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- 6月の米CPIは目先の利上げ観測を後退させたが
6月の米CPIは総合・コアともに前年同月比で市場予想を下回り、前月比は総合がマイナスとなるなど物価上昇圧力は鈍化した。押し下げ要因の中心はガソリン価格で、短期的な変動とみられる。サービス価格は住居費や宿泊代などが伸び悩んだ。6月CPIを受け、市場の短期的な利上げ観測は後退した。しかし、物価鈍化は一時的要因も多く、インフレ懸念は残る。FRBは物価安定重視の姿勢を維持しそうだ。
6月の米CPIは前月比の伸びが2020年以来となるマイナスとなった
米労働省が7月14日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.5%上昇と、市場予想の3.8%上昇、前月の4.2%上昇を下回った(図表1参照)。エネルギーや食品など変動の大きい項目を除くことで物価の基調的な動向を示すとされるコアCPIは2.6%上昇と、市場予想の2.8%上昇、5月の2.9%上昇を下回った。
短期的な動向を示す前月比の伸びは、6月が0.4%下落と、2020年4月以来のマイナスの伸びを記録したうえ、市場予想の0.1%下落、前月の0.5%上昇を大幅に下回った。コアCPIは前月比0.0%と横ばいで、市場予想の0.2%上昇、5月の0.2%上昇を下回った。
サービス価格の伸び悩みには一時的な下落要因もあるようだ
筆者を含め、市場は6月の米CPIのうち、コアCPIに注目した。理由はCPI発表の前日に、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が、別のインフレ指標である5月の米個人消費支出(PCE)物価指数のコア指数の高止まりなどを引き合いに、利上げの必要性が生じる可能性を示唆した。
しかし、6月CPIの結果を見ると、コアCPIが前年同月比で2.6%上昇と、前月、市場予想を下回り、市場の利上げ観測は後退した。ただし、鈍化したとはいえ、総合、コアともに物価目標を上回ったままだ。当面据え置きの見通しが高まったものの、タカ派(金融引き締めを選好)姿勢が後退すると期待するのは時期尚早だろう。まずは、CPI変動の内容を確認することが重要だ。そこで、総合CPIの前月比の伸び(0.4%下落)を、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度で足元までの動きを確認する(図表2参照)。
今回のCPIの最大の押し下げ項目はエネルギーで、とりわけガソリン価格下落の影響が大きい。エネルギーは6月に前月比5.7%下落したが、寄与度をみると9割程度はガソリン価格の下落(6月は9.7%下落)で説明される(図表3参照)。3月のCPIの押し上げ要因がガソリン価格の上昇だったが、要は短期的な物価変動要因に過ぎず、ガソリン価格の金融政策への直接的な影響は比較的小幅だろう。
ガソリンの陰に隠れていたが、エネルギー項目に含まれる電力CPIは、おそらくAI需要を反映して5月までじり高傾向だった。しかし、6月の電力CPIは前月比で1.0%下落と上昇が一服した。これが一時的な下落なのか、今後の動向を見守りたい。
サービス項目はCPIに占める構成割合が約6割と過半を占めること、サービス価格は粘着性(持続的な上昇)が高いため、その動向が注目される。ただし6月のサービスCPIは前月比0.0%と、前月の0.3%上昇を下回り、図表2にあるように寄与度の点ではほぼゼロだった。サービスが伸び悩んだ背景はサービス項目の約6割を占める住居費が前月比0.1%上昇と伸び悩んだためだ。賃料、帰属家賃はそれぞれ0.1%、0.2%の上昇と、ともに前月を下回った。また、宿泊代は2.3%の大幅な下落だった。宿泊代は変動が大きく、一時的な下落の可能性もある。一方で、住居費が鈍化しているかを見るうえでは賃料や家賃の今後に注目したい。
なお、物価の別の指標であるコアPCE物価指数で5月の前年同月比の伸びは3.4%上昇と上昇傾向で、CPIとは異なる動きだった。この背景の一つが、指数に占める住居費(相当)の割合がPCE指数では15%程度とCPIの半分程度に過ぎないためだ。一方で、PCEは医療サービスを2割程度含み、CPIを大幅に上回っている。そのうえ医療項目の中でPCEがカバーする品目の価格も上昇傾向だ。CPIとPCE物価指数の変動が異なる理由は他にもあるが、9日にニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がイベントでインフレ懸念を測る尺度としてコアPCEの前月比の伸びとして0.2%が目安と説明している(5月は0.4%上昇)。6月のコアPCEも注目したい。なお、CPIのサービス価格鈍化には自動車保険の下落や航空運賃の伸び悩みなど一時的要因も含まれている。鈍化といっても注意が必要だ。
当面の利上げ観測は後退したが、引き締め水準での据置きは続きそうだ
6月の食品と財項目の前月比の伸びは各々0.2%上昇、0.1%下落と小幅で、寄与度も限定的にとどまった。食品は牛肉や卵などが上昇した一方で飲料品が下落するなど打ち消しあい、全体としては落ち着いた動きだった。
財も、玩具やスポーツ用品の価格が上昇した一方で、衣服などが下落し、全体で打ち消しあう構図は変わらない。ただし財項目には関税の影響を受ける品目が多いが、関税の影響は低下した可能性が高く、物価には好材料だろう。
米議会証言に参加したウォーシュ議長は6月のCPIについて、「任務完了ではない」と述べ、今後も物価安定を重視する姿勢だ。筆者は今回のCPIで当面の利上げ圧力は後退したとみるが、インフレ懸念払しょくとの判断は時期尚早と見ている。
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