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ECB:市場予想通り利上げ、注目はこれからの展開
梅澤 利文
2026/06/15

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概要

欧州中央銀行(ECB)は6月の会合で2.25%への利上げを決定した。中東情勢を背景としたインフレ圧力を前に物価安定を重視した。ユーロ圏のCPIはエネルギー価格の上昇を主因に、サービスや財も上昇(再加速)の兆しがある。ECBは今後の金融政策を会合ごとに判断する方針だ。ECBは今回もエネルギー価格や地政学リスクに応じた複数のシナリオを示したが、今後の展開は中東情勢に左右されそうだ。




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ECBは6月会合で据え置きに終止符市場予想通り利上げを決めた

欧州中央銀行(ECB)は6月10日-11日に開催した政策理事会(会合)で、市場予想通り、中銀預金金利を0.25%幅で引き上げ、2.25%とすることを決定した(図表1参照)。決定は全会一致だった。ECBによる利上げは、2023年9月以来2年9ヵ月ぶりで、中東情勢を受けインフレ圧力が強まる中、これ以上待つことはできないとの判断を下した。

ECBは声明で「見通しは引き続き不透明で、インフレには上振れリスク、経済成長には下振れリスクが存在する」と説明した。そのうえで、中期的なインフレ率や成長率に対する戦争の影響は、エネルギー価格ショックの強さと持続期間に加え、二次的波及効果の規模に左右されると説明した。

ECBが利上げを決めた主な要因はユーロ圏のインフレ率が上昇したこと

ECBが6月会合で利上げを決定した理由は、中東情勢に伴うエネルギー価格ショックを背景に、インフレ率とインフレ見通しが2%の物価目標を上回り続けると判断したためだ。物価安定を守るために必要な金融政策の対応をとったと説明している。なお、ECBのラガルド総裁は会合後の会見で、今回の利上げは「保険的利上げ」や「信認維持のための利上げ」ではなく、データと見通しに基づく正当な金融政策判断だと説明した。利上げの背景となったユーロ圏の消費者物価指数(HICP、以降CPI、図表2参照)を最初に振り返った後、ECBの見通しに基づいて、今後の展開を占う。

ユーロ圏の5月のCPIは前年同月比3.2%上昇と、前月の3.0%上昇を上回りインフレ圧力が示された。CPIの主な内訳を「エネルギー」、「サービス」、衣服などの「財」に分けると、10.9%上昇したエネルギーが、引き続き最大の押し上げ要因だった。

注目したいのは5月にサービスと財が上昇の兆しを示したことだ。サービスは5月に3.5%上昇と前月を上回った。ラガルド総裁は会見でサービス価格について大幅な上昇と表現するとともに、上昇の背景について精査の必要性を強調した。ただし、現時点では賃金を通じた本格的な二次的波及効果はまだ確認していないとも述べている。

財価格の伸びは5月が0.9%上昇だった。4月の0.8%上昇、3月の0.5%上昇を上回ったが、ECBは財については小幅な上昇にとどまっているとの認識だ。ただしラガルド総裁はサプライチェーンの混乱などが財価格を押し上げないかどうか注意深く見守る必要があると指摘した。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻があった22年以降のインフレの動向を図表2で再度確認しよう。当初はエネルギー価格がCPIを押し上げたが、サービスや財が後を追って上昇したことは、インフレ長期化の要因となった。二次的波及効果は遅れて物価を押し上げる傾向がある。まだ本格的な二次的波及効果は確認されないとしても注意は必要だ。インフレ率が2%を超え続けているうえ、二次的波及効果の兆しもあるのであれば、今回の利上げの決定に疑問の余地はほぼ無いであろう。

ECBのシナリオにはメインより改善方向のマイルドシナリオが追加された

次に、ECBの今後の金融政策を占うと、現時点では6月利上げのような明確さはない。ラガルド総裁は繰り返し、今後については会合ごとに、データに基づいて判断するとし、あらかじめ定められた金利パスはないと説明した。市場は6月会合前、年内の利上げ回数を3回程度織り込んだ時期もあったが、今後の展開はそれほど明確だろうか。ECBの経済見通し(図表3参照)をもとに今後を占おう。

四半期毎の経済見通しを公表するにあたり、ECBは3月同様、メインシナリオに加え、リスク(代替)シナリオを用意した。なお、前回は中東情勢が悪化する方向のみの代替シナリオが示されたが、今回は「マイルド」シナリオで、改善方向も示した。

メインシナリオは、エネルギー価格が今後緩やかな鈍化という想定の下、経済成長見通しは前回から小幅な修正にとどまった一方、物価(HICP)は上方修正された。ただ28年に2%に戻るとしている。

悪化シナリオとはエネルギー価格の上昇がメインより急激かつ長引き、二次的波及効果もあるシナリオだ。深刻シナリオは悪化シナリオよりも持続的なエネルギーショックを想定している。悪化、深刻シナリオにつれ、経済成長見通しは低く、物価は悪化方向だ。また、前回との比較で色分けを見ると、発生の可能性が高いと思われる悪化シナリオでインフレ率が上方修正(桃色)されている。22年以降の物価高騰が繰り返さないよう、ECBの物価への警戒姿勢を強めそうな見通しだ。

しかし、現状はどうだろう。週末からの報道で米国とイランは和平合意に達した。6月会合後のイベントをECBは「予言」はできない。金融政策は事実に基づくのが普通だ。ただし、マイルドシナリオに近い展開の可能性も出てきた。仮にその通りなら、年内あと1回程度の利上げはあったとしても、その後はデータ次第の色合いが濃くなりそうだ。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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