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- メキシコ、USMCA見直し交渉が変動要因となるか
メキシコ中銀は6月の会合で政策金利6.5%を据え置き、インフレ見通しの修正も限定的で当面の据え置き方針を示した。物価は落ち着きつつも目標上限近辺にあり、追加利下げには慎重だ。一方、経済成長は需給ギャップがマイナスなど景気の下方リスクが消えたわけではない。今後の金融政策を左右し得る変動要因として、7月から始まるUSMCA見直し交渉の不透明感と対米関係の動向が挙げられる。
メキシコ中銀は6月会合で、市場予想通りに政策金利を6.5%で据え置いた
メキシコ銀行(中央銀行)は6月25日開いた金融政策決定会合(会合)で、市場予想通り、政策金利を6.5%に据え置くと決めた(図表1参照)。据え置きは3会合ぶりで、5人の理事の全会一致で決定した。メキシコ中銀は前回会合(5月7日)で、2年超に及んだ利下げサイクルの終了を明確に示唆していたため、今回の会合での据え置きの決定にサプライズはなかった。
メキシコ中銀が今回の声明文で示したインフレ見通しに関する修正は限定的だった。総合CPIは、26年4-6月期のみ小幅に下方修正された。従来通り、物価目標(3%)に回帰する時期を27年4-6月期とした。こうした中、今後の金融政策の方針として当面据え置きが適切なことを示唆した。
5月のメキシコのインフレ率は農産物価格の反落などを受け鈍化した
メキシコ経済の現状から判断して今回の会合での据え置きにサプライズはなく、また今後についても当面は据え置きが示唆されている。ただし、メキシコは対米関係などが今後の注意点となりそうだ。
メキシコ経済の現状を確認すると、物価は概ね落ち着きを示している。5月の(総合)消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.94%上昇と(図表2参照)、4月の4.45%上昇から鈍化した。年初から物価を押し上げてきた農産物価格が5月に反落したことや、通貨ペソ高による押し下げなどに加え、中東情勢の悪化による原油価格上昇が他の物価を押し上げる二次的波及効果が限定的だったことも鈍化の背景とみられる。また、補助金による燃料価格抑制も物価を抑えたようだ。しかし、インフレ率は物価目標の上限(3%±1%)である4%近辺にとどまっている。また、メキシコ中銀はインフレのリスクについて上振れ方向を懸念している。これ以上の追加利下げには、当面、慎重だろう。
一方、メキシコ中銀は同国経済について、下方リスクが根強く残るとしている。メキシコのGDP(国内総生産)成長率は25年10-12月期に持ち直したが、中東情勢の悪化などを受け26年1-3月期は前期比でマイナス成長に転じた。ただしメキシコ中銀は26年4-6月期中に回復すると見込んでいる。
しかし、メキシコ中銀は需給ギャップのマイナスが続くことも見込んでおり、力強い景気回復は想定していないこともうかがえる。可能なら利下げを続けたいものの、インフレを懸念して政策金利を据え置く必要が当面ありそうだ。
今後の懸念要因の1つとして注意したいのがUSMCAの見直し交渉だ
メキシコの金融政策を占ううえでは、経済指標以外にも注目すべきイベントとして、この7月から正式な交渉が開始される米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が挙げられる。
最大の懸案事項はUSMCAの見直し交渉の行方だろう。USMCAは1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)を2017年に就任したトランプ大統領が見直しを示唆したことから18年に署名、20年に発効した(図表3参照)。NAFTAが置き換えられた格好だ。多くの投資家がUSMCAの威力を認識したのは第2期トランプ政権が打ち出した相互関税以降ではないだろうか。米国がメキシコやカナダに対し追加関税を発動してもUSMCAの域内調達比率を満たす製品については例外措置が適用されるケースが多々あったからだ。
なお、7月からの見直しはUSMCAのサンセット条項に基づくもので、6年ごとの見直し(発効後初となる)により、さらに16年間継続(2042年まで)する。なお、仮に今回合意に至らなくてもUSMCAが直ちに終了するわけではない。見直しで合意できなければ、毎年見直しが行われ(困難な交渉となるだろうが)、その間に合意に至れば、そこから16年USMCAが延長される。反対に毎年の交渉でも結局合意に至らなければ2036年にUSMCAは失効する、というのが基本的な流れとなっている。
正式な見直し交渉開始は今年7月だが、事前の準備や交渉が自動車を中心に始まっている。報道によると、5月の米国とメキシコの交渉では現協定で(自動車生産が)域内産と見なされる基準(「域内原産割合」、75%が現行)を82%に引き上げることが求められたようだ。また、新たに米国部材調達比率を50%とする案も提案されたようだ。米国の厳しい態度の背景には中国などがUSMCAを利用してメキシコ経由で自動車部品などを低い関税で米国に輸出(迂回輸出)している実態があり、これを食い止める意向があるのだろう。
メキシコ(カナダも)はUSMCAが現状維持で延期されることを期待して、今後の交渉を進めたいところであろう。ただし相手はトランプ大統領だ。先月には、「協定(USMCA)はない方が望ましいが、私は署名するかもしれない」と述べたかと思えば、ある時には協定からの離脱を思わせる発言もしている。なお、USMCAからの離脱は、見直しの根拠となっているサンセット条項とは別の条項で、何が本意かわからせない。それこそがトランプ大統領の交渉術といえばそれまでだが、今後の展開は読みづらい。自由貿易の枠組みは米国にとっても重要なはずで、最後は枠組みに残ると思われるが、それでも、見直し交渉の間の不確実性は高そうだ。
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