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5月米CPIは上昇したが、波及効果は足元落ち着き
梅澤 利文
2026/06/11

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概要

5月の米CPIは前年同月比4.2%上昇し、市場予想に一致した。総合CPIはガソリン価格の上昇に押し上げられた一方、コアCPIの伸びは小幅で、基調的なインフレの過熱感は限定的だった。財価格は弱く、サービスも住居費の鈍化が目立った。米国債市場の反応が限定的だったのは、物価上昇が主に供給要因とみられたためである。今後はガソリン価格、期待インフレ率、賃金動向などに注目したい。




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5月の米CPIで、総合CPIは加速したが、コアCPIは比較的落ち着いた動き

米労働省が6月10日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.2%上昇し、市場予想に一致したが、前月の3.8%上昇を上回った(図表1参照)。総合CPIの上昇率は2023年4月以来の伸びだった。エネルギーや食品など変動の大きい項目を除いたコアCPIは2.9%上昇と、市場予想に一致した一方で、4月の2.8%上昇を小幅ながら上回った。

短期的な動向を示す前月比の伸びは、5月が0.5%上昇と、市場予想の0.5%上昇に一致した一方で、前月の0.6%上昇を下回った。コアCPIの伸びは5月が0.2%上昇と、市場予想の0.3%上昇、4月の0.4%上昇を下回った。

5月の米CPIはエネルギーが押し上げた一方、サービスはやや鈍化した

5月の米CPIは、どの指標を見るかにより印象が異なる。生活実感に近い総合CPIはガソリン(前月比7.0%上昇)を主要な押し上げ要因として前年同月比4.2%上昇し、インフレ圧力が示された。一方、コアCPIの伸びは前年同月比で4月を上回ったが小幅で過熱感があるとは言い難い。この違いを生み出した背景と今後の注目点を述べる。

総合CPIの前月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度から足元までの動きを確認する(図表2参照)。

エネルギー項目が最大の押し上げ要因であり、総合CPIの前月比の伸びの約6割をエネルギー項目が占めた。とりわけ、ガソリンが5月に大幅に上昇したことが大きく影響している。もっとも、ガソリンは3月の伸びが21%と大幅に上昇したことに比べれば勢いは落ちたが、依然、高水準の伸びだ。

食品項目は5月の伸びが前月比0.2%上昇と、前月の0.5%上昇から鈍化した。個別品目では卵や、レタスなどの新鮮野菜が上昇した一方で、シリアルや牛肉、乳製品などは前月比で下落した。個別品目にばらつきはあるが、全体として鈍化した。

財項目は5月に前月比で0.1%下落した。個別品目では、中古車が0.1%上昇し、前月(0.0%)を上回った。スポーツ用品も0.7%上昇した。一方で、医療用品、新車などは下落幅を拡大させた。品目固有の動きは見られるが、財項目全体では下落した。

なお、財項目は関税の影響を受けやすい品目が多い。これに該当する品目である家具は5月も下落が続いた。他には、衣料品は5月の伸びが0.3%上昇と4月の伸びを下回った。また玩具は5月の伸びが0.0%で、前月の伸びを大幅に下回った。このように関税の影響は後退しているようだ。

サービス項目は5月が0.3%上昇と、4月の0.5%上昇から鈍化した。前月にテクニカルな理由でサービスを押し上げた住居費(主に賃料と帰属家賃などで構成)は5月が0.3%上昇と、4月の0.6%上昇を大幅に下回った。住居費はサービス項目の中で最大の構成比率(6割弱)であることから寄与度への影響が大きかった。サービス項目のその他の品目で上昇した主なものとして、病院サービス、自動車メンテナンスサービス、インターネットなどが挙げられる。なお、大幅な変動要因となることが多い航空運賃は5月が2.7%上昇と、4月の2.8%上昇から鈍化した。ただし依然高い伸びだった。一方でレンタカーは5月に下落幅を拡大させた。また、自動車保険も下落した。

物価を見るうえで、期待インフレ率や賃金動向も参照したい

5月の米CPI発表後の米国債市場の動きをみると、反応は限定的だった。終値ベースで利回りが上昇したのはトランプ大統領がイランへの攻撃を示唆したことの影響が大きい。米CPIに対し米国債の反応が落ち着いていた理由は、総合CPIの上昇がガソリン価格上昇という供給要因であることが挙げられる。また、コアCPIは市場予想を下回るなど鈍化したことから、二次的波及効果(原油価格上昇を受け、期待インフレ率の上昇から賃金上昇に連鎖する物価と賃上げの相互作用)は現段階では深刻とまでは言えず、そのことが、すでに高水準の米国債利回りの急上昇を抑えているようだ。

今後の注目点として、エネルギー項目はガソリン価格、二次的波及効果は期待インフレ率や賃金動向が挙げられる。米国のガソリン価格は5月半ばにピークを付け、CPIを押し上げた。しかし5月末から足元下落傾向に転じた。原油価格もしくは中東情勢次第だが、ガソリン価格が今後も下落を続けるか、それとも再加速があるのかに注目したい。

金融政策にとって重要なのは二次的波及効果だ。これを見るうえでは期待インフレ率と賃金指標に注目している。期待インフレ率には様々な測定手法があるが、市場の期待インフレ率を示す指標「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は、上昇懸念に一服感がみられる(図表3参照)。また、5月の米雇用統計で、賃金指標は落ち着いた動きだった。ただし、中東情勢の幕引きが長引けばこれらの指標が悪化することも想定される。物価を見るに当たり、CPIに合わせてこれらを注視したい。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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