Article Title
中国経済指標は概ね鈍化、今後の政策に注目
梅澤 利文
2026/07/16

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

中国の4-6月期実質GDP成長率は前年同期比4.3%増と市場予想を下回った。輸出は半導体やAI関連、自動車などがけん引し好調だが、内需は小売売上高の伸びが低いままだ。不動産投資や製造業投資も減少し固定資産投資全体が低迷している。中国人民銀行は翌日物リバースレポの活用や預金準備率の引き下げなど的を絞った緩和を検討すると思われる。財政政策は中身が問われるだろう。




Article Body Text

中国4-6月期のGDP成長率は市場予想を下回るなど減速感が示された

中国国家統計局が7月15日に発表した4-6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比で4.3%増と、市場予想の4.5%増、2026年1-3月期の5.0%増を下回った(図表1参照)。生活実感に近いとされる名目GDPは前年同期比5.9%増と、前期の4.9%増を上回った。物価上昇は名目を押し上げた一方で、実質GDPの重荷となったようだ。

15日には、6月分の主要月次データも公表された。小売売上高は6月が前年同月比で1.0%増と、前月の0.6%減を上回り、回復感に乏しい水準ながらプラス圏に転じた。6月の工業生産は5.3%増と、前月及び市場予想を上回り底堅かった。固定資産投資は年初来前年比5.7%減と軟調だった。

中国経済は外需頼みが続く中、内需は不振が続いている

中国の4-6月期のGDPは内需が低調な一方で、堅調な輸出(外需)を背景に工業生産が下支えする最近の構図に変化はなかった。

中国の6月の輸出は前年同月比で27.0%増と5月の19.4%を上回った(図表2参照)。輸出を支えた主な品目として集積回路(半導体)や、AI関連に含まれる自動データ処理機器などが挙げられる。価格効果も含めて、AI需要は中国でも景気押し上げ要因となっている。また電気自動車(EV)などを含め自動車輸出も好調で、家電製品の一部ではエアコンなどが堅調だった。ただし、他の品目については、輸出の伸びは比較的緩やかだった。最近の株式市場の変動から、AI需要の持続性には疑問も残るが、外需は当面の中国経済を押し上げるドライバーとなりそうだ。輸出が堅調であれば、中国の生産活動は堅調さを維持し、工業生産は底堅く推移すると思われる(図表3参照)。

一方で、内需は回復が鈍い。6月の小売売上高は前年同月比で1.0%増と、5月の0.6%減からプラス圏には転じたが、依然水準は低い(図表3参照)。中国の小売売上は2024年~25年の2年間、月平均の伸びが3%超であったことに比べると、消費の回復は鈍いままだ。

小売売上高の伸びを品目別にみると、通信機器、事務用品、化粧品などは前年同月比で10%台と2桁の伸びとなっている。一方で、自動車、建設資材、家電、家具などは軟調だった。需要の先食いとなる補助金による消費財の買い替え促進プログラムが26年は金額が2500億元(約6兆円)と、昨年より500億元規模が縮小したうえ、対象商品の厳格化により電子レンジなどが除外されたことによる影響も考えられる。

もっとも、最近の中国当局の発表によると、非補助金対象商品の売上は比較的底堅く、昨年後半からの小売売上の不振は補助金対象商品が主な要因であったことが示唆されている。特定の分野に対する消費喚起が求められそうだ。

固定資産投資は、主な構成項目である不動産投資が6月は年初来前年比で18%減と、前月の16.2%減からマイナス幅を拡大させ、下押し要因だった(図表4参照)。そのうえ、最近まで固定資産投資を下支えしていた製造業固定資産投資は5月の0.4%減から、6月は1.2%減となりマイナスがさらに深まった。民間、国有企業の固定資産投資(設備投資)も、ともにマイナスの伸びだった。やはり国内需要は弱いままだ。

中国は景気テコ入れに、効果的な金融・財政政策が実施できるのだろうか

中国の外需には不確実性も残ることから、内需の底上げは待ったなしだ。何もしなければ、26年の経済成長目標(4.5%~5%)の達成も危ぶまれる。当局の対応が待たれるところだ。

15日に中国人民銀行副総裁は、翌日物リバースレポの実施頻度増加を検討していると表明した。これは、金融政策が的を絞った政策となることや、おそらく、過大な利下げなどには慎重姿勢なことを示唆したと思われる。6月の資金調達総額や新規融資データから中国の資金需要は弱いため大胆な利上げの効果に不確実性がある。そのうえ、利下げの伝達メカニズムが先進国に比べ中国は弱く、効率の点でも疑問が残る。最近の人民銀の発表を見る限り、利下げは控えめながら、的を絞った緩和の一助として預金準備率の引き下げは活用されそうだ。一方、3月の全国人民代表大会(全人代)で枠が用意された財政政策も引き続き活用されそうだ。ただし、問題は中身だ。需要の先食いとなった補助金の延長では内需回復は期待できない。次の「新たな」一手に注目したい。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


インド中銀、据え置きながらエルニーニョなどを懸念

日米協調介入、過去からの教訓と今後の課題

日銀7月会合の要所と、期間中の異例の為替介入

ウォーシュ議長が7月FOMCで語ったこと

日銀7月会合、据え置き予想ながら注目点も多い

ECB、7月は予想通り据え置き、追加利上げを準備