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日本の5月のCPIと、日銀金融政策の微妙な関係
梅澤 利文
2026/06/24

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概要

総務省が発表した5月のコアCPIは前年同月比1.4%上昇と、市場予想や前月と一致した。一方、日銀が特殊要因を除いて算出するコアCPIは2.7%上昇だった。政府の価格抑制策によりコアCPIとの乖離が続いた。物価の今後を占うと、企業物価指数や輸入物価は大きく上昇しており、価格転嫁によるインフレ上振れリスクが意識される。日銀は総じて、今後も金融緩和の度合いを調整する姿勢を維持しそうだ。




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5月のコアCPIは前年同月比で1.4%上昇し前月から横ばいだった

総務省が6月19日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比で1.4%上昇と、市場予想、前月の1.4%上昇に一致した(図表1参照)。総合CPIは1.5%上昇と、市場予想と一致したものの、4月の1.4%上昇を小幅ながら上回った。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは1.8%上昇し、前月の1.9%上昇を下回った。

日本銀行が23日に発表した生鮮食品と政府の物価高対策などの特殊要因(消費税率の変更・教育無償化政策、ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策、2021年の携帯電話通信料の引き下げ、旅行支援策)の影響を除いたコアCPIによると、5月は前年同月比で2.7%上昇した。

5月のCPIは生鮮食品を除く食料の伸び鈍化などが全体の伸びを抑制した

日銀の金融政策を占ううえで注目したい日本のインフレ率は、CPIベースでは1%台と、物価目標の2%を5月も下回った。しかし、日銀が算出している特殊要因を除いたベースのインフレ率とは乖離したままだ。政府の価格抑制政策が両者に違いを生み出している。ただし、ベースとなるCPIの中身からは、今後の上振れリスクも示唆される。そのため、日銀の追加利上げ姿勢の維持が見込まれる。

まず、前月から伸びが横ばいとなったコアCPIの主な項目、品目を振り返る。エネルギーはマイナス幅が4月の前年同月比3.9%下落から2.5%下落へ縮小した。ガソリンは昨年4月から5月の価格下落が反映して4月の9.7%下落から7.0%下落にマイナス幅が縮小した(図表2参照)。電気・都市ガスの支援策が終了したことなどから電気代もマイナス幅が縮小した。なお、マイナス幅が縮小すると「寄与度の差(4月と5月の寄与度の差)」はプラスとなるが、総務省の資料によるとエネルギーの寄与度差はプラス0.11で、前年同月比の変動に寄与した。

一方、生鮮食品を除く食料は5月が前年同月比で3.5%上昇と、4月の4.1%上昇を下回った。プラス幅が縮小したことから、寄与度の差はマイナス0.15だった。プラス幅が縮小した主な背景はコメ類の価格下落で、5月は4.9%下落した。

サービスは5月が前年同月比で1.0%上昇と、4月の0.9%上昇を小幅ながら上回った。一般サービスにおける外食は3.9%上昇と横ばいだったが、一方で、駐車場工事費や外国パック旅行費などが前年からの伸びの押し上げ要因となった。

なお、サービスの伸びは一般サービスに限ると5月が前年同月比1.4%上昇だった。公共サービスの0.2%上昇と対照的な水準だ。授業料無料化など政策対応の影響が大きいとみられる。

5月のコアCPIは1.4%上昇と、ガソリン補助金などの政策対応もあり、2%を下回る水準となった。また、4月からの変化も限定的だった。

高騰する企業間取引価格や輸入物価が価格転嫁されるリスクに注意したい

ただし、日本の物価の先行きには不安も残る。日銀が、企業間で売買される「モノ」の価格変動を測定する指標として公表している国内企業物価指数は5月が前年同月比6.3%上昇と高水準だった(図表3参照)。同指標はCPIに先行する傾向も指摘されている。輸入物価指数(円ベース)も上昇している。伸びで示すと、5月は25.5%上昇した。原油やナフサなど石油関連商品の価格上昇と円安が輸入物価の押し上げ要因とみられる。

企業が企業間取引価格や輸入物価の上昇を消費者物価にどの程度価格転嫁するのかは今後の動向次第だが、物価の上振れリスクには注意が必要だろう。

日銀は24日に、6月15日~16日に開催した金融政策決定会合の主な意見を公表した(図表4参照)。図表4は物価に関連する内容を整理したものだ。日銀は今後、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」と整合的な水準になると見込んでいる。物価の上振れ方向を見ているのだろう。主な意見でも図表3に示した国内企業間取引価格や輸入物価が価格転嫁されることへの懸念が示された。なお、物価指標として、政府の対策で抑制された価格でなく、こうした要因を除外した指標をみる必要があると指摘しているのは興味深い。

一部(1人?)に利上げが景気に悪影響を与えることを懸念する声もある。しかし、日銀のコンセンサスは金融緩和の度合いの調節(利上げ)であろう。筆者は年内1回の追加利上げを見込んでいる。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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