウェーは先進国の中でも有数の資源国だ。エネルギー価格の上昇に対する景気の感応度(成長率の低下)は日本など輸入エネルギー依存度が高い国に比べて低い傾向がある。その分、中東情勢が悪化する中でも、インフレ対応を先行させられたと見られよう。
景気悪化とインフレ懸念をはかりにかけて据え置きで様子を見ている大半の中央銀行は次にどう行動するだろうか?国固有の事情によって違いはあるだろう。例えば、東欧やアジアの国の中にはインフレ率が低水準の国もある。このような国は状況が落ち着けば利下げを選択する可能性もある。
一方、今は据え置きとしている大半の国々は、先行した豪などのように、今後利上げに転じる可能性が高いだろう。ECBが指摘したように、イラン紛争が長期化すればするほど、その可能性は高まると考えられる。報道などから判断して、停戦交渉は合意に近づいているように見えるが、今後の展開は読み切れない。早期停戦を願うばかりだ。
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