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- 米消費者信頼感指数から垣間見る米労働市場
5月の米消費者信頼感指数は市場予想を上回ったものの、前月を下回り、消費者の先行きへの慎重姿勢が目立つ。高額商品の購入意欲や支出意欲は物価上昇の影響により低下傾向で、消費の先行きに不透明感が残る。米労働市場は失業率が低水準で安定しているが、雇用環境の実感と整合的ではない。労働市場の二極化が想定される。全体として米労働市場は微妙なバランスの上にあるようだ。
5月の米消費者信頼感指数は期待指数が前月から改善したが依然低水準
調査会社コンファレンス・ボードが5月26日に発表した5月の米消費者信頼感指数は93.1と、市場予想の92.0を上回ったものの、4月の93.8(速報値の92.8から上方修正)を下回った。消費者信頼感指数は米個人消費の先行指標とされ、1985年を100として算出している。
足元の景況感を示す「現況指数」は121.2と、4月の124.4を下回った。短期的な見通しを示す「期待指数」は74.4と、4月の73.4を上回ったが、景気後退入りを示唆するとされる80を引き続き下回っている。コンファレンス・ボードは発表文で「中東紛争によるインフレ圧力が強まる中、5月の消費者信頼感は小幅に低下した」と指摘した。
消費者信頼感指数の内容を見ると高額商品の購入には慎重姿勢のようだ
コンファレンス・ボードの5月の米消費者信頼感指数は期待指数が前月を上回ったことなどから、景気の先行きに、数字の上では底打ち感も見られた。底打ちの背景として中東情勢の進展などが想像されるが特定はしにくい。なお、先行きへの期待が多少改善したとしても、消費の見通しや労働市場への回答を見ると、懸念も残るようだ。
米国消費を小売売上高などのデータ(ハードデータ)からみると堅調だ。4月の米小売売上高は前月比で0.5%増と、インフレで押し上げられた3月の1.6%増は下回ったが、高水準の伸びが続いた。トランプ政権による大型減税・歳出法(OBBBA)の税還付の増加が3月以降に集中したことなどが消費を押し上げたようだ。
5月の米消費者信頼感指数の内容を見ると、先行きに慎重な姿勢が目立つ。今後6ヵ月以内に高額商品を購入する計画をみると、自動車、住宅について、5月に「はい」と回答する消費者が前月に比べ減少した。また、コンファレンス・ボードの発表文によると、消費者の3分の2が物価上昇を理由に支出を減らしていると回答した。多くの消費者は購入項目を減らし、高額商品の購入を控えると回答している。仮に節約志向が強まれば米国消費が鈍化する可能性も考えられる。税還付による消費押上げ効果は短期的だ。足元のガソリン価格上昇による消費意欲の減退は税還付などである程度は相殺できたようだが、持続性には限りがある。消費者マインド悪化が、実際の消費を悪化させないため、中東情勢の改善や、それに伴うエネルギー価格の低下などが求められよう。
米労働市場の声は安定している失業率とはトーンにずれがあるようだ
米国消費を下支えする別の要因として米労働市場の安定が挙げられる。4月の失業率は4.3%で3月と変わらず、比較的低水準で推移している。
ただし、アンケートのような調査をベース(ソフトデータ)とした米消費者信頼感指数の雇用関連項目を見ると足元の回復感が鈍いようだ。仕事が豊富にあるとの回答割合(豊富)は25.5と21年1月以来の低水準だった(図表2参照)。一方、職探しは困難との回答比率(困難)も低下したが、市場が注目する両者の差(仕事の見つけやすさ)は小幅ながら縮小し、雇用環境は依然弱含みだ。
調査データは変動の大きさなどから、失業率などのハードデータに比べ重要度は一般に低い。雇用最大化と物価安定の二重責務を負う米連邦準備制度理事会(FRB)が四半期に一度発表する経済見通しで、雇用市場について示している指標は失業率だけだ。失業率が重要指標であることは疑いもない。また、非農業部門の就業者数もハードデータの中で注目度が高い。労働省が発表するこれらのデータを受け、米労働市場は低い採用と低解雇で「安定」しているとの評価が一般的だ。しかし、今回の調査での実際に職探しをしている人々の声である「仕事の見つけやすさ」からは安定とは言い難い。この差を簡単に説明できる能力は筆者にはないが、最近の調査レポートなどを見ると、1つの仮説として、米国の労働市場が大きく2つのセクター(それ以上に分類している論文もある)に分かれている考え方が有効かもしれない。
第1のセクター(以降、プライマリーセクター)は高賃金、高い安定性(低い失業率)で、失業を経験することは稀なセクターだ。プライマリーセクターの労働者は一般にスキルが高い。
第2のセクター(以降、セカンダリーセクター)は景気変動の対象となるセクターで、最初のセクターに比べ失業率は高い。セカンダリーセクターの労働者のスキルは一般的に低く、代替可能だ。
最近、ダラス連銀が発表したペーパーでも米労働市場の二重構造をテーマとして取り上げている。要約すれば、米労働市場が一見すると「低採用・低解雇」で安定しているのは、過半を占めるプライマリーセクターでの転職は活発である一方、少数派のセカンダリーセクターにおける採用は低調で、解雇率は平常以上に高い可能性を指摘している。
プライマリーセクターで転職などが活発になると、それを補充する採用がセカンダリーセクターに波及する効果が期待できる場合もある。しかし、足元では分断が生じている懸念が指摘されている。例えばAI導入を考えると、プライマリーセクターではスキルを勘案して採用しても、補充の採用がセカンダリーに波及しないというイメージだ。
失業率などの労働指標が最重要であることについて、筆者に疑問の余地はない。ただし、失業率などの上げ下げだけで米労働市場の評価するのは不十分な場合もあるということだ。幅広くみると、米労働市場は微妙なバランスで安定さを維持しているだけなのかもしれない。
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