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- 5月の米雇用統計、労働市場への懸念は後退
5月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が市場予想を大きく上回り、過去2カ月も上方修正された。失業率は4.3%で安定し、平均時給の伸びはやや鈍化した。就業者数の増加は幅広い部門で見られ、「娯楽・宿泊」や「政府」部門が特に好調だった。一方、「小売り」や「金融」など一部部門では雇用が減少したが全体として労働市場は堅調だ。ただし、短期的な押し上げ要因などに注意は必要だ。
5月の米雇用統計は米労働市場が底堅いことを示唆した
米労働省が6月5日に発表した5月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から17.2万人増と、市場予想の8.8万人増を大きく上回った(図表1参照)。4月は11.5万人増から17.9万人増へ、3月が18.5万人増から21.4万人増へ、各々上方修正された。
失業率は5月が4.3%と、市場予想、4月(ともに4.3%)と同じ水準だった。2025年12月以降、4.3〜4.4%で推移している。比較的低水準で推移する新規失業保険申請件数など他の指標とも整合的だった。平均時給は前年同月比3.4%上昇と市場予想に一致したが、4月の3.6%上昇から鈍化した。前月比は0.3%上昇と市場予想に一致した。
雇用の伸びを支える部門に広がりの兆しが見られた
5月の米雇用統計は、非農業部門の就業者数が市場予想を大幅に上回ったうえ、過去2ヵ月についても大幅に上方修正された。2025年の就業者の伸びは月平均で約1万人にとどまったことに比べ、足元の伸びは堅調だ。また、就業者数の伸びが幅広い部門に見られた。市場が米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ見通しを引き上げたのは、もっともだと思われる。
非農業部門の就業者数の伸びを部門別にみると広がりが見られた(図表2参照)。就業者の伸びを支えてきた「教育・医療」を見ると、5月は4万人の伸びと4月を下回ったが、依然比較的高い水準を維持した。「教育・医療」に加えて、「娯楽・宿泊」が5月は約7万人増、「政府」部門は5.2万人増とともに前月を大幅に上回った。さらに「製造業」やAI需要を受けたデータセンター建設などを背景に「建設」も雇用を伸ばした。
「娯楽・宿泊」が増加した背景の1つとしてワールドカップによる需要拡大が考えられる。先日発表された地区連銀景況報告(ベージュブック)でも、アトランタやフィラデルフィアなどの地区でワールドカップ需要が見込まれていた。ただし、ワールドカップ需要が期待されるのは開催地に集中すると思われることや、短期的な需要増である点には注意が必要だ。
なお、米国ホテル・宿泊施設協会によると、ホテルの予約は期待していたほど伸びていないとの指摘もある。航空運賃の高騰などを考えると海外からの顧客取り込みに苦労しているのかもしれない。ワールドカップ終了後に改めて結果を見直す必要がありそうだ。
「政府」部門は前月比で5.2万人増と先月を大幅に上回った。けん引したのは地方政府(5.5万人増)で、連邦政府は0.1万人増にとどまったが、「政府」部門全体では堅調な数字となった。
反対に「小売り」は前月比0.1万人減と、前月の2.4万人増からマイナスに転じた。「金融」や「情報」はマイナス幅を拡大するなど雇用の伸びが弱い部門も見られた。
5月の非農業部門就業者数の伸びは、過去2ヵ月が大幅に上方修正されたこと、雇用の伸びに部門の広がりが見られた点でFRBの利上げ判断に影響を与える可能性はある。しかし、短期的な押し上げ要因が含まれていた可能性もあり、FRBは今後データ検証に時間をかけると思われる。
平均時給は前年比で鈍化しており、賃金による物価加速懸念は足元低い
5月の失業率は4.3%で、市場予想、4月と一致する結果だった。失業率の質を見るうえで参照される労働参加率も61.8%で前月から横ばいとなるなど、新たな情報は少なかった。
教科書的には、失業率は重要な指標とされている。確かに、労働市場全体を見渡すうえで重要なのは間違いない。しかし、仮に労働市場が二極化、もしくは多極化していた場合、失業率だけでは実態を把握できない恐れもある。最近のFRB地区連銀のレポートなどで、米労働市場は失業の心配が低いグループと失業率が高いグループに分かれていることなどが指摘されている。失業率を安定と見るのか、分断に注目すべきなのか、検討が必要かもしれない。
平均時給は前年同月比で3.4%上昇と前月から鈍化した(図表3参照)。短期的な動向を示す前月比は0.3%上昇と市場予想に一致した。4月(0.2%上昇)を上回ったものの、落ち着いた水準とみられる。賃金が物価を押し上げる要因であるとは、今のところ言い難い。むしろ実質賃金の低さが気になるぐらいだ。加えて、市場ベースのみではあるが、期待インフレ率は雇用統計後も落ち着いた展開となっている。ガソリン価格などの高騰によりインフレ率は上昇しているが、二次的な波及効果は今すぐ懸念する状況でもなさそうだ。
5月の雇用統計を受けて米労働市場への懸念は後退したとみられる。ただし、利上げの必要性について検討すべき課題もある。FRBは当面、据え置きでデータを検証する時間を稼ぐと見込んでいる。
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