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米雇用統計に見る労働市場の底堅さと注意点
梅澤 利文
2026/05/11

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概要

4月の米雇用統計で、非農業部門の就業者数が市場予想を上回る増加を示し、失業率も4.3%と安定していた。部門別では教育・医療が雇用増をけん引し、建設や小売も堅調だったが、情報部門等は減少が続いた。失業率の安定は米労働市場の底堅さを示す一方、経済的理由によるパートタイム失業率(U6)の悪化や労働参加率の低下が課題。賃金は伸び悩みが見られ、今後の動向が注目される。




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中東情勢の先行きが見通しにくい中、米労働市場は底堅さが示唆された

米労働省が5月8日に発表した4月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比で11.5万人増と、市場予想の6.5万人増を上回った。前月は18.5万人増(速報値の17.8万人増から上方修正)だった(図表1参照)。2月分は13.3万人減から15.6万人減へ下方修正された。中東情勢の先行きが見通しにくい中で、米労働市場の底堅さが示唆された。

失業率は4.3%と、市場予想、3月(ともに4.3%)と一致した。平均時給は前年同月比3.6%上昇し、市場予想の3.8%上昇を下回ったが、3月の3.5%上昇からは伸びが拡大した。前月比は0.2%上昇と前月から横ばいながら、市場予想を下回った。

幅広い部門で雇用拡大が見られたが、伸び悩む部門もあり明暗分かれた

中東情勢に不透明感が残る中、4月の米雇用統計は低水準の失業率などに米労働市場の底堅さが示された。他の雇用関連指標である新規失業保険申請件数や、民間部門の雇用者数指標が米労働市場の底堅さを示唆していることとも整合的だ。4月の米雇用統計の底堅さを確認するとともに、念のため課題も振り返る。

4月の米雇用統計の就業者数が全体として前月比11.5万人増と市場予想を上回ったことに加え、部門別の就業者数の伸びに広がりが見られた(図表2参照)。就業者数の業種別内訳では、教育・医療が4.6万人増と全体をけん引する構図だが、他の部門として、運輸・倉庫や小売、娯楽・宿泊などはプラスの伸びを確保した。建設部門は4月に前月比で0.9万人増と、前月を下回ったがプラスを確保した(図表3参照)。AI需要を受けたデータセンター建設などが押し上げ要因と見られる。一方、情報は1.3万人減で16ヵ月連続してマイナス圏となっている。過去の採用の調整やAIへの巨額投資のしわ寄せが人員削減の背景と思われる。大手ハイテク企業のレイオフはたびたび報道されることから、AIは雇用を崩壊させるイメージもあるが、今のところ影響は限られるようにも見えるが、AIの発展と雇用の関係は長期的なテーマでもあるだけに、今後も注目し続けたい。

図表2に戻り部門別の雇用の伸びを見ると、製造業や政府部門の雇用の伸びはマイナス圏だった。雇用が拡大する部門が多い中、保険などもマイナス圏となっており、部門別に明暗が分かれた。

失業率は米労働市場の底堅さを示したが、賃金はやや伸び悩んだ

4月の失業率は4.3%で前月から横ばいだった(図表4参照)。昨年8月のジャクソンホール会議などで米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「労働供給と需要の両方の減速により生じる奇妙な均衡」が崩れた場合、失業率上昇などのリスクがある可能性を指摘、その後の利下げの論拠ともしていた。しかし、失業率の推移をみると杞憂であった可能性もある。失業率の安定は、米労働市場の底堅さと、当面FRBが政策金据え置くことを支持する要因であると思われる。

しかし、失業率に関連して注意したい点もある。経済的理由によるパートタイム等を失業者にカウントして算出した失業率(U6)は、4月が8.2%と3月の8.0%を上回り悪化したからだ。また、労働市場への参入度合いを示す労働参加率は61.8%と前月を下回った。参入意欲の低下は労働市場の活況度合いの低下と連動する場合もある。ただし、足元の労働参加率の低下は高齢化による労働者の退出と、移民の労働市場参入への制限が主な背景とみられ、構造的問題と思われ、景気動向とは異なる要因が影響しているようだ。

4月の米雇用統計で雇用の伸びや失業率は、注意点はあるとしても、労働市場の底堅さを示唆する数字だった。一方、賃金は平均時給が前月比で0.2%上昇にとどまるなど、やや伸び悩んだ。もっとも、米雇用統計の平均時給指標は低賃金部門の採用が増えると低下するなど採用動向の影響を受けやすい。この影響を除いた雇用コスト指数は1-3月期に堅調な伸びを見せただけに、もう少し様子を見る必要がありそうだ。ただし、仮に賃金の伸びが低く、インフレ率を下回るようであると、昨年の個人消費を支えた要因の一つであるプラスの実質賃金という前提が崩れる懸念もある。4月の米雇用統計は底堅さが示されたが、賃金動向などについては今後も注目し続けたい。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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