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- 日本の国債利回り上昇と骨太方針の課題
7月初旬、日本の10年国債利回りが約30年ぶりの高水準となった。背景として海外要因は限定的で、財政拡大懸念と日銀の利上げの遅れといった国内要因が重視されている。骨太の方針では官民投資を2040年度までに370兆円超とする成長戦略を示し、潜在成長率引き上げと財政改善を狙う一方で、成長前提の高さ、財源の不透明さ、つなぎ国債による別枠管理などが国債市場の不安材料のようだ。
6月末から日本国債利回りは、長期セクター主導で、足元まで上昇傾向
日本の国債市場で、7月3日に長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時、2.81%に上昇した(図表1参照)。では1996年10月以来約30年ぶりの水準をザラ場でつけた。内閣府の潜在成長率推計値を見ると、96年1-3月期に1.5%であり、足元(0.4%)を1%程度上回っている。
10年国債利回りは5月中頃に2.8%近辺まで上昇した後、やや低下傾向が続いたが、6月終わりから足元まで再び利回りは上昇する動きを見せている。ただし、利回りが上昇しているセクターは主にインフレ期待や財政悪化を反映しやすい長期債が中心で、反対に、金融政策を反映しやすい短期セクターは小幅な動きにとどまっている。
足元の日本国債利回りの上昇に対する海外要因の影響は少なそうだ
6月末から足元までの日本の長期国債利回り上昇の背景を考える。その要因を海外と国内要因に分けると、国内要因、とりわけ財政拡大懸念と日銀の利上げ対応の遅れへの懸念が利回り上昇の背景であると思われる。
海外要因はこの期間、日本国債利回りの上昇圧力としては考えにくい。原油価格は下落傾向で、米国金利も上昇圧力は限定的だからだ(図表2参照)。例外は6月30日の米金利の上昇で、市場では同日に発表された5月の求人件数が市場予想を上回ったことが利回りを押し上げたとの見方もある。しかし、2日に発表された6月の米雇用統計はやや軟調であった。また、7月1日にECBフォーラムで、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長が、「この4週間でインフレリスクは後退した」ことを主旨とする発言もあった。米独立記念日後の米国債の取引は、日本取引時間に限れば利回りは低下傾向だ。海外要因による、日本国債への上昇圧力は限定的と見られよう。
国内要因が日本国債の長期金利を押し上げたようだ
反対に、国内要因は長期セクターの日本国債利回りの押し上げ要因だったと見られる。
2日に実施された10年国債入札は軟調な結果で、国債需給の悪化が示唆された。事前の予想では前回に比べ高い利回り水準での入札となるため無難な結果を見込む声もあっただけに、需給の悪化が浮き彫りとなった。問題はその背景だ。
投資家が長期国債購入に慎重だった背景は財政懸念であろう。そして、足元、市場が最も注目しているのが「経済財政運営と改革の基本方針(2026)原案(以降、骨太の方針)」であろう(図表3参照)。官民投資の総額が2040年度まで370兆円超となる計画だ。投資先の戦略17分野への配分や、投資した場合の財政への影響が、6月後半から示され始めている。潜在成長率の予想は、追加財政が需要増加の効果にとどまり企業の投資に関する期待が高まらない「現状投影」では潜在成長率は0.5%と現状同様の低水準が見込まれている。一方で、民間投資が大きく誘発される成長戦略実現ケース①や、民間投資は不確実性もあり①程には拡大しないが、ほどほどの拡大を見込むケース②が用意され、財政状況のシミュレーションも各シナリオに応じて示された。
図表3で日本の潜在成長率が最近低い理由を探すと、投資不足であることは明らかだ。労働投入は人口減少という構造問題であるため、どのシナリオでも押し下げ要因となっている。そのため、潜在成長率向上には投資拡大を柱とする骨太の方針の方向性に異論は少ないと思われる。また、将来の財政状況の試算でも、現状維持では改善が見込まれないのも明らかだろう。成長ケース①、②では成長に伴い財政の改善が見込まれている。成長による財政改善は望ましいシナリオだ。
ただし骨太の方針には懸念もある。まず、成長の前提(潜在成長率)が図表3にあるように1.5%程度と高水準。当レポート冒頭で述べた96年ごろの潜在成長率が今後実現可能なのか、疑問が残る。
2つ目は、370兆円超の財源や官と民の負担配分が依然として明確ではないことだ。政府の発言には、市場への配慮があるものの、市場の不安を解消するには至っていない。なお、骨太の方針では「つなぎ国債」活用の可能性が示唆されている。これは複数年度の財源を確保した場合という但し書き付きだが、別枠管理で、要するに財政状況の指標には反映させない模様だ。つなぎ国債が発行市場への負担とならないのか気になるところだ。
最後に、骨太の方針に盛られた日銀との関係は微妙な表現だ。一部抜粋すると、「日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明(デフレ対応のもの)の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うこと」を期待すると結んでいる。日銀利上げへのけん制なのか意図はわからないが、市場は日銀の金融政策への圧力とならないかを警戒している。
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