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4月のCPIは鈍化したが、利上げ路線を維持だろう
梅澤 利文
2026/05/22

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概要

2026年4月の消費者物価指数(CPI)は、コアCPIが前年同月比1.4%上昇と市場予想を下回り、物価上昇の鈍化が見られた。ただし、背景には政府の家計負担軽減策や給食費無償化などの物価対策がある。市場は日銀が6月の金融政策決定会合で利上げを行う可能性が高いとみている。特殊要因を除いたCPIなど、基調的物価上昇率は2%に近いと考える日銀メンバーは増えつつあるようだ。




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4月の全国CPIは政府の物価対策を反映して前月から鈍化した

総務省が5月22日に発表した4月の消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比で1.4%上昇と、市場予想の1.7%上昇、3月1.8%の上昇を下回った(図表1参照)。中東情勢の悪化を受け3月は原油価格が上昇したが、政府のガソリン補助によりエネルギー価格が押し下げられた。総合CPIは1.4%上昇と、市場予想の1.6%上昇、前月の1.5%上昇を下回った。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは1.9%上昇し、前月を下回った。26年度からの私立高校の就学支援金制度の改定(所得制限の撤廃)や、4月からの公立小学校給食の実質無償化などが物価上昇の主な抑制要因だった。

4月の全国CPIでは政策対応などの特殊要因を除いたベースも注目したい

日銀は6月15-16日に金融政策決定会合(以後、会合)を開催する予定だ(図表2参照)。短期金融市場における市場予想を見ると、6月会合での利上げを8割程度見込んでいる。

6月会合を前に発表される物価関連指標の中では、本日発表された4月の全国CPIが重要だ。なお、5月29日に5月の東京都区部CPIが発表予定となっている。全国CPIの先行指標として筆者も参照するが、金融政策の判断には、日本全体をカバーする全国CPIがより適切だろう。

4月のCPIは図表1にあるように物価の伸びが鈍化し、日銀が重視するとみられるコアCPIは3ヵ月連続で物価目標の2%を下回った。ただし、この背景には小学校の給食費無償化など物価上昇を前にした政府の家計負担軽減策などの効果が反映されている。そのため、日銀が数字を額面通りに受け取るとは考えにくいことから、「鈍化した」ことによる金融政策への影響は限定的と思われる。

4月のCPIの主な変動要因を簡単に振り返る。総務省の資料などから、暫定税率廃止と政府補助金で、ガソリンは下落幅が3月の前年同月比5.4%下落から9.7%下落へと拡大した。ただし、補助金が縮小された電気代、都市ガス代は下落幅が縮小した。エネルギー全体での寄与度は0.31%の押し下げ要因だった。

教育は前年同月比で6.1%下落した。私立高校の授業料無償化が主な背景だ。

食料は4月が3.5%増と、3月の3.6%増から鈍化したが、依然水準は高い。鈍化の背景は公立小学校の給食費(食料項目に含まれる)の無償化や、コメ価格の鈍化が押し下げ要因だった。

サービスは教育を含むことなどから鈍化したが、変動項目を除くと小幅な鈍化にとどまっている。

最近のCPIは物価対策を受け実態が把握しにくい。そこで注目されるのが、日銀が発表を開始した消費税率の変更、教育無償化政策、ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策などの「特殊要因」を除いたCPIだ(図表3参照)。特殊要因を除いたCPIは、総合CPIの公表日の2営業日後を目途に発表されるため、現時点では3月分が最新データだが、日銀が注目するコアCPIに近い、生鮮食品と特殊要因を除いたCPIは3月が前年同月比で2.5%上昇だった。 5月26日に発表予定の4月分について、市場の試算を見るとやや強含むことが見込まれている。特殊要因を除いたインフレ率を基調的な物価と見做すなら、CPIに対する見方も調整する必要があろう。金融政策を占ううえで特殊要因を除いたインフレ率への注視が必要だろう。

日銀審議委員の「基調的」物価上昇率への見解は2%に近いようだ

6月の日銀会合前のコメントで注目されるのは図表2にある6月3日の植田総裁の講演だ。また、すでに増・小枝両審議委員はコメントを終えている。

増審議委員は講演で、「できる限り早い段階での利上げが望ましい」と述べたことなどがタカ派(金融引き締めを選好)的と受け止められた。物価について、特殊要因を除いたインフレ率を含む様々な基調的物価データを示しながら、「基調的な物価上昇率はまだ2%の下にいるものの、かなり2%に近付きつつある」と指摘している。早期の利上げを支持すると見られる。

小枝審議委員もタカ派的と見られる。物価見通しについて述べる中で、「基調的なインフレ率については、中東情勢を受けて、今後2%を超えてくる可能性もあるとみています。」と指摘するなど、景気悪化と物価上昇の両方に注意は必要だが、物価上昇懸念へのバイアスが強いようだ。また、「政策金利を適切なペースで引き上げ」ることを支持しており、前回の利上げから半年となる6月会合は、中東情勢などの不確実性はあるが、適切なペースの範囲に収まりそうだ。

前回の会合では9名の日銀メンバーのうち、3名が利上げを支持した。日銀の政策運営に政治からの目立った注文もない中、6月会合における利上げの可能性は高いと筆者は見込んでいる。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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