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- FOMC議事要旨、分かったこと、まだわからないこと
FRBはウォーシュ議長就任後初の6月FOMC議事要旨が公表された。FF金利は据え置かれたものの、ドットチャートでは一部参加者が利上げを支持し、タカ派トーンが強まった。インフレは高止まりが続き、AI関連需要は当面インフレを押し上げると認識されている。一方、米経済は堅調だが、低所得層の負担増が懸念材料だ。今後の金融政策についてインフレ動向などに応じたシナリオが検討されたようだ。
FRBは、年内利上げ支持が増加した6月FOMCの議事要旨を発表した
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月8日、米連邦公開市場委員会(FOMC、6月16-17日開催分:以降、会合)の議事要旨を公表した。ウォーシュ議長就任後で初のFOMCとなった6月会合は、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.5-3.75%のレンジに据え置くことを全会一致で決定した。
しかし、政策金利の水準を示唆するドットチャートでは、同会合で約半数のFOMC参加者がFF金利の引き上げを支持していた(図表1参照)。
議事要旨にはインフレ、成長見通しなどについて幅広い意見が見られた
6月FOMCの要点を振り返ると、図表1にあるように2026年末のFF金利の予想水準は、据え置きを軸として、前回FOMCまでの利下げ方向から、今回は利上げ方向に転じた。6月FOMC後の記者会見でウォーシュ議長はインフレ抑制の必要性を訴えたこともタカ派(金融引き締めを選好)トーンを強めた。一方、6月FOMCの投票結果はFF金利据え置きで一致した。今後利上げが必要となる可能性は高いものの、切迫した状況でもないようだ。議事要旨でこれらの背景を整理しよう。
まず、インフレ認識を確認すると、物価目標を上回っていると認識している。その背景として、過去の関税引き上げの残存効果、中東情勢に伴うホルムズ海峡閉鎖関連の供給制約、AI関連投資の拡大などを指摘している。
今後のインフレ動向で懸念すべき点は、価格上昇圧力がより広範化していることだ。輸送、航空運賃、石油化学製品、農業投入財など幅広い品目に価格上昇がみられると指摘している。品目をみると、中東情勢悪化の二次的波及効果と見られる内容だ。議事要旨ではインフレ率の高止まりは短期的との見方をしているが、注意は必要だ。
インフレ動向について議事要旨で明らかとなった点として、AI 投資は短期的にはインフレ上振れ要因との見方が優勢だ。議事要旨によると、AIインフラへの需要は、テクノロジー製品や電力価格に対する物価上昇圧力の可能性が指摘されている。ウォーシュ議長は過去にAIが物価を抑制する逆の可能性を指摘したことがある。しかし、議事要旨ではAI導入がいずれ生産コストを低下させ、総供給を拡大することでインフレ抑制要因になり得るかもしれないが、その効果が現れるには時間(おそらく数年単位)がかかると指摘している。AI投資は、短期的にインフレ上振れ要因と見ておくべきだろう。
労働市場については、7月の月初に発表された6月の雇用統計の前ということもあり、「最近の雇用統計から、年初にみられた労働市場悪化への懸念は後退している」といった主旨の指摘があった。
FRBは昨年9月の会合で利下げを再開した(12月会合まで)。利下げ再開の理由として、物価は幾分高めながら、「雇用の下方リスクが高まった」との表現が声明文に盛り込まれた。当時に比べ、米労働市場に対する見方は改善したようだ。
米国経済については、中東情勢の悪化など不確実性が高い中にあって、堅調なペースで拡大しているとの認識が議事要旨に示されている。主な要因は、堅調な投資、とりわけAI投資と、底堅い個人消費だ。今後についても、AI関連投資の継続、家計支出、財政政策などを受け今後も底堅い成長を想定している。懸念材料として、個人消費は、株価上昇や所得税還付などで特に高所得層の支出が下支えとなる一方、低所得層ではガソリン・食料品価格の高止まりにより負担が増し、消費維持のために借り入れに依存している点が指摘されている。
今回の議事要旨では、インフレ高止まりは認めるが、期待インフレ率の落ち着きなどを背景に、鈍化する可能性もあり、据え置きに落ち着いた。
また、今後の金融政策については複数のシナリオが検討され、インフレが高止まりするなら利上げが適切であり、反対に物価目標に向かうようであれば据え置き、場合によっては利下げが適切としている。今回の会合では声明文から、「利下げ方向(緩和バイアス)で検討」という主旨の文言が、フォワードガイダンスとともに除去された。不確実性を前に、過度な「決め打ち」を提供するよりも、意見の相違をシナリオで情報提供したようだ。
議事要旨に、FRB改革となるタスクフォースについては言及がなかった
6月会合はタカ派トーンに転じたことに加え、FRBの情報発信などの改革にも注目が集まった。ウォーシュ議長が会合後の記者会見で、FRB改革の柱となる5つの作業部会(タスクフォース)の設置を発表したからだ。結論から述べると、議事要旨の中にはタスクフォースの内容を示唆する内容はなかった。タスクフォースの立ち上げはこれからであることを踏まえれば、当然かもしれない。
タスクフォースについての議事要旨からの情報は限られる。ただ、先日の欧州中央銀行(ECB)フォーラムのパネルディスカッションに参加した、ウォーシュ議長はタスクフォースの参加メンバーについて、外部の有識者に加え、米国外の専門家も参加するなど幅広い人材を活用する可能性を示唆した。FRBの情報提供などを検討するタスクフォースは関与する人材の影響が大きいと思われるだけに今後の発表に注目したい。
FOMC参加者がタスクフォースをどのように受け止めているのかも今後の注目点だ。タスクフォースではフォワードガイダンスのあり方も検討される予定だ。ウォーシュ議長はすでに明確にその有効性を否定している。一方で、FRBのウォラー理事は6日のイベントで、フォワードガイダンスは運営次第で効果がある場合もない場合あると述べ、一定の有効性を評価している。内部での見解はまだ割れているようだ。筆者は、金融政策は必要に応じて見直すべきと考えおり、タスクフォースに期待もしている。一方、重要なのは見直しのプロセスであり、まずはタスクフォースのメンバーに注目したい。
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