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- ウォーシュ議長、議会証言デビュー戦で語ったこと
ウォーシュFRB議長は就任後初の議会証言で、インフレ抑制と物価安定への強い姿勢を示した。6月CPIの鈍化についても「任務完了ではない」と一蹴した。AI投資については、短期的にはインフレ圧力となる一方、長期的には生産性向上を通じてディスインフレ要因となる可能性に言及した。FRBの独立性を強調した。バランスシートの縮小に意欲を示しつつ、市場や議会との協議を重視する慎重姿勢を示した。
FRBのウォーシュ議長が就任後初の議会証言に臨んだ
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は7月14日、就任後初となる米連邦議会(下院)での議会証言に臨んだ。ウォーシュ議長は15日には連邦議会上院の銀行・住宅・都市問題委員会で証言に臨んだ。なお、FRBは議会証言に先立ち、「金融政策報告書(報告書)」を公表した。報告書は、米国経済について個人消費にやや慎重な一方で、AI関連の設備投資拡大や、労働市場の底堅さを指摘し楽観的な見方となっている。物価については、5月の米個人消費支出(PCE)物価指数が、関税の影響や原油価格上昇、旺盛な設備投資などを背景に、物価目標を上回る水準であることを指摘している(図表1参照)。
議会証言でウォーシュ議長はインフレ抑制に強い意欲を示した
ウォーシュ議長は2日間の議会証言で多岐にわたるトピックに言及した(図表2参照)。当レポートでは主にインフレ関連の発言を整理する。総じていえば、インフレ抑制に対する強い姿勢を示したとみられる。議会証言冒頭、ウォーシュ議長はロシアがウクライナに軍事侵攻した時期の前後に加速したインフレを抑制できなかったことを指摘し、同じ過ちを繰り返さない決意を示している。
また、物価に対応をするには、FRBの独立性は確保される必要がある。議員から、「トランプ大統領から物価データと異なる方向の政策を要請された場合」についての対応を問われた際、ウォーシュ議長はきっぱりとデータに基づく政策を実施すると明言した。ウォーシュ議長は、低金利を好むトランプ米大統領の指名を受けただけに、ハト派(金融緩和を選好)というイメージがあった。しかし、それほど単純ではなさそうだ。
むしろ、ウォーシュ議長のタカ派(金融引き締めを選好)的な発言が印象に残った。特に、鈍化を示した6月の消費者物価指数(CPI、図表1参照)については、「任務完了ではない」と指摘し、インフレを警戒し続ける姿勢が強く示された。
図表1のCPIはエネルギーや食品など変動の大きい項目を除いたコア指数を示した。一方、同じコア指数でPCE物価指数をみると5月が前年同月比で3.4%と上昇傾向だ(6月分は7月30日公表予定)。一方、6月CPIは前月比がマイナスとなるなど全般に鈍化した。一般にFRBはインフレ指標として、PCE物価指数を重視する傾向がある。PCEが高止まりなら物価への警戒感は緩められない。
なお、議会証言の中で、ウォーシュ議長は新たなインフレ測定指標への関心を示唆した。コア指標はエネルギーなどを除いたものだが、これが物価の基調を示すのかという疑問などがあるようだ。この問題はウォーシュ議長が設置した作業部会(タスクフォース)で今後、取り上げる見込みで、変動項目をより柔軟にした刈込平均等が代替指標に考えられる。また、インフレデータは遅行する懸念もあることから、リアルタイムデータを活用するアイデアなどもあるようだ。新たな物価指標については、今後のタスクフォースでの議論に期待したい。
インフレに関連して興味深かったのはAIの影響についてだ。先の金融政策報告書でも指摘されているように、米国経済の押し上げ要因の1つがAI投資であることはかなり明確だ。一方で、AIがインフレに与える影響はそれほど明確ではない。今回の議会証言で興味深かったのは、1日目の下院の証言ではAI投資がコンピューターチップの価格を押し上げる影響を認めた点である。ウォーシュ議長は過去にAIはインフレを押し下げる要因と述べたこともあるだけに、この発言もタカ派的と見られよう。
しかし、2日目の上院での証言ではAI投資がインフレ圧力となる可能性に言及しつつ、生産性の改善によりインフレ押し下げ要因となり得ると述べ、前日からの発言を若干軌道修正しバランスをとったのだろうが、ハト派の一面をのぞかせたようにも聞こえる。どのように頭の整理すべきか。これは期間のとらえ方の問題と筆者は考えている。短期的にAI投資は、現在直面しているように、インフレ要因となり得よう。一方、AIが進化を続け、長期的に生産性(労働生産性ではない)を改善させるなら、AIはインフレを押し下げる要因となり得る(かもしれない)。短期的にはAIをインフレ要因、長期的にはディスインフレ要因というとらえ方はFRBの他のメンバーにも見られるがコンセンサスとまでは言い難い。この問題についてもタスクフォースで検討される見込みであり、議論の展開を注視したい。
バランスシートの規模縮小にウォーシュ議長は取り組む姿勢のようだ
最後に、ウォーシュ議長はバランスシート政策について、実行可能な規模まで縮小する意欲を見せた。ただし、より望ましいと考えるバランスシートへの移行は(意外と?)慎重に進めていく考えのようだ。バランスシート政策もタスクフォースで取り上げるトピックの一つだが、ウォーシュ議長は「市場関係者や議会メンバーとの十分な協議を経ずに進めるつもりはない」とも述べ、慎重さをにじませた。
先の報告書でもバランスシート政策が取り上げられている。現状を見るとFRBのバランスシートの規模は6.7兆ドルで年初からの変化は小幅な増加にとどまっている。資産サイドでは米国債の保有が年初から若干増えた一方で住宅ローン担保証券(MBS)が減少した。徐々にMBSから国債へシフトさせる方針を維持しているようだ。負債サイドでは準備預金は年初からほぼ変化なく安定している。バランスシートは国債中心の保有やデュレーションの短期化などには改善の余地がありそうだ。
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