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- 日銀:植田総裁欠席ながら無難に利上げを消化
日銀は6月の金融政策決定会合で政策金利を市場予想通り0.25%引き上げ、1.00%とした。物価上昇リスクへの懸念などが背景だ。一方、金融環境の表現を「極めて低い実質金利」から「緩和的」に緩めるなど、ハト派的とも解釈されうる対応があった。今後の金融政策運営は物価指標を見ながら追加利上げの機会を探る方針だが、大幅利上げは想定しにくい。なお、長期国債の買入れ計画も発表された。
日銀、市場予想通りの利上げで、政策金利は31年ぶりの水準
日銀は6月15日-16日に開催した金融政策決定会合(会合)で、大方の市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.25%引き上げた(図表1参照)。今回の利上げは2025年12月以来で、この結果、政策金利は1.00%となり、1995年以来の水準となった。
投票は賛成7に対し反対1だった。浅田審議委員は、中東情勢の影響について、物価の上振れリスクよりも生産・雇用の下振れリスクの方が大きく、金融市場調節方針を据え置くことが望ましいとして反対した。今回の会合では、植田総裁が感染症治療で入院し欠席した。そのため、内田副総裁が記者会見し、決定内容を説明した。
日銀、利上げの主な理由は、物価上昇懸念と景気下振れリスクの低下
日銀が公表した「金融市場調節方針の変更について」(声明文)を見ると、景気下振れよりも、物価上振れへの懸念が示された。当然ながら、利上げを正当化するためだ。その意味でトーンはタカ派(金融引き締めを選好)だが一方で、今後の金融政策運営についての中で、現在の金融環境を従来の「極めて低い実質金利」から「緩和的」に表現を緩めた。また、大幅な利上げが提案されなかったことも明らかとなった。これらはややハト派(金融緩和を選好)寄りと市場で解釈されたようだ。ただし、為替市場は小幅な円安にとどまっており、全体としては、バランスの取れた会合と見られよう。
まず、物価上振れリスクを確認する。日本のコア消費者物価指数(CPIから生鮮食品を除外、図表2参照)は5月が前年同月比で1.4%上昇と、政府の物価抑制政策もあり、物価目標を下回っている。しかし、声明文では、原油価格上昇を起点に企業間取引における価格転嫁の速さへに対し懸念が示された。実際、企業間で取引される財に関する価格動向の把握を目的とした国内企業物価指数は6.3%上昇と今後が懸念される水準だ。
なお、今回の会合を欠席した植田総裁は6月3日の講演で、企業間取引の価格転嫁について、詳細な分析を示した。植田総裁の発言と整合的な議論であったことに組織としての対応がうかがえる。
次に景気認識を見ると、原油価格上昇は景気下押し要因と指摘している。一方で、高水準の企業収益や所得環境(図表3参照)の改善は経済を下支え要因と指摘している。加えて、政府が中東依存度の高い原材料の代替調達を進めていることも指摘した。日銀は景気下振れリスクに懸念を示したが、利上げを妨げる要因とならなかったことが示された。なお、会見で内田副総裁は毎月勤労統計を参照しながら、賃金上昇が物価を加速させる賃金・物価スパイラルは見られないと指摘した。足元の賃金の伸びは適切と見ているようだ。
声明文の物価認識などはタカ派寄りだったが、金融政策運営において、「現実の実質金利が極めて低い水準」から「金融環境が緩和的」へと表現を変更したことは、ややハト派的と市場は解釈したようだ。この点について内田副総裁は会見で、判断の変化でなく、説明の仕方を変えただけと述べた。この説明に限らず、内田副総裁の会見は安全運転に徹し、落ち着きを与える内容だったと筆者は認識している。その分、今後の金融政策運営の方針に対する示唆は限定的だったが。
「金融環境が緩和的」に変更した理由は、政策金利が1%になったことで、中立金利の推定値の範囲(1.1%~2.5%)の下限に近付いたことへの対応に過ぎないと筆者は見ている。今後も利上げを続けるうえで、必要な調整なのではないだろうか。
今回の会合で、予想通りの、27年4月以降の国債買入れ計画が発表された
今後の政策金利の運営は物価指標などを参照しながら追加利上げ姿勢を維持することが想定される。大幅な利上げは現段階では考えにくい中、次の注目はペースで、具体的には(ペースを速めて)10月会合での追加利上げの有無となりそうだ。
今回の会合では長期国債の買い入れ計画が発表され、27年3月まで毎四半期約2000億円ずつ減額する一方で、27年4月以降は月間約2兆円の買入を行うことが発表された(図表4参照)。27年4月以降は2兆円の国債購入が続けられることから、国債買入れ減額(QT)の事実上の停止ともみられよう。しかし、緩和政策の一環であるQE(中央銀行の国債購入)は緩和政策の一環としても、QTはQEの後片付けという面もある。市場と対話しながらの国債保有額縮小方針に変化ないだろう。
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